Story
生態系が壊れてしまった地球では、一部の富裕層のみが城塞都市シタデルに暮らし、貧しい人々は危険な外の世界でわずかな資源を奪い合いながら生きていた。外の世界で寝たきりの父と暮らす13歳の少女ヴェスパーは、ある日、森の中で倒れている女性カメリアを見つける。シタデルの権力者の娘だという彼女は、墜落した飛行艇に一緒に乗っていた父を捜してほしいという。うまくいけばシタデルへの道を切り拓けるかもしれないと考えたヴェスパーは、父の制止を振り切ってカメリアの頼みを引き受けることに。しかし地域を支配する残忍なヴェスパーの叔父ヨナスもまた、墜落した飛行艇の行方を追っていた。(映画.comより抜粋)
2022年/フランス・リトアニア・ベルギー/ クリスティーナ・ブオジーテ、ブルーノ・サンペル監督作品
評価 ★★★★☆
遺伝子改変による災害によって生態系が破壊され、人間以外の動物が絶滅、植物は突然変異してしまった世界が舞台になっています。
世界は一部の富裕層が住むシタデル(城塞)と貧しい人々が暮らす荒廃した大地に分断されていて、貧民達はシタデルから果実の種をもらいながら飢えを凌いでいるのですが、その種が遺伝子操作されているために一世代しか使えない、つまり食料を再生産できないため、彼らはシタデルに生殺与奪を握られているわけです。
そんなディストピアで寝たきりの父親の面倒を見ながら健気に生きる少女ヴェスパーが主人公で、演じるラフィエラ・チャップマンが中性的な魅力。
文明は崩壊状態ですが遺伝子工学だけは突出していて、「ブレードランナー」に出てきたレプリカントみたいな合成人間が彼らの社会で奴隷労働に従事したりしています。
ヴェスパーには遺伝子操作の才能もあって彼女が合成した植物達がグロテスクながらも美しい。
シタデルからグライダーで逃げ出して不時着した女性カメリアとヴェスパーの交流が物語の主軸になっていきます。彼女を次第に母親のように慕い始めるのが微笑ましく、カメリアが実は合成人間だと知った途端に扱いが冷淡になったりするのですが、叔父のヨナスの謀略とシタデルの刺客から逃れる中で彼女を一人の人間として扱い始め、愛情も湧いてくる。
こういった過程を丹念に描いているので、ヴェスパーの成長物語がこの映画のテーマと思わせるものがあります。
カメリアが奏でる楽器の音色が鍵となって、種の遺伝子組み換えのロック解除に成功するのがこの映画のハイライト。
憧れていたシタデルに背を向けたヴェスパーの掌から種が空に羽ばたき飛んでいくのですが、やがて荒廃した大地に根付いていくのかなと思いました。
映画は、多くを語らず観客の想像に委ねて展開します。絶望的な日々を描きつつも細部の何気ない描写の積み重ねが最後の希望に収束していくのですが、緻密に組み立てられた脚本のおかげで印象に残る作品になっています。
映画『ヴェスパー』公式サイト
(「ヴェスパー」2024年1月 立川 キノシネマ にて鑑賞)
生態系が壊れてしまった地球では、一部の富裕層のみが城塞都市シタデルに暮らし、貧しい人々は危険な外の世界でわずかな資源を奪い合いながら生きていた。外の世界で寝たきりの父と暮らす13歳の少女ヴェスパーは、ある日、森の中で倒れている女性カメリアを見つける。シタデルの権力者の娘だという彼女は、墜落した飛行艇に一緒に乗っていた父を捜してほしいという。うまくいけばシタデルへの道を切り拓けるかもしれないと考えたヴェスパーは、父の制止を振り切ってカメリアの頼みを引き受けることに。しかし地域を支配する残忍なヴェスパーの叔父ヨナスもまた、墜落した飛行艇の行方を追っていた。(映画.comより抜粋)
2022年/フランス・リトアニア・ベルギー/ クリスティーナ・ブオジーテ、ブルーノ・サンペル監督作品
評価 ★★★★☆
遺伝子改変による災害によって生態系が破壊され、人間以外の動物が絶滅、植物は突然変異してしまった世界が舞台になっています。
世界は一部の富裕層が住むシタデル(城塞)と貧しい人々が暮らす荒廃した大地に分断されていて、貧民達はシタデルから果実の種をもらいながら飢えを凌いでいるのですが、その種が遺伝子操作されているために一世代しか使えない、つまり食料を再生産できないため、彼らはシタデルに生殺与奪を握られているわけです。
そんなディストピアで寝たきりの父親の面倒を見ながら健気に生きる少女ヴェスパーが主人公で、演じるラフィエラ・チャップマンが中性的な魅力。
文明は崩壊状態ですが遺伝子工学だけは突出していて、「ブレードランナー」に出てきたレプリカントみたいな合成人間が彼らの社会で奴隷労働に従事したりしています。
ヴェスパーには遺伝子操作の才能もあって彼女が合成した植物達がグロテスクながらも美しい。
シタデルからグライダーで逃げ出して不時着した女性カメリアとヴェスパーの交流が物語の主軸になっていきます。彼女を次第に母親のように慕い始めるのが微笑ましく、カメリアが実は合成人間だと知った途端に扱いが冷淡になったりするのですが、叔父のヨナスの謀略とシタデルの刺客から逃れる中で彼女を一人の人間として扱い始め、愛情も湧いてくる。
こういった過程を丹念に描いているので、ヴェスパーの成長物語がこの映画のテーマと思わせるものがあります。
カメリアが奏でる楽器の音色が鍵となって、種の遺伝子組み換えのロック解除に成功するのがこの映画のハイライト。
憧れていたシタデルに背を向けたヴェスパーの掌から種が空に羽ばたき飛んでいくのですが、やがて荒廃した大地に根付いていくのかなと思いました。
映画は、多くを語らず観客の想像に委ねて展開します。絶望的な日々を描きつつも細部の何気ない描写の積み重ねが最後の希望に収束していくのですが、緻密に組み立てられた脚本のおかげで印象に残る作品になっています。
映画『ヴェスパー』公式サイト
(「ヴェスパー」2024年1月 立川 キノシネマ にて鑑賞)
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