長いこと家でぐうたらしながらも、こうして今までいろんな国々で撮って来た写真を見ているだけで楽しめてしまう今日この頃。将来の夢を思い描く時の参考になるような新しい発見がた~くさん詰まっているんですもの。こんな素材とこんな素材の組み合わせもありだわ!こんな色とこんな色のコントラストも綺麗!とまあ、こんな風に。それだけでぐうたら生活は結構楽しい毎日だったりします。こんなこと言ってたら怒られそうだけど(笑)。
さて、話しを昨日のつづきに戻しましょう。パスポートの話しでしたね。ところでいきなり質問ですが、このパスポートの表紙の裏面に書かれている文章。読んだことがおありでしょうか?そこには「日本国民である本旅券の所持人を通路故障なく旅行させ、かつ、同人に必要な保護扶助を与えられるよう、関係の所管に要請する。」と、日本国外務大臣からの要請が書かれています。こうあらためて読み返してみるとフムフム、私たちは海外へ出ている間日本国というものに守られているんだとちょっぴり感じたりもするわけです。国内にいる限りでは全く感じることのない?ある意味不思議な感覚です。
確かに海外に出入りする時だけでなく、現地滞在中はその携帯が義務づけられているこのパスポート。何か起こってしまった時、あるいは国によっては何かが起こらなくてもその提示を求められる場合があるわけで。もちろんそんな場に居合わせたくもないんですが。ともあれ携帯なしに他の国での滞在も、ましてや出入国も認められないものです。紛失や盗難がどれだけの大事であるか、想像できますよね。う~ん、でももしかしたらそういう立場になってみないと本当の大変さは実感できないかも知れませんが。振り返ってみると、パスポートの紛失に直面したことが過去3回あります。全て盗難によるものでしたが、実はこの3件とも盗まれたパスポートは持ち主の元に戻って来ました。そんな奇跡のような結末のおかげでそのどれもツアー自体は大きく影響を受けることなく終えることができたんです。あまり詳しくは書けませんが(汗)、私が出会ったそんな奇跡をご紹介しましょう。
まず最初の事件はもう十年近く前の美しい水の都でのこと。メンバーの乗るゴンドラを見送った後、戻って来るのを待ちながらその辺りをぷらぷら。すると見知らぬ男性に声をかけられました。見ると手には真っ赤な表紙のパスポート。「キミは添乗員でしょ?この人がメンバーにいない?」と。もちろんその言葉の意味はすぐにわかりました。まさかと思いながらも持ち主の写真と名前を確認してもう一度「えぇっ!?」っと。たった今ゴンドラに乗られたばかりのお客様のものだったんです。ゴンドラを楽しんで戻って来られたご本人は全く気づいていない様子。パスポートを見せると突然ヘナヘナっと。そのパスポートは、有志によるパトロール隊の方がたまたま別件で捕まえたルーマニア系の男性のバッグから出て来たものでした。
次はやはり世界遺産にも登録されてるヨーロッパを代表する古都での事件。街の中心を私を先頭に隊列なして歩いていた時のことです。後ろから悲鳴のような声が響いて来ました。ビクっとして振り返ると「パスポート盗られましたぁ~!」と。その言葉に反射的に全速力で走り出した私は前を走るジプシーの少年を捕まえました。たすき掛けしていたポシェットから盗られたのはパスポートと現金の入った小さなポーチ。どうやらお金は仲間の少年に手渡された後だったようですが、その少年が放り出したのはパスポート。つんのめりそうになりながらパスポートに走り寄ったことは言うまでもありません。
最後は豊かな自然に囲まれた小さな小さな街での事件。観光中、突然あるお客様が「パスポートがないんです…」と。聞けば写真を撮りながらフト気づけばバッグが開いていたとのこと。確かに入れていたパスポートとお金の入った袋がないというのです。この時はさすがに私も真っ白になりました。なぜならその街を出発して間もなく私たちは国境を越える予定だったから。当然のことながらパスポートがなければ国境越えは不可能です。今ではシェンゲン協定に加盟しましたが、当時は非常に厳しい出入国審査が行われていた場所でしたから。でも起こってしまったことは事実、その後の手はずをあれこれ打ちながらここでも奇跡は起こりました。盗難届けを出すために警察へ出向くと、「ひょっとしてこれはあなたのもの?」と。差し出されたパスポートはその方のものでした。聞けばドイツ人観光客が落ちているパスポートに気づき届けてくれていたのでした。犯人はお金だけ盗ってパスポートを捨てて行ったのでしょう。
ご本人にとってはもちろん相当ショックだったと思いますが、これはどれも不幸中の幸い的な事件でした。普通なら旅行は完全に中断しますし、もし帰国に間に合わないケースであればパスポートが再発行されるまでの滞在費に帰りの航空券代…と、多大なる費用がかかります。でもそれ以上に精神的ダメージは計り知れないものがありますよね。盗られていいものなんて存在するはずありませんが、それでもお金やカメラであれば、そこまでのダメージを受けることはないはず。「命の次に大切」とはそういうわけです。たまにパスポートを手帳かなにかのように扱ってる方を目にし、他人事ながらヒヤヒヤすることも多いんですよ。みなさんはそんなことないと思いますが?
写真はエーゲ海に面したボドルムの白壁(トルコ)
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