奥様は海外添乗員〜メモリアル

ヴェネチアの音

    

古代ローマ亡き後19世紀に至るまでの長い間それぞれの街が独立した国としての歴史を歩んで来たイタリアは、そんな歴史的背景ゆえ実に地方色豊か。愛国心はイコール生まれ故郷である街に対するもの。結構皮肉屋なイタリア人と話してると「ミラネーゼ=ミラノ人は冷たい」とか「ナポレターノ=ナポリ人はやかましい」とか、必ず相手の出身地を名指ししてくる。一筋縄ではいかないイタリア(人)の根底にはそんな時代が生んだ背景が大いにかかわっているのかも知れない。同様にイタリアのサッカーがあれだけ盛り上がるのも頷けるわけだ。地元チームを熱狂的に応援するサポーターたちも含めサッカーの試合はまさに現代版のお国合戦と化す。

そんなイタリア人だから他所を誉めることはあまりないんだけど(笑)、彼らにとってもヴェネチアだけは別格らしい。世界でも例を見ないラグーンの上に築かれた街はそれほどまでに幻想的で美しいってことだろう。アドリア海に浮かぶたくさんの島々から成るこの街の姿に魅了されない人は絶対いないだろうと思えるほど。もちろんどんなものにも光と影はあるもので、美しいという言葉だけでは語り切れない厳しい現実も持ち合わせてる街であることは間違いないけれど。

この街へ来ると他所では決してありえないほど五感が研ぎ澄まされる。それはベッドで目覚めた時から。まだ暗い街から聞こえてくる、路地を歩く人の足音や挨拶を交わす声。遠くから響いてくる船のエンジン音や教会の鐘の音。目を閉じたままでもだんだん白みはじめる街の風景が思い浮かんでくる。普段の生活の中でこんなに「音」 を身体全体で感じるなんてことはないもの。ヴェネチアの音の魅力に取り付かれた私は、だからいつも超早起き。ベッドの中で街の目覚めを感じる、これがこの街での一番の贅沢だ。我慢できずに静まり返る街に出ると、行き交うヴァポレットからはわずかながら人が降りて来る。これまた寝ぼけ顔の鳩やカモメたちと一緒にだんだん活気づいていく運河を眺めていると、シンデレラにタイムオーバーを知らせる鐘の音が。そろそろホテルに戻らなきゃ…



みなさんからのコメントはいつも楽しく読ませていただいています。ただ諸々の理由によりこの年明けからコメントへのお返しはしていませんのでどうぞご了承下さい。また旅関係のご質問やリクエストに関しては、できるだけ今後のブログ上に反映させていきたいと思っています。

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