オランダといったんサヨナラし、国境を越えてやって来たのはお隣りベルギーのアントワープ。オランダとここベルギーがまだひとつの国だった時代には国際通商の拠点として栄えたほどの街だ。そしてもちろん現在でもヨーロッパ最大規模のコンビナートを形成するほど。そんな街の中心にそびえ立つのがノートルダム大聖堂。何しろベルギー国内で最大規模を誇る教会。確かにこの街の力を象徴するかのような素晴らしい建造物ながら、ここを訪れる人々の目的はむしろ教会内部に飾られてるルーベンスの絵画かも知れない。
とりわけ日本人にとってここにあるルーベンスの祭壇画は興味深い。なぜならこの絵こそ「フランダースの犬」の主人公ネロを魅了し続けたものであるから。貧しいながら絵画に興味があり、ルーベンスの名画を一目見たいと夢見ていた主人公のネロ。クリスマスの晩に家主から家を追い出されたネロと愛犬パトラッシュはノートルダム寺院にたどり着く。そこでいつもは厚いカーテンに閉ざされていたルーベンスの絵を目にし、喜びに震えながら凍え死んでしまう。と、どうしようもなく悲しい物語はテレビアニメの影響もあって、日本人にはあまりにも有名だ。
ところがこの物語を書いたのはベルギー人ならぬイギリス人。むしろベルギー人には好まれざる物語だったらしい。なぜならあまりにも悲しすぎる!から。ベルギー人いわく「自分たちは貧しい少年を見殺しになんか絶対にしない!」だそう。ベルギー人にこの物語を広めたのはむしろ日本人だったという。アントワープを訪れる日本人の「フランダースの犬はどこ?」ってな度重なる質問に現地の観光局が動き、物語の舞台がアントワープ近郊のホーボーケン村であることを突き止めたとか。
ともあれネロが死ぬ間際まで恋焦がれたルーベンスの【キリストの昇架】【キリストの降架】。多分この大きな絵を見上げる時、ネロとパトラッシュの物語に涙したことのある人なら、再び感無量になるだろう。ちなみに数年前になってようやくこの教会の前に「フランダースの犬」にちなんだモニュメントが造られた。TOYOTAの寄附で造られたそれはたいていの場合モニュメントとは気付かれず、観光客の椅子と化しているけれど(涙)…
写真:ノートルダム大聖堂とルーベンスの像(上段)と、ネロも焦がれたルーベンスの代表作「キリスト降架」(下段)
← ノートルダム大聖堂は涙なくしては訪れることができないよね。
ネロもかわいそうだったけどTOYOTAの悲しいモニュメントにクリックしてね。
← 留守番隊のホームページもみてね。
最近の「添乗日記」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
2022年
人気記事