少しだけ One for All

公的病院の勤務医です。新型コロナウイルスをテーマの中心として、医療現場から率直に綴りたいと思います。

オミクロン株 3 少しだけ One for All

2021-12-08 23:18:45 | 日記

 
 このオミクロン株の発表があってから、ワクチン接種に来院する人が再び増えたような気がしています。週4日で、多い日には300人近く接種していたものが、だんだんと少なくなり、ワクチン接種希望者への接種はほとんど済んだのかな、と思われていたところでした。週4日の接種日も週1日にしていました。増えた人たちは、きっとこれまでワクチンは様子見だったり、ワクチンに反対だった人たちかな、と推測します。このオミクロン株の登場でワクチン接種に踏み切る人が増えたとすると、これは公衆衛生的にはとても良いことだと思います。
 
 日本政府は、今回、このオミクロン株の発表に即応し、空港検疫を強化しました。12月の日本への帰国便の新規予約を全て停止させました。WHOの言うことを全く聞いていません。善し善しです。そしてその迅速さも最高でした。南アの発表を無意味なものにしていません。最高の対応だと思います。
 ただ、海外の日本人の帰国も止めたことに批判が集まりました。そのため、すぐに、日本人の帰国にあたる人は予約できることに修正しました。修正すると、たちまち朝令暮改に批判が集まりました。
 
 でも、このことで日本政府を非難しすぎるのは、私はちょっと同意し難いです。いろいろきっと意見があると思いますが。(私は、ゴルフの石川遼選手への報道機関の猛批判もやりすぎなのでは?そこまで必要?と感じる人間です)
 
 オミクロン株は未知です。
 世界を支配したデルタ株を完全に凌駕する感染力を持つことが疑われるウイルスに喫緊で対峙しなければなりません。何が危険で、何が安全なのかすら、まだわからない段階です。その上で、まず国内を防御する、と優先順位の大原則を決めたのだと思います。大原則を決めてくれれば、各省庁、各機関が動きやすくなります。なにしろ時間との勝負ですから。そこで国交省が動くことができて、一旦予約ストップまで発表したのだと思います。それを修正しただけで、なんらおかしいと思えません。
 迅速に行動するためには、修正には寛容でなければなりません。修正したことをあげつらって、間違っていたじゃないか、としつこくいつまでも非難するのであれば、素早く何かを決めることはできません。素早く決めろ、でも間違えるな、というのは都合よすぎます。この二つは、トレードオフの関係にあるものです。
 ですから、帰国者は予約を認める、という形に修正になったのですから、問題ないと思います。熟慮した上での法案だったら別ですが、今回は緊急事態での通達ですから。日本政府は海外の日本人を蔑ろにしている、とかって、ことさら思いません。仮に私が海外に住んでいてもそう思わないでしょう。修正してくれたらそれで十分です。その上さらに、その修正への批判に時間を使うのは、馬鹿馬鹿しいことです。今、オミクロン株に対して求められているのは、スピードですから。
 
 日本政府は、日本国民が最も守られる方策を考えたのです。今も、オミクロン株とわかれば症状に関わらず入院対応、と大原則を決めてくれました。私はとてもよいと思います。そして、実はそれほど病原性が高くない変異株だった、とわかれば、その時初めて緩めればいいです。そのときに、無駄な政策をやった、と騒いで政争の種にしようとする政党とかはほっとけばいいと思います。ホットケナイノカナ,,,
  
 似たようなことを、再び増えたワクチン接種の行列を見て思います。
 ワクチンに反対だと思った人も、考えが変わってワクチンを打とうと思ったら、素直に打てばいい。一生ワクチンをうたない!って勢いで宣言してしまっていたって、打ちたいと考えれるようになれば打てばいいし、そこの壁は低くていい。考えの修正に寛容でいいのではないかと思います。なにしろ未知のウイルスに対峙しているのですから、予想がはずれることがあっても自然でしょう。はずれていることがわかったら修正した道へ進み直せばいいことです。
 マスクも同じ。何があっても、どれだけ感染が広がってもマスクはしない!と感染初期にテレビで宣言した愚かな感染症専門家がいました。私は、その色んな意味での愚かさに腹が立って仕方ありませんでしたが、彼ですら、もし考えを改めてマスクしていたら許容します。それで周りの人が安全になるからです。いつまでも非難するつもりはありません。
 今でもゼロコロナを掲げて、PCR検査すら協力しようとしない病院もあります。コロナが始まってもうすぐ2年になろうとしているのですから、その間に生まれた知見に沿って、修正することは恥じることではないはずです。初めに立てた方針を、まるで操のように守ろうとするのは、本当の全体の利益にそぐないません。
 この感染症対策であくまで大事なのは、全員で助かる、全体で助かることです。そのために、それまでの考えを修正する医療機関や専門家や個々人がいたら、全体が助かるためのことだったら、ウェルカムで迎えなければいけないと思うものです。
 
 第5波が収束した時、これからはワクチン未接種の人たちを守らないといけない、と書きました((参考)拙ブログ「ワクチンパスポートは誰のため 4」)。あまり同意できない人も多かったかもしれないのですが、これは病院で感染対策をしていて感じたことなのです。
 この新型コロナウイルスは、自分だけが助かろうとすると、狙いすましたようにその狭い魂胆に寄生してくるように感じたのです。
 例えば、当初の大規模クラスターは、ゼロコロナを掲げるような病院で起きました。そうした病院は、自分の病院だけ助かろうとしていたのです。その結果、コロナから逃げることで感染対策がゆるくなり、容易にコロナに入り込まれてクラスターとなってしまったと考えられました。逆に、地域医療を考えて、コロナ患者を受け入れる決意をした病院では、その緊張感から感染対策がしっかりと実践され、クラスターは発生しませんでした。自分の病院だけでなく、地域を丸ごと助けようと動いた病院は安全だったのです。地域の風評では、コロナ患者の受け入れをしている病院は危険だと言われて避けられましたが、実際の病院内での安全性は風評とは逆だったわけです。
 そうしたことから、自分だけでなく、周囲全体で助かろうとすることが、回り回って全体の大きな利益になる、そのことを強く感じたものでした。
 
 ちなみに、このブログの題名の「少しだけOne for All」というのもそこから付けました。みんなのために少しづつ自分のできることを差し出し合って、チームとしてこの感染症から助かりましょう、という意味を込めたものです。それが、このコロナ感染対策の重要な秘訣のように感じたものです。
 
 そうしたことから、「これからはワクチン未接種の人たちを守らないといけない」、と書いたものでした。ワクチンを接種した人が、ワクチン未接種の人を守る気持ちを持てば最強だと考えたものでした。
 
 今、日本のコロナが収束しているのは、ワクチン接種をした人たちが、分け隔てなく感染対策をゆるめていないからだと強く感じています。ワクチン接種完了の人は、デルタ株に対して重症化しにくいと考えられるため、自分のことだけと割り切ればマスクはいらない、と考えることもできないでもないのです。それが今でも感染者数が増えている国々の考え方だと思います。
 私たちの国の感染者数が抑えられているのは、自分のことだけではなく、周囲も含めた思いやり、「少しだけ One for All」を自然に実践している人たちであふれているからだと私は思っていますし、感じています。あまりに自然に実践しているから、実践していることに気がついていない人も多いくらいです。それがこの国の大きな武器だと確信しています。マスコミ等からのいわれのない批判や、安易で都合のいい海外との比較などで、自分たちのやっていることを疑わないで欲しいと思います。正しいことをどれほど続けてやってきたか、それを自分たちにわかるようにしたい、そう思ってこれまでのことを振り返っていくつもりでいます。微力でしかないですが、自分なりの One for All を大事に、大切に、今まで通りのこのままで、これからのオミクロン株にも勇気を持って対峙していきたいと思います。
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オミクロン株 2 南アの勇気を忘れない

2021-12-06 17:47:08 | 日記

 
 南アフリカ政府がメディア発表をした11月25日以降、連日、オミクロン株の報道が続いています。発表から10日ほどしか経っていないとは思えないくらい、オミクロン株という言葉が耳目に馴染んでしまいました。
 現時点で世界42カ国での感染が報道されています。中には市中感染を既に疑っている地域もあるとのことです。
 
 他地域でも既に広がっているとなると、オミクロン株がどこから発生したか、冷静に解析しないといけなくなります。初めに発見して発表したのが南アフリカだった、ということだけで、他の地域では気づかれていなかった、ということもあり得ます。
 そう考えると、南アの感染症の専門集団の優秀さが引き立ちます。もし南アが発見することがなく、しばらく世界中で放置されていたり、なんだかおかしいな、って漫然と様子見されていたりしたら、こんなに少ない人数で全世界からの感染者発見のニュースは入ってはこなかったでしょう。既に感染が広がったパニックの状態での報道ばかりになっていたと思います。本当に今回の南アの対応は素晴らしく、南ア政府や南アの保健省に世界中が感謝しなければならないと思います。
 
 ところが、
 「南アが不利益を被ることがあってはならない。南アが不利益を被れば、これから正直に報告する国もなくなるだろう。だから南アへの渡航制限をする国々を非難する。」
 これがWHOの理屈です。こんなバカな話はありません。(南アの大統領が「罰を受けているようだ」と言ったのは知っていますが、公衆衛生機関であるWHOが利益・不利益で渡航制限を論じる破茶滅茶さ)
 
 南アの保健省が、なぜ早々に発表をしてアラートをかけたのでしょうか?もう全くシンプルに、感染を広げないためです。そのために、身を切る覚悟で発表をしたはずです。その思いに応えるには、まず大前提として感染を広げない施策を施行しなくてはなりません。それをしなければ、南アが迅速に発表した意味すら消してしまうのですから。WHOの言う通りにすると、褒め称えるべき南アの勇気がただのゴミにされてしまいます。
 南アが不利益を被らないようにすること、他の国が嘘をつかないで済むようになることは、大前提の感染対策をした上で考えるべきことです。そうでなければ、そもそも南アの発表の意味自体がなくなります。WHOとは、なんて愚かな世界機関でしょう。
 私だったら南アを激しく称賛します。そして南アの勇気を褒め称えます。この先ずっと人々の記憶から消えないように。そして、その上で南アへの医療サポートを呼びかけ、世界中の政府に呼びかけて基金を作ります。その基金で、南アに新しい病院建設を進めます。コロナ以外の病気からも多くの南アの人が助かるように、医療面を強く支えます。その結果、国が安全になり、健康が保障されるようになれば、南アへの経済投資も増えるはずです。基金が広がれば、それをアフリカ全体に広げればいいでしょう。(どこかの大陸の大国が、その国を乗っ取るために投資するお金とは全く違います)この医療危機に臨んで、その道筋を、WHOがつくらず、一体どの機関がつくれるというのでしょうか?渡航制限を非難するなんて暇つぶしの悪事をしているような時間はないはずなのに。
 火事が広がらないように、消防署に報告したら、逆に火事が広がるように貴重なその情報が悪用されて、周囲の家まで燃えてしまうのです。そして、なんでそんなことをするんだ、と消防署に言ったら、初めの燃えた家が不利益にならないようにみんなで燃えましょうね、と言うのです。そんな消防署、すぐに潰れるべきですよね。
 
 WHOは医療機関です。まずは医療をしっかりとやるべきでしょう。WHOの正しいあり方としては、それはちょっと厳しいんじゃないか、ぐらいの渡航制限や感染対策を打ち出し、社会経済側がそれを少し緩める、というのが本来だと思います。渡航制限は感染対策の強力な武器です。それをこのような早期発見ですら非難することしか知らず、武器を使おうとしない公衆衛生機関とは、存在価値がわかりません。WHOがブレーキを緩めたら、どこがブレーキをかけてくれるのでしょうか。まさか、経済機関がブレーキをかけるべきとでも言うのでしょうか。今のWHOの言うことを聞いていたら、永遠に問題は解決せず、新型コロナウイルスで人が死に続けます。
 
 WHOの目的は、ゼロコロナ政策をとっている大国(察していただけるでしょうか?)の政府を支えることではないかと勘繰る所以です。ゼロコロナ政策の大国は、他国が感染で混乱するところを国民に見せて、ああこの国の政府でよかった、と思わせるようにしています。それによって一党独裁体制を強化しているのは間違いありません。
 他国が混乱すればするほど良いのです。日本が混乱していたころは、その様子が特に大きくテレビで報じられて、一党独裁政府の優秀さを刷り込む材料にされていたとも聞きます。彼らは、他国でパンデミックが広がり、混乱が広がってくれないと困るのです。そのために、発生初期のロックダウンした大都市での失政を隠すため、全世界にウイルスをばら撒くことで自国民に見えないようにし、さらにそれだけでは飽き足らず管理体制強化に利用しているように見えてしまいます。
 そのゼロコロナ政策の大国にとっては、ワクチンで感染が治まってしまうなんていうことはあってはならなかったことでしょう。さまざまな意味で、ワクチンは不完全でなければいけませんでした。彼らの最大の誤算は、ほぼ完璧に重症化を防ぐことができるmRNAワクチンが、ごく短期間で西側で作られたことではないかと思います。自国ワクチンにこだわる以上、mRNAワクチンを国民にうてませんし、自国のワクチン効果が不十分である以上、ゼロコロナ政策を取らざるを得ません。そのため、全世界の反ワクチン運動を煽動し、各国の感染対策がうまくいかないように誘導し、mRNAワクチンは信用ならないものと自国民にも印象付けているのでしょう。
 
 ワクチンの陰謀説がたくさん取り上げられ、その陰謀論から過激な反ワクチン運動が行われるのに、WHOの陰謀に反対運動が巻き起こらないのはこのためではないかと邪推しています。どちらもあまりに不自然すぎて。
 まあ、陰謀論への陰謀論返しです(笑)
 
 西側は、mRNAワクチンの技術者たちを守らなければいけません。ゼロコロナの大国の魔手がたくさん伸びていることと思われます。科学技術の搾取は彼らのお手のものです。本来、卓越した技術は、世界に広め、世界中の人の幸福に寄与するべきです。しかし、それはあくまで性善説に基づいた社会でこそ成立することです。なにしろ、あの国は、マスクやアルコールでさえ、命と引き換えに取引をして金儲けをした国です。信じられない悪意に彩られたものからは、やはり大切なものは守らないといけない、そう強く感じます。

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