野良猫本舗~十六夜桜~

十六夜桜(通称;野良猫)と申します。
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小説 薄桜鬼『斜陽に気づかず』(土方×沖田)

2011-04-11 | 薄桜鬼 小説

本日は、小説。本編更新です。
BL小説なので、苦手なかたは気をつけて下さいね。

なんというか、読み返すと、沖田さん、あんなに初めてのころ『境界線』とか、まだアップしてないものとかでは、何も知らない子でドギマギしてたのに、けっこう、積極的になったなぁと思っちゃっいました。でも、多分、いざ、なだれ込むとやっぱりダメだと思ってます。

土方さんのターンになるんだと

それでは続きからどうぞ。

↓↓↓

◆斜陽に気づかず◆

 「総司!!」
 屯所となった西本願寺に帰るなり、もう何度あげたかわからない叫び声をあげる。

 元治二年3月。
 用向きで江戸に行ったついでに、日野の、佐藤家に足をよせた時のことだった。
 足を運んで顔をみるや、彦五郎義兄や、姉貴につめよられて、頭を抱える事になったのだ。
 彦五郎義兄とは、佐藤彦五郎といい、日野本郷の名手でもある。姉ノブが嫁いだ人で、俺の義兄にあたる人だ。ついでに言えば、従兄弟にもあたる。
 義兄には、本当に、いろいろと世話になった。
 11の時から、義兄の家に寄宿させてもらっていたのだ。
 義兄と近藤さんとは、同じ天然理心流の師匠に習った兄弟弟子でもあり、免許皆伝をとって佐藤道場を開いている。
 近藤さんをはじめ、総司や、源さん、山南さんもよく出入りして、皆でそろって、竹刀をふったりもしたものだ。
 日野を出立して、この京都へ向かう時も、また、新選組を拝命するまえの、まだ極貧を極めた当時も、何かと、金銭の工面をしてくれるなど、新選組幹部陣からすると、どうにも頭のあがらない人である。


 発端は、総司が出した手紙のせいだとわかると、見せられた手紙の内容にわなわなと握る手を振わせた。
 いろいろとばたばたとしていた為、ろくに挨拶もしてなかったので、総司に時候の挨拶を書く事を頼んだのだが、まさかこういう書き方をしてやがるとは。
 完全な嫌がらせである。あの日、他にも何かと、1日中手紙をかく用事を手伝わせていたのだが、はじめは、ブツブツ言いつつも、大人しく聞いてやがるなとは想っていたが、こんな仕掛けがほどこされていたとは思ってもみなかった。
 
『(中略)近々、江戸に土方さんが行くそうです。くわしいことは、土方さんに聞いてください。山南さんが、死去されましたので、僕の口からは、はばかられますので、お伝えだけ申し上げます 沖田総司』

 ようするに、いきなり、山南さんが死んだと書いて、理由も何も書かず、あげく、俺が行くから、そっちに直接きいてよ。と全て、面倒な事は俺に押しつけて、逃げやがったということだ。
 「あのやろう!!」
 苦虫を噛み締めた顔をして、その手紙を見ていると、義兄がさらに詰め寄って聞いてくる。
 「あの山南くんが、亡くなったとはどういうことだ?何があったのだ?沖田くんが、こうして、自分で語るのもはばかるということは、よほどのことがあったのか?気を落としてはいまいか?」
 と次から次へと質問責めにされたのだ。
 総司ときたら、この夫婦の前でも、けっこうに良い子を装っていたもので、総司が気を落としているのではないかと心配までしている。
 総司の嫌がらせだと言っても全く信じてはくれないだろう。
 かといってまさか、山南さんは生きているとも言えず、言葉を選ぶのに四苦八苦した。
 山南さんの希望から、切腹の理由はふせられたまま、切腹を俺が見届け、総司が解釈をしたということになっている。
 が、それをまたバカ正直に離すと、今すぐ、叱咤や避難を真っ正面から受けることになりそうだ。こと総司が絡んでいるとなると。
 それはさすがに、ごめん被りたい、義兄の横で、同じく真剣な面持ちで俺の顔をみつめる姉貴を怒らせると恐いのだ。
 総司の姉のミツさんも怒らせると怖い人だったが、この姉貴も、負けてはいない。この歳になってまで姉貴の雷はうけたくないものである。
 そうしてなんとかいいつくろって帰って来た次第なのだった。

 ◆◆◆

 「あぁ、土方さんお帰りなさい」
 怒り心頭で居場所をみつけ駆けつけると、庭先で、竹刀をふっていた総司が、呑気な顔で笑いながら出迎える。
 「総司、てめぇは!!」
 顔をみるなり、耳をつんさくほどの大きな声をあげると、総司が嫌そうに、肩をすくめながら片目を細めて耳をふさいだ。
 「なんですか、帰ってくるなり、五月蝿い人だなぁ。いくら屯所が広くなったからって言ったって、近所迷惑にもほどがありますよ」
 「誰のせいで、こんな声をださなきゃいけねぇと想ってやがるんだお前は」
 本願寺の立派な柱に手をかけて、庭先へ向かってどなりつける。
 「僕、今日はまだ、何もしてないと想うんですけど。」
 面倒くさそうに、侵害だと首をかしげる。
 「今日のことじゃあねぇ、お前、この間、義兄にだした手紙になんて書きやがった」
 「手紙?佐藤おじさん宛のですか?ちゃんと、言われたとおり、時候の挨拶をかきましたよ?いつもありがとうございますとか、ひととおり、失礼のないように気をつけて書いたつもりでしたけど」
 「確かにな、はじめの方は問題ねぇよ。問題は最期の数行だ。」
 「数行?」
 なんだっけ?と少し首を傾げて考えてから、「あぁ」と手のひらをうつ。
 「ちゃんと説明できましたか?」
 何を書いたのか思い出したらしく、うれしそうに、嫌な笑みをうかべて聞く。
 「てめぇがよけいな事、書きやがったせいで、俺がどれだけ苦労したと想ってるんだ」
 「そんなこと言いますけど、いろいろ迷ったんですよ。山南さんのこと書くかどうか。でも、ほら、彦五郎おじさんたちも、山南さんのことは気にかけておられるだろうし、かといって、僕がいろいろ書いても都合の悪いことを書いてしまったらダメかなと思ったんで。副長である土方さんが説明したほうが、いいだろうなって」
 手にした竹刀を両手でつかんで顔の前でたてたまま、ひょこっと顔を右からだして、口をとがらせる。

 「それならそれで、どう書けばいいか聞けばよかっただろうが。」
 「だって土方さん、忙しそうにしてたんじゃないですか。山南さんのこと以来、表向きの葬儀だの、移転だので全く相手もしてくれないし、僕一応聞きましたよ。でも好きにしろって言ったの土方さんですから」
 言われて、そういえば・・・と思い当たる。あの時はそうとう忙しくて、横で書いていた書面の内容を考えるのに手いっぱいで、何か言っているの聞き流したような・・。
 「思い出しましたか?」
 苦い顔をした表情を見てとって総司が笑う。
 他にもそれより前からいろいろ言ってやがった気がする。いつになったら相手をしてくれるのか?とかもう何日こんなことをしてるのかとか、接吻くらいしてくれても、とかなんとか。だから、その延長かと思って、軽くあしらってしまったのだった。
 ようするに、その態度に拗ねて、結果があの嫌がらせというわけだ。
 確かに、ここ最近、いろんな動きがありすぎて、触れ合いのひとつもとってはいなかった。
 仮にも、一応、恋仲同士なのだから、そういったことがないことに不満を抱く気持ちはわからなくはない。
 が、それは俺とて同じである。自分だけではないと理解して欲しいところだが、まぁ無理だろう。
 そんなことで拗ねるくらい思われてるのだなと思うと、悪い気がせず、すっかり毒気を抜かれてる自分がいる。
 そういう相方を選んでしまったのは、他ならぬ自分なのだ。
 ふくれっつらで拗ねる総司を見下ろしながら、俺は大きなため息をついた。

 「ちょっと、人の顔をみて、ため息つかないで下さいよ」
 怒りながら、俺のそばにやってきて、縁側に腰をおろす。
 そしてぐいぐいと、俺の袖をひっぱると。
 嬉しそうに
 「はい、お帰りの、して下さい」
 小生意気に上目遣いに見上げながら、自分の唇に、人差し指をポンとあてる。
 「聞かなかった俺も悪かったが、俺だって、一応怒っているんだがな」
 「なんですか、嫌なんですか?」
 そんなこと知らないというふうに、総司の眉間にしわがよる。
 「ったく、仕方のねぇやつだな」
 見上げる総司の唇に、体をかがめて、唇をおとす。
 深く口づけて、唇をはなした時、ふいに、総司が「ケホケホ」と咳き込んだ。
 「おい、大丈夫か?おまえ、この間もへんな咳してなかったか?」
 「どうかな、風邪でもひいたのかも」
 口を抑えたまま、また幾度か咳を繰り返す。それでもその時は、まだ、それほどひどくはなかった為、俺も、そうだと思っていた。
 「3月はまだ、寒いからな。あんまり外でふらふらしてねぇで、暖かくしておけよ」
 「心配性だなぁ土方さんは。そんなに言うなら、土方さんが暖めてくれたらいいじゃないですか」
 ころころと笑いながら腕にまとわりつく。
 「ったく、お前はそればっかりか?」
 「だって、もう何ヶ月してないと思ってるんですか?我慢にも限界ってものがあるんです。僕は、土方さんじゃなく、若いんで。」
 「あーそうかよ。バカが」
 そういって、総司の頭を叩きながら笑った。

 

 <散らない花 第八章>
 終

 


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