薄桜鬼では、土方さんと沖田さんのあの豊玉発句集をめぐるネタが楽しくて仕方がないのです。
そしてまた、土方さんの句が、わかりやすいといいますか、可愛いといいますか(史実の方が作られているのに大変失礼なのですが)。
ドラマCDででてくる内容以外にも読んでみたくて、WEB探索をして、そうして全句見てみたら、なんだか余計に土方さんのファンになってしまいました。
豊玉先生、もっとたくさん、あなたの句が読んでみたいですよ。きっと、言うように決してうまい句ではないのかもしれないですが、それでもなんとなく暖かな土方さんの人柄がでているような気がします。会ったこともないのに恐縮ですが、会ってみたいと思わせる。私にはそんな句でした。
で、その中でやっぱり気になってしまったのが、句集の中で唯一囲まれた、あの「知れば迷い・・」ていう句なんですよね。土沖!!と言ってる私としては、ビビビっとくるものが。
それでつい、書いてしまった小説をせっかくなのでアップしてみました。
土方×沖田です。いえ、正直からみはございません。いろいろとゲームやアニメと違う設定もあるかもしれません。それでもいいよーっという方は、よろしければ本文続きからお楽しみください。でも、長いですのでご容赦を。
知れば迷い・・・
幕府のお偉方とあーだこうだと言い合って、やっとこ解放されて屯所の門をくぐると嫌というほど聞き覚えのある声が自分の名を呼ぶ。
正直毎回、疲労困憊だ。無理ばかりいいやがって。思い出すとまた腹が立つ。声には気づいていたが、俺は無言でずんずんと目指す方向へ足を進めた。
そうやっていらいらしながら奧にある自分の部屋へと向かっていると、向かう先から悪気など皆無、といわんばかりの声が先ほどよりも近くなって飛んでくる。
「土方さんてばー!」
自分の不在中、勝手に部屋に入り込む不届き者。
思わずこめかみがヒクつく。幾分足取りをはやくしながら返事もかえさず、庭先を突き進んだ。
「総司!てめぇまた人の部屋で!!」
たどりつくなり声をあげるのはもはや日課のようになりつつある。
自分の部屋もあるし、部屋の住人も不在というのに、すぐ俺の部屋に入り込む。
お気に入りの場所を、我が者顔で占拠する猫みたいに。
そして悪びれた様子もなく、
「お帰りなさい」
と、よく猫が木の上から人間を見下ろして見せるような、ふふんという余裕の笑みを浮かべる。
「なんでお前はいつも!」
問いただしてみても、あぁ言えばこう言うだ。
「だから、この部屋が一番涼しいからだってこの間言ったじゃないですか。」
やだなぁと、さもめんどくさそうな顔をして答える。
春なら桜が見えるからとか、秋なら紅葉がよく見えるからとか、冬なら日がよくあたるからとか、きっと何かしら理由をつけるに違いない。
相変わらず頓着な着方をした着物の胸元、その端からのぞくものに目がとまり、また叫び声を上げたいのを押さえながらじとりと、総司をにらむ。
「ほーう、で、その隠す気ゼロの胸元にある、見たことのあるものはなんだ?」
「豊玉先生の句集?じゃないですか?」
人の気もなんのその、これまた全く悪びれもせず、はずんだ声でいいやがる。
いつもいつも、いったいどうやって探し出すのか、どこに隠しても、必ず帰ってきたら、取り出した形跡がどこかにある。
「ないですか?じゃねぇ、なんでそんなところに入れてやがるのかっ、て言ってんだよ」
「いいじゃないですか、減るもんじゃないし」
と、胸元から取り出した冊子をめくりながら総司がいう。
「そういう問題じゃねぇ」
と、怒りまじりの声でいいながら、それをパシリと取り上げる。
「あぁもう五月蠅い人だなぁ、そんなに怒ってばっかりいたらそのうち血管きれますよ」
口先をとがらしながら総司が悪態をつくが・・・。
「お前がいうな」
そういうことを、幾度もさせる奴に言われたくはない。
「はいはい」
どんなけ怒っても答えない総司は、いつものように、もうっと膨れた顔をしただけで、気に留めるでもなく、受け流してきた。
言うだけ疲れるのはわかっているが、ついついいつも同じやりとりをしてしまうのだ。
「。。。ったくっ、で?めずらしく、顔出して手までふりやがったからには何かあったんじゃねぇのか?」
部屋にいりびたるのはいつものことだが、だからといって、帰ってきた俺に手をふって声をあげることなどめったにないので、何か報告ごとかとふと思い立つ。
すると、総司が、今思い出したという顔をして、こいこいという風に手をばたつかせて机のそばに腰をおろしながら笑う。
「そうですよ、そうそうそうそう、千鶴ちゃんが団子作ってくれたんですよ。で、お疲れには甘い物がいいでしょうから、土方さんにも差し上げて下さいねっていわれたから待ってたんですよ。」
はいっ、と出された皿に目をやるとその大きさからは、あきらかにおかしい比率で団子がのっていた。
大きな皿にあんこでくるまれた団子が一つ、端っこによってチョンとおいてある。
よくみるとその広くあいた部分に、おそらくまだいくつかのっていたのであろう形跡がみえる気がする。
顔より大きい皿の上に、だんご一つはさすがにねぇだろ、あの千鶴に限って。
まぁ、おおかた検討はつくが、
「皿と団子の比率、おかしくねえか?」
そう切り出すと、総司は顔色ひとつ換えずに、首をかしげてみせる。
「そうですか?わびさびっぽくていいんじゃないですか?」
「・・・・わびさびか、そりゃぁな、口の端にあんこ付けていう台詞じゃねぇだろ」
そういうと、
「えっ!!どこに」
といきなり慌てる。多分、きっと自分のなかでは完璧な犯行だったのだろうが・・・。
慌てて口元をふこうとする総司をひとしきり上から面白げに見た後、取り上げた句集で総司の頭をこつきながら意地悪くいってやる。
「はん、ついてねぇよ。ばぁか。…ったく、食ったんなら食ったって正直にいいやがれ」
「だって、土方さんが帰ってくるのが遅いからいけないんじゃないですか」
一瞬むむっとした顔をしたが、すぐいつもの顔にもどり、余裕そうにいいかえしてくる。
素直じゃねぇ。
「仕方ねぇだろ、帰れるもんなら俺だって早くかえりてぇよ」
本心だ。おえら方と顔つきあわしていいあうってのが、どれだけ疲れることだとおもってやがるのか。
そりゃ屯所にいるほうが、たとえ仕事をしていたとしても気が楽だ。それに、総司の顔もみれるわけで・・・とそれはさすがに言ってやらねぇが。
あげあし取りが図にのると困るからな。
「そんなこといって、どこかで寄り道してくる相手でもいるんじゃないですか?」
しかし、とうの総司は、いちいちそんな文句をつけてくる。本当に一回、なんとかこいつを黙らせる方法はないものかと嘆息してしまう。
「ったく、何いってやがんだ、てめぇ以外いるわけねぇだろうが」
と勢いでいいつつ、つい顔が赤くなるのもどうにかしなければいけないと毎回ながら思う。
鬼の副長が聞いてあきれる・・・な。
するとあんのじょう、そこをみのがさずにつついてくるのが、総司だ。
「はは、土方さん、そんなに顔赤くして言ったら説得力なさすぎ」
「あぁあぁあぁ、どうせね、じゃぁこれはいらねぇな、千鶴の団子食ったしな?」
どうにも何か意地悪してやらないと気が済まない。なかばやけくそな気分で総司にくいつく。
甘い物が好きな総司のために、と買ってきた荷物のことを思い出し、風呂敷からだすと包装がよく見えるように、総司の目の前にちらつかせてやる。
数秒、何?という顔でふくろを目で追っていた総司が慌てて目を輝かせ、立ったままの俺の顔をしがみつく勢いでみつめてくる。
「えええ、なんですか?わっちょっとそれ○○屋の包装じゃないですか、それってもしかして!」
「誰かさんの好きな○○屋の三色団子だが、・・・まぁいらねぇよな、けっこう食ったろ、千鶴のだんご」
意地悪っぽく、指摘するが、総司は侵害だという顔をして手をのばしていう。
「それとこれとは話が別ですよ、団子の内容も味も違うじゃないですか。」
そういって、俺の手から袋を取り上げると、早速、がさがさと楽しそうに箱をあけにかかる。
お目当ての団子が姿を現すと、満面の笑みをうかべた。
これが1番隊組長として、刀をふるい、恐れられている男だと誰が思うだろうか。
どうみても、そこらへんに転がっている無邪気な青年にしかみえない。
こういう時だけは、昔からかわらないガキがそこにいるようで、なんとなくほっとしてしまう。
「ひーふーみぃ、ふふ、これだと、明日も食べれるなぁ。よし、お茶いれてこよっと、土方さんの分もいれてきてあげてもいいですけど、どうします?」
包装の中身の団子の数に、食べる予定をふくらませてにんまりと笑うと、スタッと勢いよく立ち上がる。
あまりの勢いのよさに、思わずこっちがよろめいてしまう。
「おお、・・・・・・?っていれてきてあげますよ、と素直にいいやがれってんだ全く」
「あははは、じゃ、いってきます」
といって、俊敏な動きでするっと部屋からでていく。
嵐の後のような静けさがたちこめ、「はぁっ」とひとつため息をつく。
そしてなにはともあれと、障子を背にして、腰をおろし一息つこうとしたとたん、いきなりガタンっ!!と障子がなる音がして、思わずビクリと肩をふるわせるはめになった。
なんだ??と思ってふりかえると少しあけられた障子のすきまから、総司がひょこりと顔をだす。
「あっ、ちょっと土方さん、勝手に食べないでくださいよ。1本くらいあげてもいいですけど、僕より先に食べないで下さいね」
びしっと指をさして念をおしにきた総司に俺は深々とため息をつく。わざわざそんなことを言いに戻ってきたのかこいつは。。。。
「お前じゃあるまいし、食うかばかっ!!」
やっと腰をおちつけて、総司のほうをみると、首をかしげていらぬ言いがかりをつけてくる。
「えー本当かなぁ、だっていま、びくってなってませんでした?」
「あん?そりゃ、お前が出てったと思ったのに、いきなりすぐに戻ってくるからだろ。」
「・・・まぁ、そういうことにしておきますけどねぇ」
本当に、どうしてこう、何事も俺のいうことをいちいち認めようとしやがらないのか。たまには、素直にみとめやがれってんだ。と顔をしかめている俺を放置して、総司はまたきびすをかえして来た方向へと帰って行った。
鼻唄でも聞こえてきそうな軽い足取りで部屋からはなれていくその足音をききながら、なんとなく、笑みがこみ上げてきた。
帰り着くまでのあのイライラは、どこ吹く風だ。
・
・
・
『しれば迷いしなければ迷わぬ恋の道』
あぁ、やっぱりいけねぇなぁ。
総司から取り上げて机の上に置いていた句集をめくり、その句の上をなぞる。
これを書いたのは何時の日だったか。
残すには酸っぱく、塗りつぶし、消してしまうには惜しく、つい、囲んでしまった句。
本当に、迷ってばかりだ・・・。
最後までお読みください有難うございます。
何事も勢いで書いてますので、ゲーム内容ねじまがったり、間違ってることも多数あるかと思いますが、野良猫のだったらいいな的パロディということでご容赦下さい。
そしてまた、土方さんの句が、わかりやすいといいますか、可愛いといいますか(史実の方が作られているのに大変失礼なのですが)。
ドラマCDででてくる内容以外にも読んでみたくて、WEB探索をして、そうして全句見てみたら、なんだか余計に土方さんのファンになってしまいました。
豊玉先生、もっとたくさん、あなたの句が読んでみたいですよ。きっと、言うように決してうまい句ではないのかもしれないですが、それでもなんとなく暖かな土方さんの人柄がでているような気がします。会ったこともないのに恐縮ですが、会ってみたいと思わせる。私にはそんな句でした。
で、その中でやっぱり気になってしまったのが、句集の中で唯一囲まれた、あの「知れば迷い・・」ていう句なんですよね。土沖!!と言ってる私としては、ビビビっとくるものが。
それでつい、書いてしまった小説をせっかくなのでアップしてみました。
土方×沖田です。いえ、正直からみはございません。いろいろとゲームやアニメと違う設定もあるかもしれません。それでもいいよーっという方は、よろしければ本文続きからお楽しみください。でも、長いですのでご容赦を。
知れば迷い・・・
幕府のお偉方とあーだこうだと言い合って、やっとこ解放されて屯所の門をくぐると嫌というほど聞き覚えのある声が自分の名を呼ぶ。
正直毎回、疲労困憊だ。無理ばかりいいやがって。思い出すとまた腹が立つ。声には気づいていたが、俺は無言でずんずんと目指す方向へ足を進めた。
そうやっていらいらしながら奧にある自分の部屋へと向かっていると、向かう先から悪気など皆無、といわんばかりの声が先ほどよりも近くなって飛んでくる。
「土方さんてばー!」
自分の不在中、勝手に部屋に入り込む不届き者。
思わずこめかみがヒクつく。幾分足取りをはやくしながら返事もかえさず、庭先を突き進んだ。
「総司!てめぇまた人の部屋で!!」
たどりつくなり声をあげるのはもはや日課のようになりつつある。
自分の部屋もあるし、部屋の住人も不在というのに、すぐ俺の部屋に入り込む。
お気に入りの場所を、我が者顔で占拠する猫みたいに。
そして悪びれた様子もなく、
「お帰りなさい」
と、よく猫が木の上から人間を見下ろして見せるような、ふふんという余裕の笑みを浮かべる。
「なんでお前はいつも!」
問いただしてみても、あぁ言えばこう言うだ。
「だから、この部屋が一番涼しいからだってこの間言ったじゃないですか。」
やだなぁと、さもめんどくさそうな顔をして答える。
春なら桜が見えるからとか、秋なら紅葉がよく見えるからとか、冬なら日がよくあたるからとか、きっと何かしら理由をつけるに違いない。
相変わらず頓着な着方をした着物の胸元、その端からのぞくものに目がとまり、また叫び声を上げたいのを押さえながらじとりと、総司をにらむ。
「ほーう、で、その隠す気ゼロの胸元にある、見たことのあるものはなんだ?」
「豊玉先生の句集?じゃないですか?」
人の気もなんのその、これまた全く悪びれもせず、はずんだ声でいいやがる。
いつもいつも、いったいどうやって探し出すのか、どこに隠しても、必ず帰ってきたら、取り出した形跡がどこかにある。
「ないですか?じゃねぇ、なんでそんなところに入れてやがるのかっ、て言ってんだよ」
「いいじゃないですか、減るもんじゃないし」
と、胸元から取り出した冊子をめくりながら総司がいう。
「そういう問題じゃねぇ」
と、怒りまじりの声でいいながら、それをパシリと取り上げる。
「あぁもう五月蠅い人だなぁ、そんなに怒ってばっかりいたらそのうち血管きれますよ」
口先をとがらしながら総司が悪態をつくが・・・。
「お前がいうな」
そういうことを、幾度もさせる奴に言われたくはない。
「はいはい」
どんなけ怒っても答えない総司は、いつものように、もうっと膨れた顔をしただけで、気に留めるでもなく、受け流してきた。
言うだけ疲れるのはわかっているが、ついついいつも同じやりとりをしてしまうのだ。
「。。。ったくっ、で?めずらしく、顔出して手までふりやがったからには何かあったんじゃねぇのか?」
部屋にいりびたるのはいつものことだが、だからといって、帰ってきた俺に手をふって声をあげることなどめったにないので、何か報告ごとかとふと思い立つ。
すると、総司が、今思い出したという顔をして、こいこいという風に手をばたつかせて机のそばに腰をおろしながら笑う。
「そうですよ、そうそうそうそう、千鶴ちゃんが団子作ってくれたんですよ。で、お疲れには甘い物がいいでしょうから、土方さんにも差し上げて下さいねっていわれたから待ってたんですよ。」
はいっ、と出された皿に目をやるとその大きさからは、あきらかにおかしい比率で団子がのっていた。
大きな皿にあんこでくるまれた団子が一つ、端っこによってチョンとおいてある。
よくみるとその広くあいた部分に、おそらくまだいくつかのっていたのであろう形跡がみえる気がする。
顔より大きい皿の上に、だんご一つはさすがにねぇだろ、あの千鶴に限って。
まぁ、おおかた検討はつくが、
「皿と団子の比率、おかしくねえか?」
そう切り出すと、総司は顔色ひとつ換えずに、首をかしげてみせる。
「そうですか?わびさびっぽくていいんじゃないですか?」
「・・・・わびさびか、そりゃぁな、口の端にあんこ付けていう台詞じゃねぇだろ」
そういうと、
「えっ!!どこに」
といきなり慌てる。多分、きっと自分のなかでは完璧な犯行だったのだろうが・・・。
慌てて口元をふこうとする総司をひとしきり上から面白げに見た後、取り上げた句集で総司の頭をこつきながら意地悪くいってやる。
「はん、ついてねぇよ。ばぁか。…ったく、食ったんなら食ったって正直にいいやがれ」
「だって、土方さんが帰ってくるのが遅いからいけないんじゃないですか」
一瞬むむっとした顔をしたが、すぐいつもの顔にもどり、余裕そうにいいかえしてくる。
素直じゃねぇ。
「仕方ねぇだろ、帰れるもんなら俺だって早くかえりてぇよ」
本心だ。おえら方と顔つきあわしていいあうってのが、どれだけ疲れることだとおもってやがるのか。
そりゃ屯所にいるほうが、たとえ仕事をしていたとしても気が楽だ。それに、総司の顔もみれるわけで・・・とそれはさすがに言ってやらねぇが。
あげあし取りが図にのると困るからな。
「そんなこといって、どこかで寄り道してくる相手でもいるんじゃないですか?」
しかし、とうの総司は、いちいちそんな文句をつけてくる。本当に一回、なんとかこいつを黙らせる方法はないものかと嘆息してしまう。
「ったく、何いってやがんだ、てめぇ以外いるわけねぇだろうが」
と勢いでいいつつ、つい顔が赤くなるのもどうにかしなければいけないと毎回ながら思う。
鬼の副長が聞いてあきれる・・・な。
するとあんのじょう、そこをみのがさずにつついてくるのが、総司だ。
「はは、土方さん、そんなに顔赤くして言ったら説得力なさすぎ」
「あぁあぁあぁ、どうせね、じゃぁこれはいらねぇな、千鶴の団子食ったしな?」
どうにも何か意地悪してやらないと気が済まない。なかばやけくそな気分で総司にくいつく。
甘い物が好きな総司のために、と買ってきた荷物のことを思い出し、風呂敷からだすと包装がよく見えるように、総司の目の前にちらつかせてやる。
数秒、何?という顔でふくろを目で追っていた総司が慌てて目を輝かせ、立ったままの俺の顔をしがみつく勢いでみつめてくる。
「えええ、なんですか?わっちょっとそれ○○屋の包装じゃないですか、それってもしかして!」
「誰かさんの好きな○○屋の三色団子だが、・・・まぁいらねぇよな、けっこう食ったろ、千鶴のだんご」
意地悪っぽく、指摘するが、総司は侵害だという顔をして手をのばしていう。
「それとこれとは話が別ですよ、団子の内容も味も違うじゃないですか。」
そういって、俺の手から袋を取り上げると、早速、がさがさと楽しそうに箱をあけにかかる。
お目当ての団子が姿を現すと、満面の笑みをうかべた。
これが1番隊組長として、刀をふるい、恐れられている男だと誰が思うだろうか。
どうみても、そこらへんに転がっている無邪気な青年にしかみえない。
こういう時だけは、昔からかわらないガキがそこにいるようで、なんとなくほっとしてしまう。
「ひーふーみぃ、ふふ、これだと、明日も食べれるなぁ。よし、お茶いれてこよっと、土方さんの分もいれてきてあげてもいいですけど、どうします?」
包装の中身の団子の数に、食べる予定をふくらませてにんまりと笑うと、スタッと勢いよく立ち上がる。
あまりの勢いのよさに、思わずこっちがよろめいてしまう。
「おお、・・・・・・?っていれてきてあげますよ、と素直にいいやがれってんだ全く」
「あははは、じゃ、いってきます」
といって、俊敏な動きでするっと部屋からでていく。
嵐の後のような静けさがたちこめ、「はぁっ」とひとつため息をつく。
そしてなにはともあれと、障子を背にして、腰をおろし一息つこうとしたとたん、いきなりガタンっ!!と障子がなる音がして、思わずビクリと肩をふるわせるはめになった。
なんだ??と思ってふりかえると少しあけられた障子のすきまから、総司がひょこりと顔をだす。
「あっ、ちょっと土方さん、勝手に食べないでくださいよ。1本くらいあげてもいいですけど、僕より先に食べないで下さいね」
びしっと指をさして念をおしにきた総司に俺は深々とため息をつく。わざわざそんなことを言いに戻ってきたのかこいつは。。。。
「お前じゃあるまいし、食うかばかっ!!」
やっと腰をおちつけて、総司のほうをみると、首をかしげていらぬ言いがかりをつけてくる。
「えー本当かなぁ、だっていま、びくってなってませんでした?」
「あん?そりゃ、お前が出てったと思ったのに、いきなりすぐに戻ってくるからだろ。」
「・・・まぁ、そういうことにしておきますけどねぇ」
本当に、どうしてこう、何事も俺のいうことをいちいち認めようとしやがらないのか。たまには、素直にみとめやがれってんだ。と顔をしかめている俺を放置して、総司はまたきびすをかえして来た方向へと帰って行った。
鼻唄でも聞こえてきそうな軽い足取りで部屋からはなれていくその足音をききながら、なんとなく、笑みがこみ上げてきた。
帰り着くまでのあのイライラは、どこ吹く風だ。
・
・
・
『しれば迷いしなければ迷わぬ恋の道』
あぁ、やっぱりいけねぇなぁ。
総司から取り上げて机の上に置いていた句集をめくり、その句の上をなぞる。
これを書いたのは何時の日だったか。
残すには酸っぱく、塗りつぶし、消してしまうには惜しく、つい、囲んでしまった句。
本当に、迷ってばかりだ・・・。
最後までお読みください有難うございます。
何事も勢いで書いてますので、ゲーム内容ねじまがったり、間違ってることも多数あるかと思いますが、野良猫のだったらいいな的パロディということでご容赦下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます