野良猫本舗~十六夜桜~

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小説 薄桜鬼『白い嘘』(土方×沖田 随想録)<R18指定>

2011-05-09 | 薄桜鬼 小説

久しぶりにR18指定です。
沖田さんサイドのお話です。
特にこれを読まなくても、話は進められますので、18歳未満の方、また、そういった表現の苦手な方は、入らないようにご注意下さい。

労該になり、羅刹になり、傾き続ける新選組の中にあり、苦悩する総司は??

 

 

↓↓↓<18歳未満、これ以降、閲覧禁止です。

◆白い嘘-総司-◆(土方×沖田 随想録)

 慶応3年11月。

 勝ってうれしい花いちもんめ、負けて悔しい花いちもんめ。
 あの子が欲しい、あの子じゃわからん。
 この子が欲しい、この子じゃわからん、相談しよう、そうしよう。

 勝って嬉しい花いちもんめ、負けて悔しい・・・
 「っ!!」
 びくりと、身体を震わせ、何かを跳ねのけておきあがる。
 「・・あっ・・・」
 冷静になってそれを見ると、土方さんが驚いた顔をして、手を差し出したまま固まっていた。
 「すまねぇ、驚かせたか?声はかけたんだが、返事がなかったから勝手に入った」
 瞠目する僕の顔をみて、土方さんが謝罪をする。
 すこぶる身体が重かった。
 陽光は多少陰ってきてはいたが、まだ夜がくるには少し遠く、羅刹になった身には、ひどく憂鬱な空気を運ぶ。

 血が欲しい、あなたが欲しい。
 土方さんがそこにいる。それだけで、身体が啼いた。
 労咳になったと知ってから、僕は、土方さんを拒み続けた。
 労咳は、人にうつる。
 土方さんは、どこにそんな確信があるのかわからないけれど、さして気にもしないように、僕に接する。
 僕がそれを避けるから、ついぞ、唇にふれはしないが、それでも毎日、こうして部屋へやってくる。
 近藤さんの横にあるべき、副長に、うつしてしまってはいけない。
 けれど、そう思えば思うほど、土方さんの姿を探した。
 変若水を飲み、羅刹になっても病は消えず、結局何もかわりはしない。
 ただ、時に、死ぬほど喉が渇き、衝動にゆさぶられ、届かぬ思いに、喉をかきむしる。
 それでもまだ、羅刹の力を使うことで、剣が握れる。それだけだ。

 当たり前のようにそばにいて、当たり前のように、絡みつき、あたりまえのように、その唇を受け入れていたのに・・・。
 こんなにも、苦しいことだったんだね。
 「大丈夫か?」
 心配そうに覗き込む土方さんに僕は、ありったけの笑みをうかべて
 「大丈夫ですよ」
 と答える。
 土方さんは、不審げに、僕の顔を見詰めたまま、眉間に皺をよせ、
 「そうか」
 と答えた。

 嘘は嫌いだ。なのになぜ、この口は嘘を吐く。
 叫んでしまいたい。
 大丈夫じゃないと。触れて欲しいと、何もかも忘れるくらい・・・。
 あなたはわかっている。
 だからそんな顔をする。
 何か言いたそうに、けれど、ギュッと唇をむすんで、それを噛みしめる。
 僕に見えないように隠した拳を、ギリギリと握り締めて、スッと土方さんが立ち上がる。
 「書かなきゃならねぇ書類があるから、もう行く。」
 「はい」
 障子に手をかけた土方さんが、立ち止まって振り向く。どこか、悲しげな表情を浮かべ、僕を見たあと、眼を閉じて障子の外へ出る。
 やがて閉じたその向こうに僕は心の中で手をのばす。
 あなたが、欲しい・・・・。


 「は・・・・ぁ・・」
 遠ざかるその足音にすら、身体が反応しようとする。
 布団の中で、身体を丸め、自分の中心を手で探す。
 のろりと起き上ったそれに触れ、眼をつぶる。
 「う・・・ん・・・・っ」
 土方さんの手を感じる。
 優しくつつみ、その感触を確かめるように、滑らかな手のひらが身体を這う。
  もう、長く触れていないその感触が、今も、刻みこまれ、思い出される。
 壊れ物に触れるように、ゆっくりと大事そうに触れた唇が、やがて熱っぽく僕の唇を吸い上げ、そこを割って入りこみ、舌をからませる。
 それに合わせるように、唇を開く。
 「土方・・・さ・・・ん・・ぁ・・」
 それから、その唇は、耳をはみ、首筋を流れて、胸元に紅い跡を残す。
 細く長い指先が、胸元の突起にふれ、柔らかな果実をつかむようにそっとそれをつまみ上げ、その形を確かめるように、何度も、何度も抑揚をつけて転がす。
 「いっ・・・や・・・ぁ」
 時に強く力をいれて摘み、それが離れた瞬間に、それを追い求めるように、胸を前に突き出す。
 その反応を楽しんで、意地悪な笑みを浮かべ、敏感になったそこにねっとりと唾を含んだ舌を、皿に残ったその一滴までを嘗めつくす時のように、執拗に押し付けて這わせる。
 「あぁぁっ」
 自分の手で、同じように、襟の隙間から手をいれて、そこに触れる。
 思い出し、想像し、その感触を追いかける。
 しょせんそれは自分の手にすぎず、土方さんの手ではない。
 けれど、恋焦がれてそればかりを思う妄想がそこにあたかもあるように、感じさせる。
 甘くて、情熱的で、何よりも優しいその手に抱かれる。
 翻弄され、甘い声をあげると、体制をかえて、背中から僕の身体を抱きしめて、もう一度唇をついばみながら、手を下半身へとすべらせる。
 込み上げる恥ずかしい声を抑えようと手を噛むと、「傷がつく」とその手を離させ、必ずあの人はそのついた歯型を舌で舐める。
 自分の唾と土方さんの唾が絡み、その柔らかい感触が余計に身体を疼かせた。
 再び滑り込ませた指先が、僕を、ゆっくりと転がす。
 土方さんが、触れる時、それはいつもとてつもなく優しくて、一つ一つ、大事なものをいたわるように、確かめるように、這う。
 「ふ・・・っんんっ」
 そのやんわりとした手触りに、恥ずかしくて仕方がないのに、自然と腰が浮いて、自分からそれを求める。
 優しく細めた眼で僕を見下ろし、愛おしそうに首筋を舐める。
 「や・・ぁ」
 こうして、後ろから抱きしめられる時、僕の心は何故か、いつも安心して、背に伝う解けるようなぬくもりに、身をゆだねる。
 その腕に抱かれる、あの時間だけ、土方さんは僕だけのものになる。
 僕を見る、僕だけを見ている。僕のことだけを考えてくれる。
 『総司』
 耳元でささやく声音に、ゾクリと背中が波打つ。
 そうして、動く指先の甘さに、翻弄されて、じわりと目元に涙が浮かぶ。
 「ふ・・・・ぁ・・」
 『総司、愛しているよ』
 留めをさす囁きに、身を震わせ、手のひらの上に果てる。
 「っ・・・・あぁぁ」
 いつもこの瞬間に、糸が斬れたみたいに身体の力がぬけて、それを土方さんが支えてくれた。
 支えて・・・・・。

 くれない・・・。
 それは、土方さんではなく、自分の手を汚し、むなしさだけが、押し寄せる。
 「・・・・・」
 涙がこぼれた。
 『素直じゃない』
 土方さんに何度も言われたその言葉がよぎる。
 何故?どうして?
 あなたは悲しい顔をする。
 昔も、今も。。。。
 僕さえ、素直に求めれば、きっとあなたは答えてくれる。
 それでも僕は、嘘を吐く。
 僕はあなたに何ができる?僕はあなたに何を返せる?
 「ゴホゴホ」
 とめどなく、咳があふれ、汚れていない方の手で口をおさえる。
 「…土方さん・・・・」

 勝って嬉しい花一匁、負けて悔しい花一匁。
 あの子が欲しい、あの子じゃわからん。
 この子が欲しい、この子じゃわからん。

 土方さんが・・・欲しい。
 僕は、誰ともしれない黒い影に、拳をつきだす。
 負けて悔しい・・・・・・。

 いくらだしても、勝てず。僕は泣きそうな顔であなたを見る。
 あなたは悲しげに、何かを言いたそうな顔をして。
 それでもあなたは、僕の為に、大丈夫だと、次があると笑う。

 どうしたら、僕は勝って、あなたのところへ行けるだろうか?
 わかっているのに・・・・嘘を吐く。

<終>

一方土方さんは??次週、土方サイド更新予定です。

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