「総司」
それを見逃さない土方さんが、自分の腕をのばす。その手に指を絡め、少し力をいれて、口からはなす。
「んっ・・・ん」
唾がからむその甲を土方さんの舌がなめる。
「総司、跡がつくから、駄目だっていっただろ。声をだしたってかまわねぇんだ。もっと、俺に聴かせてくれねぇか?」
「・・・っ」
耳元にささやいた唇が、肩に口づける。
そしてゆっくりと体勢を変えると、床に僕の身体をおろした。
強く打ちつけてしまわないように、土方さんの腕がクッションになって、着地際にするりとぬける。
背中に伝わる、柔らかな布団の感触が幾分緊張を和らげる。
上から見下ろすその顔が、愛おしそうにほほ笑んだ。
なんとなく、気恥ずかしくて目をそらすと、こんどは、ちょっとおかしそうに笑い、体重をかけないように、その身体が、僕の上におりてくる。
長い黒髪が、サワサワとゆれて、肌の上に降ってくる。その感触にすら、僕の身体は反応を返す。
気にせず、近づく舌が胸の突起をやんわりと舐める。
「あっ、あ・・・はっ・・ぁ」
舌の動きにあわせるように、色を含んだ声が漏れ、身体が勝手にそれを求めて、胸をつきだそうとする。
幾度となく、それを転がしながら、土方さんの肩手が僕の帯に手をかけた。
それをうまく片手で解くと、ただでさえ、着乱れた着物がよりいっそうはだけて、肌を露出する。
ひとしきり、上半身をくまなく愛撫した後、身体を起こした土方さんが自分の着物の襟を暑そうにはだける。
鍛錬してよく整った肌が、少しだけあらわになった。
反応し、首をもたげた僕の中心に目を移し、そろりとその手をそこに添える。
コクリと喉をならすと、そこに顔を近づける。
えっ?と思った瞬間。それは土方さんの口の中に、すっぽりと収められていた。
熱い口内の熱が、湿った舌とともに、それを包む。
「土方さ・・・・あっ・・・あぁっ」
その感触を受けてさらに、そこが硬くなる。
ズズッと吸い上げては、舌を転がす。そしてまた、吸い上げる。
僕は、涙目になりながら、声をあげる。
もう、全く抑えられず、変な声が絶えず漏れた。
ゾクゾクとした感覚が背中を走る。
この間、その手で触れられただけでもみるみるうちに、達してしまったのに、その口内の感触はそれよりも早く、出したいという欲求が支配する。
「もう・・ダ・・め・・・デ・・・あぁっ・・あぁ」
まだ、咥えられたままの先端がドクンと波打つ。
土方さんをひきはなそうとするも間に合わず、その中へと吐き出す。
「ごめんなさ・・・」
どうしようと、動揺が走る。
ゆっくりと、それを離した土方さんが顔をあげた。
受け止めきれなかった白い液体が、少しだけ、その口から顎をつたって流れ落ちた。
おびえるようにその姿を見上げていた僕に、土方さんがほほ笑む。
そして、ゴクリと喉をならし、口の中の液体を飲み込んだ。
『う・・・そ・・・・』
目を見開いてそれを見る。
土方さんは、全く気にせず、顎を伝ったそれを指で拭きとると、それすらも舐めとり、汚れた唇の端を舌でぬぐう。
「総司の味がする」
僕の方に目をやると、唇の端をあげて、にんまりと笑う。
カッと頬が熱くなる。
本当に、一生勝てない気がする・・・。
あまりにも早く一気に果ててしまった為か、身体が思うように動かない。
脱力し、ただ茫然とその姿を見る。
「嫌いになったか?」
困ったようにはにかんで、土方さんが言う。
僕は、その体制のまま、首だけを必死で横に振った。
「そうか」
そういって笑んだその表情にドキリとする。
頭がどうにかなったと思うくらい、土方さんの表情、仕草のすべてに、いちいち眼のやり場に困った。
でもまだ、それで終わりじゃなかった。
少しだけ僕が落ち着くのをまってから、土方さんが、横に転がり、僕を引き寄せる。
そしてそのまま、転がって自分の身体ごと僕を反転させると、体制が逆になる。
土方さんが下になり、僕は土方さんと向き合った状態で、その上に乗りかかる。
見下ろされるのも恥ずかしいが、下から見上げられると、何故だかよけいに恥ずかしく感じた。
「総司、足だけ、俺をまたいで開いて、俺の上にのっかってろ」
土方さんがささやく。どうしていいのかわからず、もたついていると、僕を抱えたまま、僕の両足を開く。
少しだけ浮いていた膝が、布団の上に着地する。そして、上半身を引き寄せて抱えた。
僕の全体重が土方さんの上にのしかかる。着乱れて露わになった肌に僕の肌が密着する。
「そのまま、力を抜いてろ。何も考えなくていいから」
そう言っておもむろに、指を口にいれ、指先から唾が糸をひくほど濡らした土方さんは、その指を僕のお尻のすぼまりへと伸ばす。
「・・・・・っつ」
その中心に指がふれるとギュッと目をつぶって土方さんにしがみついた。
「ほら、力が入ってる。」
逃げるように上半身を上げようとする僕をグイっとさらに引き寄せて、腕をだらりと垂れさせる。
手の甲が、土方さんの横に落ち、その体制のままだと、どうやっても、上半身を起こすことができなくなった。
上半身で支えようと力がはいり、逆に、下半身しから力がぬける。
「無理はしねぇから、そのまま力を抜いて体重をまかせてろ。」
そう言うと、再び、指で中心をさぐる。ふれた指先が、入口をほぐそうと回転を加えながらうごく。
味わったことがない感覚に必死に耐えて目をつぶる。時折肩にかかる息に身を震わせてる。
指先はゆっくりと入念に、何度も何度も揉みほぐす仕草をくりかえす。
唇を噛んで耐えていると、土方さんの唇が、首筋に触れた。
出した舌がその筋を下から上へとなめあげる。
「はっ・・・あぁ」
自分でもびっくりするくらい甘い声が漏れた。
もがこうとするが、片腕を掴まれたままで動けない。
衝撃で、ゆるんだすきに、指が中へと侵入する。
「ひっ・・・ぃ嫌・・」
ギュッとしめつけたその指のわずかな感覚が脳内を支配する。
誰もふれたことのない場所に、土方さんの指が触れている。
恥ずかしくて顔が紅くなる。
その指が動くと、合わせるように、そこも収縮をくりかえす。
ときおり、押し広げながら少しずつ奥へと侵入してくる。
徐々に、指の数が、2本3本と増える。その感覚をまぎらわすように、首筋に、唇がふれる。
「痛くねぇか?」
耳もとで囁き時々気づかう。
想像したよりも、指が入る痛みは感じなかった。むしろ、閉じているはずのその場所が広げられているという感覚にへんな気落ちになる。
と、ある部分を刺激され、びくりと身体が揺れる。
「あっ、あ・・・」
「ここがいいのか?」
「いっ・・・やっ・・・・ぁ」
同じ場所をもう一度なぞる。操り人形のようびビクビクと身体が震え、たまらず、動かせるほうの腕を床につけ布団を握りしめた。
何度か、その場所を探り、覚えようとするかのように刺激を繰り返すと、やがて、ゆっくりと土方さんの指が、外へとでていく。
柔らかくほぐされ咥えていた塊をなくしたそこは、ヒクヒクと物欲しそうに動いていた。
僕の身体を布団の上に戻すと、太ももに手をあてて、大きく開く。
器用に片手で自分袴の帯をほどき、土方さん自身が露わになる。
屹立したそれに思わず僕も息をのんだ。
どうみても、先ほど中にあった指の感触より太いそれが、ぴたりと、僕に吸いつく。
「いいか?」
両手に手のひらをつき、優しく見下ろす。
覚悟はさっぱりつかないけれど、眼をつぶったまま、首を縦に何度も振る。
その姿に、土方さんが仕方ねぇやつだなという風に笑みを浮かべるが、当然僕には見えない。
と、土方さんが僕の手をつかみ、自分の髪にふれさせる。
「握ってろ。痛かったら、好きなだけひっぱってかまわねぇから。」
甘く、優しく、心から僕を思ってくれている声。
ゆっくり、土方さんの腰が動く。硬く押し当てられたそれが、侵入しようと入口を圧迫する。
はじめは、そこが開いていく感覚があるものの、それほど違和感は感じなかった。
けれど、ある一定を押し入ったころ、広げられた内壁が悲鳴をあげる。
「痛っ・・」
たまらず、つかまされた髪を勢いよく引っ張ってしまう。
それでもまだ押し入るそれに、眼から涙がでる。
髪の数本が、ブツリと音をたてて、抜けて、落ちてくる。
そくらい、相当に強く引っ張ってしまったのに、土方さんは、少しだけ顔をゆがめただけで悲鳴すらあげず、僕の顔を心配げに見つめる。
「やめておくか?」
息をつめて耐える姿に土方さんが聞くが、僕はブンブンと首を横にふる。
だって、ここでやめたら、もうできない気がする。
怖くなって、余計に受け入れられなくなったら、そんなの嫌だ。
「ったく、強情なやつだな」
嘆息し、唇を重ね、濃厚に舌をからませて、気をそらす。
近づく土方さんの肩に必死にしがみつき、それでも起こる痛みに爪をたてる。
肌をえぐる痛みに、一瞬、土方さんが顔をゆがめるが、それでも、すぐに微笑んで、僕の身体抱く。
駄目だと思うのに、何度も何度も爪をたてた。
「総司、少しだけ、お腹に力をいれて、軽くいきんでみろ。その方が、開いて少しは楽になるから」
言われた通り、お腹に力をいれる。とはいえ、いっぱいいっぱいで、それほど旨くはできない。
けれど、先ほどよりも幾分楽になる。緩和するのをみはからっては、ズッズッと、それが中に入ってくる。
と、それが、先ほど感じたあの場所に当たる。
「・・ああっ・・・」
衝撃にグンッと、身体がそる。
緊張を手放したそこが、その瞬間に勢いよくそれを受け入れ、僕は狂ったように高い声をあげた。
わけもわからず、入口が収縮と緩和をくりかえす。そこが収縮するたびに、土方さんの顔がゆがむ。
「そ・・・う・・じ」
絞り取ろうとするように何度も何度も締め付ける。
もう、どうしたら止められるのかも分からなかった。
締めあげられ、土方さんの息があがり、もがく僕の唇を吸い上げる。
「あっ、あぁぁっ・・・あ」
その後は、もうむさぼるように求めあい、わけもわからぬまま、ヒクヒクと身体が痙攣し、その先端から吐き出して果てる。
勢いよく飛び出したそれが土方さんの腹を汚し、そこから伝ってパタパタと僕の上にもシミをつける。
その最期の収縮に絞り取られた土方さんも追うように、僕の中に放出する。
そして、ストンと頭を僕の胸につけ、荒い息を繰り返した。
ハァハァと互いの息が部屋の中に木霊する。
やがて、顔をあげると、放心したまま涙をためた、僕の目の淵を、ゆびでなぞる。
微笑みはにかむその顔は、今まで見た中で一番穏やかで、優しい顔をしていた。
翌朝、僕が土方さんの横で目覚めると、先に目を覚ましていたその人は、横になったまま肩肘を立てて僕の方を目を細めながら見ていた。
気恥ずかしくて目をそらし、うつむくと、僕の肌に残る、土方さんが残した紅い跡が目に入る。昨日の出来事が思い出されて、余計にいたたまれなくなった。
着物こそ着ていなかったけど、まわりは綺麗にされていて、汚した形跡もみつからない。
きっと、あのまま眠ってしまった僕のかわりに、身体をふいて、綺麗にしてくれたのだろう。
「おはよう」
土方さんが、誰にも見せないだろう穏やかな表情でそらした顔に覗き込むと、笑いかけ、僕の髪をなでる。
恥ずかしすぎて、僕は必死で目をそらして布団に埋もれる。
土方さんの香りが鼻をくすぐると、よりいっそう、顔が熱くなった。
先に、起き上り、着物に腕を通す土方さんの背中をみつめる。
その肩の数か所から紅い血がにじんでいた。
「あっ」と思ったけれど、何も言えない。
そうこうしていると、土方さんが着物を二つ持ってよってくる。
手にした着物をもって笑いかけ膝をついて腰を落とすと、
「どっちにする?」
と聞く。
片方は、僕がいつも着ている着物。もう片方は、昨日土方さんが着せてくれた着物だった。
思わずつい、土方さんの左手、土方さんの濃い墨染の着物に手をのばす。
と、面白そうに、土方さんが意地悪な顔をして笑う。
「なんだ、また誘ってるのか?」
「なっ!!」
クククと笑いながら、僕の耳元に口を近づけて囁く。
「てめぇの着物にも嫉妬しちまう男だぞ」
と。
「っ!!ちっ、違いますっ!!」
声を裏返らせて勢いよく叫ぶと、あわてて、布団に顔をかくした。
もう、絶対耳まで紅く染まっている。
土方さんは意地悪だ。
意地悪で、意地悪で意地悪で・・・優しくて・・・。
いつになったら勝てるだろう。この人に。
やっぱり、多分、一生・・・・・・無理だ・・・。
<終>
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