マリオン・コティヤール、ホアキン・フェニックス、ジェレミー・レナーらが豪華共演を果たした人間ドラマ。より良い人生を求めてアメリカに移住してきた女性が、さまざまな出来事に振り回されながらもたくましく生き抜く姿を映し出す。監督は『アンダーカヴァー』でホアキンと組んだジェームズ・グレイ。社会の裏側で、決して諦めることなく前進するヒロインのりんとした強さが胸を打つ。
<感想>アメリカへ移民しようとした敬虔なカトリック教徒が、なぜに娼婦まで身を落としたのか、・・・?彼女を助けたブルーノは移民の女たちを劇場で踊らせ、売春を斡旋する裏社会の男だったのです。エヴァの美しさに心を奪われた彼は、彼女をものにしようとするが、身持ちの堅い彼女に断られると、一転して売春を強要する。
エヴァも妹の療養に金がいることから、やむなくそれを受け入れていたのだが、やがて移民のための慰問ショーで、マジシャンのオーランド(ジェレミー・レナー)と出会い、彼の求愛に心が揺れる。しかし、オーランドとの従兄弟のブルーノが、嫉妬から思わぬ行動に出る。ただ幸せを求めてやってきたこの国で、怒涛の運命に翻弄されるエヴァ。彼女は教会を訪れ告白を始める、・・・。
この作品の主人公エヴァ役のマリオン・コティヤール、彼女の魅力を最大限に生かすために、すべてが仕組まれているとしても過言ではない。古典的なまでの大メロドラマで、ヒロインはとことん悲劇に翻弄される。そこで、悲劇に耐えるヒロインこそが世界を支配し、男はあくまで脇役でしかない。
ある時は、意志薄弱な二枚目であり、ある時はヒロインを地獄に突き落とす悪魔として登場するか、どちらにしてもヒロインを引き立たせる役割にしか与えられない。
というのも、メロドラマは男の受難のドラマであり、女は勝利のドラマなのだ。悲劇に突き落とされながらも、最後には勝利の雄叫びを上げるヒロインは、まさにドラマの主役的存在感になっている。
ポーランドから姉妹でアメリカに住む親せきを頼って来たものの、妹は結核の疑いで隔離され、エヴァは所持金不足で書類の不備などで入国を拒否されてしまう。そこへ登場するのが、恰幅のいい紳士然とした男、ブルーノだ。
彼は賄賂で係官との繋がりを持っており、事情を知ると素早く行動を起こす。エヴァを舟に乗せると、アジトであるニューヨークの古いアパートにエヴァを連れて行く。
惚れ惚れするような導入部に、暗い抒情を湛えた映像もいいです。何やら胡散臭い男とも見えたブルーノだが、エヴァへの接しかたは中々に紳士的である。対するエヴァは、助けてもらったにもかかわらず、ブルーノへの警戒心を解こうとはしない。
エヴァの過酷な身の上話を聞いたブルーノは、衝動的にエヴァを抱きしめようとするも、ところがエヴァは「やめて、触らないで」と突っ放し、驚いたブルーノは一瞬間をおいて、絞り出すように「恥を知れ」と言った後、「恥を」と一喝する。
彼女に受け入れられずに、自分の想いが伝わらない。まるで舞台演劇を見ているような、二人が画面の両端に思いっきり引き離して、舞台での対立のような生々しさを演出しているのも見ものです。つまり、この演出で際立つのは、エヴァとブルーノの距離の描き方ですね。近づけそうで近づけない男女の距離を、フレームをうまく利用して見事に表現していること。
エヴァと妹が脱出する小舟を、暗い倉庫の窓ガラス越しに捉えて、それを見届けるように倉庫を出ていく瀕死のブルーノの後姿。何たる余情なのだろう。
ポーランド人らしくエヴァは敬虔なカトリック信者だが、生き抜くためには綺麗ごとばかり言っていられない。場末の踊り子から娼婦への転落は、あっという間で、それを嘆き悲しんでいるかというと、そうでもないのが面白い。
ブルーノに身を任せる気はないが、遠ざける気もさらさらない。つかず離れずに苦しみられるのは、ブル-ノの方であり、エヴァは日ごとに強い女になって、身体を売ることすら躊躇しなくなる。
それでも、カトリック信者らしく教会に行き、神父に自分の罪を告白するが、神父に「男とは別れなさい」と説かれると、「地獄に堕ちます」と突っぱねる。地獄に堕ちるとは、ブルーノとは別れないことを意味するのか、どちらにしても、エヴァには戻る道はなくなっているのだ。
罪深い女であることを選んだエヴァだが、魔術師のオーランドが登場すると、彼の純情を装った行為にぐらりとよろめいてしまう。まともに生きることがまだ可能なのだと思ってしまったエヴァの軽はずみに、ブルーノは立ち直れない地獄へと突き落とされる。
まさか、ブルーノとオーランドとの一騎打ちになるとは、一人の愛する女性を巡っての闘いである。オーランドが死亡。ところが、エヴァを疫病神扱いしていた娼婦が、エヴァを殺人犯と供述して警察に追われる身になる。
勝利者には、エヴァがと思っていると、ブルーノはやっぱりエヴァを心底愛していたのですね。その結果、この作品では男のメロドラマと受け取れるようにも感じる。妹を療養所から連れだして解放する。地獄に落とされた2人は、どうにも救われないのだけれど、クライマックスでのマリオンとホアンキンの姿に、涙で曇ってしまうほどの力演は感動的です。
2014年劇場鑑賞作品・・・111 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
<感想>アメリカへ移民しようとした敬虔なカトリック教徒が、なぜに娼婦まで身を落としたのか、・・・?彼女を助けたブルーノは移民の女たちを劇場で踊らせ、売春を斡旋する裏社会の男だったのです。エヴァの美しさに心を奪われた彼は、彼女をものにしようとするが、身持ちの堅い彼女に断られると、一転して売春を強要する。
エヴァも妹の療養に金がいることから、やむなくそれを受け入れていたのだが、やがて移民のための慰問ショーで、マジシャンのオーランド(ジェレミー・レナー)と出会い、彼の求愛に心が揺れる。しかし、オーランドとの従兄弟のブルーノが、嫉妬から思わぬ行動に出る。ただ幸せを求めてやってきたこの国で、怒涛の運命に翻弄されるエヴァ。彼女は教会を訪れ告白を始める、・・・。
この作品の主人公エヴァ役のマリオン・コティヤール、彼女の魅力を最大限に生かすために、すべてが仕組まれているとしても過言ではない。古典的なまでの大メロドラマで、ヒロインはとことん悲劇に翻弄される。そこで、悲劇に耐えるヒロインこそが世界を支配し、男はあくまで脇役でしかない。
ある時は、意志薄弱な二枚目であり、ある時はヒロインを地獄に突き落とす悪魔として登場するか、どちらにしてもヒロインを引き立たせる役割にしか与えられない。
というのも、メロドラマは男の受難のドラマであり、女は勝利のドラマなのだ。悲劇に突き落とされながらも、最後には勝利の雄叫びを上げるヒロインは、まさにドラマの主役的存在感になっている。
ポーランドから姉妹でアメリカに住む親せきを頼って来たものの、妹は結核の疑いで隔離され、エヴァは所持金不足で書類の不備などで入国を拒否されてしまう。そこへ登場するのが、恰幅のいい紳士然とした男、ブルーノだ。
彼は賄賂で係官との繋がりを持っており、事情を知ると素早く行動を起こす。エヴァを舟に乗せると、アジトであるニューヨークの古いアパートにエヴァを連れて行く。
惚れ惚れするような導入部に、暗い抒情を湛えた映像もいいです。何やら胡散臭い男とも見えたブルーノだが、エヴァへの接しかたは中々に紳士的である。対するエヴァは、助けてもらったにもかかわらず、ブルーノへの警戒心を解こうとはしない。
エヴァの過酷な身の上話を聞いたブルーノは、衝動的にエヴァを抱きしめようとするも、ところがエヴァは「やめて、触らないで」と突っ放し、驚いたブルーノは一瞬間をおいて、絞り出すように「恥を知れ」と言った後、「恥を」と一喝する。
彼女に受け入れられずに、自分の想いが伝わらない。まるで舞台演劇を見ているような、二人が画面の両端に思いっきり引き離して、舞台での対立のような生々しさを演出しているのも見ものです。つまり、この演出で際立つのは、エヴァとブルーノの距離の描き方ですね。近づけそうで近づけない男女の距離を、フレームをうまく利用して見事に表現していること。
エヴァと妹が脱出する小舟を、暗い倉庫の窓ガラス越しに捉えて、それを見届けるように倉庫を出ていく瀕死のブルーノの後姿。何たる余情なのだろう。
ポーランド人らしくエヴァは敬虔なカトリック信者だが、生き抜くためには綺麗ごとばかり言っていられない。場末の踊り子から娼婦への転落は、あっという間で、それを嘆き悲しんでいるかというと、そうでもないのが面白い。
ブルーノに身を任せる気はないが、遠ざける気もさらさらない。つかず離れずに苦しみられるのは、ブル-ノの方であり、エヴァは日ごとに強い女になって、身体を売ることすら躊躇しなくなる。
それでも、カトリック信者らしく教会に行き、神父に自分の罪を告白するが、神父に「男とは別れなさい」と説かれると、「地獄に堕ちます」と突っぱねる。地獄に堕ちるとは、ブルーノとは別れないことを意味するのか、どちらにしても、エヴァには戻る道はなくなっているのだ。
罪深い女であることを選んだエヴァだが、魔術師のオーランドが登場すると、彼の純情を装った行為にぐらりとよろめいてしまう。まともに生きることがまだ可能なのだと思ってしまったエヴァの軽はずみに、ブルーノは立ち直れない地獄へと突き落とされる。
まさか、ブルーノとオーランドとの一騎打ちになるとは、一人の愛する女性を巡っての闘いである。オーランドが死亡。ところが、エヴァを疫病神扱いしていた娼婦が、エヴァを殺人犯と供述して警察に追われる身になる。
勝利者には、エヴァがと思っていると、ブルーノはやっぱりエヴァを心底愛していたのですね。その結果、この作品では男のメロドラマと受け取れるようにも感じる。妹を療養所から連れだして解放する。地獄に落とされた2人は、どうにも救われないのだけれど、クライマックスでのマリオンとホアンキンの姿に、涙で曇ってしまうほどの力演は感動的です。
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