パピとママ映画のblog

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ゆずの葉ゆれて ★★・5

2016年09月16日 | や行の映画
コピーライターとしても活躍する作家、佐々木ひとみの児童文学「ぼくとあいつのラストラン」を基にしたドラマ。苦楽を共にしてきた夫婦の深い愛と絆を、一人の少年との触れ合いを交えながら映し出す。監督は、『蛇女』などの助監督を務めてきた神園浩司。ベテランの松原智恵子と津川雅彦が中心となる妻と夫を演じ、その脇を西村和彦、小林綾子、芳本美代子らが固める。舞台である鹿児島県喜入地区の牧歌的風景に注目。
あらすじ:鹿児島県喜入の小さな町。走るのが大好きな小学4年生の武(山時聡真)は、隣家に暮らす老夫婦をジイちゃん(津川雅彦)、バアちゃん(松原智恵子)と呼んで実の祖父母のように慕っている。だが、寝たきりになってしまったジイちゃんの姿を見るのがつらくて会いに行かなくなっていた。そんな中、ジイちゃんが亡くなってしまう。人の死というものを初めて経験すると同時に、彼を避けてしまったことを悔やむ武。そこへヒサオと名乗る見知らぬ少年が現れ、競争しようと武を誘い出して速く走るコツを教えてくれるが……。

<感想>ロケ地の全面協力を取り付けての、鹿児島の山村、ご当地映画としても過不足のない作品だと思います。ですが、物語の焦点が今一つ定まらない弱さが難点ですね。
主人公の少年の家族と、隣家に住む老夫婦との絆を軸にして、老人の突然の死、お通夜、お葬式と進む中で、残されたお婆さんの回想へと展開していく。

葬式で集まってくる知人や親族は、駅伝選手で監督だった爺ちゃんの武勇伝を語り始め、婆ちゃんも古いアルバムを開いて思い出にふける。セピア色として紡がれる、夫婦の若き頃の出会いと、駆け落ちをして結ばれる2人のラブ・ストーリー。

次々と現れる登場人物に、映画自体が溺れかけているような、そんな感じがしないでもない。走るのが好きな少年が、津川雅彦演じる爺ちゃんの過去を知って奮起するというお話と、松原智恵子が演じるバアちゃんの夫婦愛の物語とが、根っこのところできちんと結び合わさってないので、エピソードを並べただけにしか見えなかった。

これは少年がただ走る映画にすれば良かったのに。走りが得意なのに、1位になれない主人公ながら、原作がしっかりとしているせいもあるのだろう、破たんのない丁寧な作りになっている。
空撮もそっち方面にたくさん効かせてくれたら、ずっと楽しかったと思いますね。彼に走り方の手ほどきをする謎の少年、実はという構成なのに消化不良になっていた。
それから、謎の少年が宝探しをしようといい、老夫婦ゆかりの柚子の木の根元を掘る。すべてがかけがえのない記憶となってよみがえる。
ですが、その少年が始終ウジウジとしているところがいいので、そのためお姉さんや同級生少女のしっかりぶりが光っているのがいいですね。男はウジウジ生きてこそ良いという教訓なのであろう。

確かに芸歴55年の松原智恵子には“おめでとう”と言いたい。彼女のベテランの存在感が、往年の児童映画を思わせるような、華やいだ空気にさせるのだ。彼女の語りに頼るだけでは、なんとも弱すぎるのに、諸事情もあろうが、構成が半分に削れると思うのですがね。

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