パピとママ映画のblog

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エリカ38★★・5

2019年07月08日 | アクション映画ーア行

2018年9月に他界した樹木希林が生前、プライベートでも親交の深い浅田美代子のためにと、自ら初の企画を手がけた作品。実在の詐欺事件をモチーフに、浅田美代子が45年ぶりとなる主演を務め、実年齢を20歳以上も詐称し、巨額の投資詐欺に手を染めた女性の半生を描き、その複雑な内面に迫っていく。共演は樹木希林のほか、平岳大、木内みどり。監督は「ブルー・バタフライ」「健さん」の日比遊一。

あらすじ:水商売をしながらネットワークビジネスを手がける渡部聡子は、喫茶店で偶然知り合った女性・伊藤の紹介で、国境を超えたビジネスを展開している平澤という男性と出会う。平澤が手がける途上国支援事業の資金集めを手伝うようになった聡子は、そうして集めたお金を自分のために使い始める。やがて佐々木という裕福な男性と知り合い、彼のお金で手に入れた豪邸に母親を呼び寄せる聡子だったが…。

<感想>女の本性ってなんですか?本作自体が、まるで一個の女系犯罪ものであることが凄い。2年前に実際に起きた詐欺事件がベースの、“何が彼女をそうさせたか”が、被害者ふう加害者という中途半端な主人公像が、浅田美代子の及び腰の演技でさらに曖昧になり、ただ人騒がせな女を表面的になぞっているだけ。何だかそんな感じがした。

今までが、「釣りバカ日誌」シリーズの可愛い奥さん、みち子さんのイメージが頭から離れない。そんな彼女が今回演じたのが、女性詐欺師の物語。しかも、実際に起きた女性詐欺事件がモチーフになっている。

主人公の家庭環境や高校時代のエピソードも、生い立ちもフィクションですしね、何故ああいうこと(詐欺)を起こす人間になってしまったのかが分からない。父親のせいで抱えてしまった男性への想いとか、不信感とか。

もちろん父親は悪人ですよ。だからといって聡子が、悪いことをしてしまったことは間違いないないのだけれど。何故にそこに至ったかは、描かれていました。それが、取ってつけたように薄っぺらに映っていた。樹木希林さんの、ごひいきの引き出しからだしたような企画作品。

尽きぬ人間の欲望、それは主人公の聡子や、彼女を巧く取り込み利用する平澤育男に限ったことではない。この映画を観る私たちにも、少なからず欲望はあるだろう。お金、地位、名声、物質的に豊な生活。このどれにも興味を持たない人間を探す方が、実際は難しいことだと思う。

そして、平成の世にしっかりと、私たちの生活に根付いた“SNS”の登場によって、隣の芝生どころか、世界中の芝生が覗けて、さらには自らを世界にアピール出来る時代を迎えた。そうなると、ハマってはならない低次の沼に浸り続けることになってしまう。

欲望をコントロールできず、理性や自分の正義に背いた行動に走り、結果犯罪者になってしまったのが、この映画の主人公聡子なのである。

だが、その後に平澤の裏切りを知り、彼との関係を絶ち、旅先のタイで恋に落ちるのである。純粋な若い男に出逢い、恋に落ち、我を忘れて夢中になってしまう。この男は、エリカのお金のために、利用しているだけかもしれないのに。

聞けば本作中でも一徹な演技者の遺言として、その姿を刻む樹木希林が根本のアイデアをだしたというのだから。男も女も、実はいつ悪人に転じてしまうかなんて分からない。そういう要素を人間って誰でも持っているものだから。私に限って絶対無いと、思っている人間がいつしか陥っているという、風な感じに描かれていた。

樹木希林の期待に充分応えて熱演したであろう、浅田美代子とともに夫の内田裕也的な世界に、あたしたちはこんな風なのよと、返したもの。

せめて浅田美代子をもう少し綺麗に撮って欲しかった。そして、浅田美代子自身も、もう少し38歳を意識した“張りのある演技”をして欲しかったですね。

一つのフレームの中に、二つの情報を映り込ませることで、表裏のメタファーとなるスタンダードサイズを基本とした画面構成。また、暗部でゆらめくローソクの炎や、スローモーションを用いることで、登場人物の内面を映像に反映させているように見えた。

意図された画作りは、浅田美代子が演じるエリカという人物の不透明さを際立たせているようだった。女は誰でもが「エリカ」になり得る。私も、貴方も2018年の9月に、ひらひらと手を振って旅立った役者、樹木希林が企画し、朋友・浅田美代子に贈ったのがこの「エリカ38」であります。

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