パピとママ映画のblog

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プロミスト・ランド ★★★

2014年09月20日 | は行の映画
『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』のマット・デイモンとガス・ヴァン・サント監督が再び手を組んだ社会派ドラマ。新たなエネルギー源として注目を浴びるシェールガス革命を背景に、脚本と製作もこなすマット演じる大手エネルギー会社の社員が、ガス採掘権を買収すべく訪れた田舎町で住民との交流を通じ、自身の人生を見つめ直していく。共演には『お家(うち)をさがそう』のジョン・クラシンスキーや、オスカー女優のフランシス・マクドーマンドら実力派がそろう。
あらすじ:寂れた田舎町のマッキンリーを訪れた大手エネルギー会社の幹部候補スティーヴ(マット・デイモン)。そこには良質のシェールガスが埋蔵されており、不況に苦しむ農場主たちから安値で採掘権を買収する交渉のため同地に来たのだった。住民を簡単に説得できるともくろんでいたスティーヴだったが、思いも寄らぬ障壁が立ちはだかり……。

<感想>脚本兼主演のマット・デイモンとガス・ヴァン・サント監督が、三度目のタッグを組んだ社会派ドラマ。天然ガス事業に対する企業と、地元住民の意識の隔たりと、ガスの採掘権の交渉者の情熱と葛藤をリアルに描写している。

見ながら、何だか米国流の資本主義って本当に悪いのか、と思ってしまった。それにしては、悪いと言う描き方が、昔から殆ど深化してないように感じられた。それが不思議でならない。
シェールガス開発をめぐるお話だが、開発のマイナス点は深く描かれず、開発、掘削会社の資本主義的な欺瞞のみが描かれる。それなら何十年も前から描かれてきた資本主義悪玉説から、一歩も進んでいないのではないか。

ちょっとズルしているなぁ、という印象は残る。シェールガスの採掘をめぐる重々しい環境時事問題を扱っているにしては、筋の動かし方がお伽噺的になっているようだ。
出世街道を走り順風満帆だったスティーヴ。田舎街へ入る直前に、わざわざポンコツ車とネルシャツに着替えて、住民に親近感のアピールを図るエネルギー会社の社員。それでいて、タグを切らないまま着てしまううかつさが、傲慢にして憎みきれない人柄を強く刻みつけている。
特別な説明もないのに、彼らがどんな人間で、これからどんなことが起きようとしているのか、自然と把握できるのだ。脚本家としてもマット・デイモンがやっぱり上手い。実際の交渉員と接したことがなくても、違和感を覚えさせない説得力の演技に感心した。

最終的には田舎が吸い取るという映画で、その意味ではやはりⅠ本のプロットが走っている。主人公の心の中で、おカネと力の価値観がぐらつき、虚偽から誠実さと自己尊厳、グローバルからローカリティの獲得、といった運動が起こるのだ。

で、その運動は、綺麗に、説得力をもって描かれているだろうか?・・・スティーヴの脱落には十分なドライヴがあるだろうか。しかし、田舎にやってきて、スティーヴたちの邪魔をする環境活動家のダスティンが、まさか自分の会社からの派遣とは、一生懸命に会社のためにと、地域の暮らしを良くしようと考えてのことなのに、会社からの命令で反対運動をするとはどういう料簡なのか。

だから、自分も田舎生まれの育ちで、農業をやっていてダメにしてしまい手放した苦い経験があるだけに、目の前に大金をちらつかせても、昔から住んでいる土地は手放すことはできないのだ。
それと、住民との対話集会で、スティーヴが劣勢に立った瞬間に、さりげなく背後に見える星条旗も悪くない。まずは、ハル・ホルブルック演じる、超エリートのスーパー老人、マサチューセッツ工科大を卒業し、その知見と弁舌と人情をもって、グローバルの倫理をぐらつかせるのだ。

もう一人は美人なのに人懐っこくて、清純なのに胸のボタンが一つ外れている小学校教師のアリス。「カンパニー・メン」で、ベン・アフレックの奥さん役を演じていた、ローズマリー・デウィット。本当に美しくてこんな田舎の教師にはもったいないと思った。ラストでスティーヴをローカルな生へと招くところが出来すぎのような気もしたが、二人の恋愛もほんわかでいいのだ。
特に、鳥のさえずりと、庭の緑色と、白い柵と、午後の光を浴びた子供たちのソフトボールに、小さな女の子が売る25セントのレモネードが、甘酸っぱい郷愁を誘っていていい。
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