パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞のレビューを中心に、DVD、WOWOWの映画の感想などネタバレ有りで記録しています。

希望の国   ★★★★

2013年01月21日 | か行の映画
「恋の罪」「ヒミズ」の園子温監督が、大地震で離れ離れになりながらも、それぞれの愛を貫く3組の男女の姿をオリジナル脚本で描く。酪農家の小野泰彦は、妻や息子夫婦と平和でつつましい日々を送っていた。一方、隣家の息子は家業を手伝わずに恋人と遊んでばかり。そんなある日、大地震が発生し一帯の住民は避難を強いられるが、泰彦らは長く住み着いた家を離れることができない。そんな中、息子の妻いずみが妊娠していることが発覚する。主人公・泰彦を夏八木勲が演じ、その妻役に大谷直子。息子夫婦を村上淳と神楽坂恵、隣家の息子とその恋人を清水優、梶原ひかりが演じる。(作品資料より)

<感想>今年で東北大震災から、早いもので2年目に入る年。この映画だけは観ておかなくては、と思いながらも東北では上映されないのかと諦めかけていた。それがやっと1月19日からミニシアターで上映され、本当に嬉しく思いました。一番目に観ての感想は、やっぱり原子力発電所のことですよね。

この映画では一昨年の震災の話ではなく、架空の長島県を舞台に、もう一度原発事故が起きたという設定に驚かされた。これは近い未来に再び大地震と津波で原発事故が起きたという設定のもと、放射能に怯える家族を描く劇映画です。
地震と津波の被災地が出てくるシーンは、3.11の被災地で撮影されているのだが、津波で根こそぎ持って行かれた家屋、そのまま廃墟と化して残されている家など、商店街も地震の被害がひどく、でも放射能汚染区域ということで、人間たちは避難せざるを得なかったのだ。このシーンでは、実に淡々とことが運んでいく様子が描かれ、2,3日で帰れると軽く考えてバスに乗る住民たち。

20キロメートル圏内の内と外を分ける立ち入り禁止の立札を境に、一方は誰もいないゴーストタウン。もう一方には、すぐそこにゲームセンターやスーパーがある。
黄色いテープと立札を立てて立ち入り禁止に、庭先に杭が打たれ、自宅の半分が避難指示区域になるという設定が映画的だが、実際に本当の話なのだ。父親の夏八木さんが、認知症の妻と強制避難区域ギリギリの自宅で留まることを決意し、息子と嫁に遠くに避難することを強く迫る。避難先で妻が妊娠、その喜びもつかのま、放射能被ばくの恐怖におののく妻。家の中でも街中でも防護服に身を包み、お腹の我が子を被ばくから守る姿は、私たちには滑稽には見えない。わが身に降りかかれば、切実にそう思うから。
放射能汚染区域からいくらか遠のいているとはいえ、そんな妻の大げさな姿にあざ笑う人々。人間は、のど元過ぎると、年月が経つと忘れるという傾向があるが、そうではないのだ。この原発の放射能被ばくは、長い間人体に影響があり、疎かにしてはならない。

そして物語のテーマである「父と子」。息子は本当は父親とは離れたくないと抱きつき、愛していることを何度も言う。その挙句、彼は妻と車で脱出するのだが、愛があるから大丈夫、と息子の妻が繰り返して言う。避難先の海岸で、息子は放射能探知機のガイガーが鳴るのを驚きの表情で見つめ、日本全国どこへ逃げても放射脳汚染から逃れられないと悟る。

残った父親は、牛舎の牛たちも処分しなければならず、苦渋の選択を強いられタオルを口に噛みしめ巻ながら、ライフル銃を構える。その後、庭で妻を抱きしめ、「愛している、死のうか、死のうと」、繰り返し言いながら、もうこの土地からは何処へもいけないことを悟った表情が見え、最後は二人で原発のないあの世へと旅立つのである。庭に植えてある夫婦のハナミズキの木が赤々と炎に燃え上がる映像は、人間の一生を表しているような錯覚にとらわれた。
「これからの日本人は一歩、一歩って歩くんだよ」という、地震の荒れ地に出てきた二人の子供がつぶやく言葉に感動しました。これはきっと津波で流された人の幽霊なのかも。

2年前とはいえ、まだまだ忘れる事の出来ない大惨事。いえ、忘れられては困るのだ。まだ、福島の原子力発電所の水素爆発した原子炉とか、その他諸々、避難区域の住民たちの今後のこと、認知症の智恵子が口癖のように言う言葉「帰ろうよ」
いつ自分の家へ帰ることが出来るのだろうか?・・・政府は今後の日本各地にある原子力発電所のことをどう考えているのか。日本の、日本人の、この国が抱えている鈍感さや無気力さなど、政治が何とかしなければ誰がする。まだまだ何も解決はしていないのだ。
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