パピとママ映画のblog

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MUD マッド ★★★★

2014年04月23日 | アクション映画ーマ行
『テイク・シェルター』で脚光を浴びたジェフ・ニコルズと、『マジック・マイク』などの演技派俳優マシュー・マコノヒーが手を組んだ青春ドラマ。親友同士の少年二人が、島に潜む一風変わった男との出会いを通して成長する姿を描き出す。『ツリー・オブ・ライフ』のタイ・シェリダンやベテランのマイケル・シャノン、オスカー女優のリース・ウィザースプーンらが共演。友情やさまざまな愛の形を盛り込んだ物語が心に染みる。
あらすじ:14歳のエリス(タイ・シェリダン)はアメリカ南部、アーカンソー州の川辺のボートハウスで両親と暮らしている。彼はある日、親友ネックボーン(ジェイコブ・ロフランド)と出掛けたミシシッピ川の島でマッド(マシュー・マコノヒー)という男性と出会う。エリスは世間から隠れて暮らす彼に興味を抱くが、ネックボーンはマッドのことを快く思っていなかった。

<感想>舞台となるミシシッピ川周辺のどこかくたびれた風景、もはや田舎というのも生ぬるいほどのド田舎である。親父は川魚を獲っては3枚におろして売って歩く。息子のエリスは、父親のトラックの荷台に乗って魚売りの手伝いをする。母親はそんな暮らしに我慢ができず、両親の仲は完全に冷え切っていた。彼ら主人公の、エリスとネックボーンは14歳。学校へは行ってないのだろうか。子供と大人の境界線に置かれた現状に戸惑いつつも、繰り返される毎日の中でアイデンティティを見出そうともがいている。

2人の少年が小舟でミシシッピ川に浮かぶ小さな島に向かう。そこで発見した木の上に引っかかった立派なボート。たぶん洪水のせいだという。上がってみればボートは泥にまみれていたが、少年たちの秘密基地には十分だった。
だが、どうやらすでに住んでいる者がいるらしい。嫌な予感がするので帰ろうと思ったら、そんな2人の前に不思議な男が現れる。
その男は、髪はボサボサで歯は汚れており、どうにもヨレヨレの汚い身なりした男は、マッドと名乗る。聞けば惚れた女がいたと言う。その女を酷い目に遭わせた男を射殺してしまった。警察やら殺した男の兄貴から追われて、この島から出られないというのだ。

人目を避け、川の小島に身を隠す彼の目的は、愛する女性ジュニパー(リース・ウィザースプーン)との再会。あわよくば、2人で誰も知らない土地へ逃げるというのが計画である。自らも上級生の女の子に一方的に思いを寄せているエリスは、マッドの純愛に共感して手を貸すことになる。
その少年エリスが、無軌道男と死を賭けた秘密を共有しながら、少し大人になるという、良く練られた展開が素晴らしい。両親の不仲に胸を痛め、大人たちの汚れた心をさげすむ中で、危険を顧みず恋した女を救いにきたマッドに共感し、食べ物差し入れや、女に伝言を届けたり、樹の上のボートを直す手助けをする。

男の子をくすぐる洪水がもたらした木の上のボートという設定が素晴らしいと思った。逃亡者と、いい顔をした田舎町の純朴な少年たちを抑制した演出で描いているのも悪くはないが、マコノヒーという異物の投入が本作を特別なものにさせてくれる。
白い歯と完璧に引き締まった肉体を駆使し、本作では薄汚いホームレスといった強烈にアクの強いキャラを演じているマシュー・マコノヒー。自信に満ちた振る舞いをする一方で、まじないや護符を信じる敬虔さも覗かせる。かと思えば、拳銃を持ちどことなく危険な香りも漂わす。マッドと名乗るその男の登場からストーリーはにわかに加速し始めていく。

未練を断ち切れない男と女のドラマをさりげなく支え、その世界観に感心した。大人たちのそんな未練に、少年の好奇心と冒険心が介入してドラマは思いがけない方向へと進んでいくのだが、風景とメロドラマの密着度は、同じマコノヒーの「ペーパーボーイ 真夏の引力」に匹敵するようだ。
ストイックに見せかけて女に弱く、傷つきやすい繊細な性格を演じて見せる彼は、本作の少年たちがそのまま大人になったような存在だが、少年たちは彼のようにはならないことが、観客には分かってしまうだけにより痛々しい。
エリス少年が、小島で毒ヘビに咬まれて、マッドが彼を抱き抱えて、小舟に乗り街の病院まで連れて行く早業に感心。一刻を争うことなので、この敏速な処置のシーンに絶対にエリスは助かると思った。このことで、街のモーテルに潜んでいた彼女に張り付いていた、殺された男の兄貴と殺し屋がマッドを狙う。

それに、70年代のある種のアメリカ映画みたいなごっつさがいい。ジョー・ドン・ベイカーとサム・シェパードというその時代に若者だった男たちの、年の取り方もいい感じだ。老いたこの二人の潜在的な敵対関係は隠し味なのだろう。特に元CIAの殺し屋だというサム・シェパードの役回りも良かったし、親友ネックボーンの叔父役のマイケル・シャノンが、川に潜って貝を獲り甥っ子の面倒を見ているのだが、いい人には違いないのだろうが何を考えているのか判らない不思議さがいい。

ラスト、両親の離婚で街っ子のなった少年が、自分が関与した事件や失恋などを引きずっていないのも、少年一家が暮らす取り壊される川沿いの家屋。濁った川や、息苦しい風景から解放されたからなのかもしれませんね。
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