「テイク・シェルター」のマイケル・シャノンが“アイスマン”と呼ばれた実在の殺し屋リチャード・ククリンスキーを演じる衝撃のクライム・ドラマ。周囲には良き家庭人として知られる一方、約20年間で100人以上といわれる殺人に関わった冷酷無比な男の恐るべき二重生活の実態とその心の闇を描き出す。共演はウィノナ・ライダー、ジェームズ・フランコ、レイ・リオッタ、クリス・エヴァンス。監督はこれが長編3作目のアリエル・ヴロメン。
あらすじ:1964年。美しい女性デボラを射止め、子宝にも恵まれたリチャード・ククリンスキー。平穏な日々を送っていた彼だったが、ひょんなことからその度胸を見込まれ、ギャングのロイから殺しの依頼を請け負うようになる。1970年代半ば。殺し屋家業も板に付き、すっかり羽振りも良くなったククリンスキー。妻には為替ディーラーと偽り、家庭では相変わらず良き夫にして、良き父親としての顔を保っていた。そんな中、ロイとの契約関係が破綻し、仕事にあぶれたククリンスキーは、ミスター・フリージーというフリーの殺し屋に近づき、仕事を斡旋してもらうようになるのだったが…。
<感想>実在した暗殺者の凶行を描いた実力サスペンス。なんかアメリカ映画らしい映画が登場したと思った。「殺人」が転職である実在した殺人マシーン、リチャード・ククリンスキー。しかもその職能を生かせる場所は多くなく、失業の危機はもう大変なのだ。更にゴルゴ13と違って家族を強烈に愛しているから、人間としては謎が深まります。
演じるマイケル・シャノンの不気味な怪演に殆ど見惚れてしまった。まずは、水で完敗と言って、ウィノナ・ライダーに不吉だと言われる冒頭部の奇妙な静けさがいい。リチャード・ククリンスキーのキャラクターが、病的とか異常というふうでなく、ごく普通に見える所がこの作品のキモなのかもしれません。とにかく、シャノンの平静さが怖いのだ。冷酷このうえない殺し屋でありながら、家族に対しては完璧に善良な夫であり父親であっただけでなく、神を信じていないのに、娘をカトリック系の私立学校に入れるという矛盾だらけの主人公なのだ。
加えて映画にかかわる主役級の俳優さんたちが脇を固めている。大物マフィアのロイ役のレイ・リオッタが演じ、ククリンスキーに目を付けて、目の前で街の浮浪者の老人を殺せと命じる。これが凄いんですよ。
それに、ジェームズ・ブランコの殺され方の悲惨なんです。彼が殺される前に「オー・ゴット」と言ったがために、「神を信じるなら祈りで俺を止めて見ろ」このシーンは強烈な不快感が残りました。
かくして、水を得た魚のように銃殺に、刺殺、絞殺と臨機応変に殺しまくるククリンスキー。殺せば殺すほど儲かるので、愛する妻には自分の仕事は証券ブローカーだと嘘をついて、立派な家も購入した。
しかし、殺し屋稼業も仕事が無くなり、廃業寸前のところにエヴァンス演じるミスター・フリージーに遭遇し、タッグを組むことになる。彼のシアン化合物を用いて毒殺。死体を冷凍保存した後に遺棄、殺害時期を判別不能にするという技術も学ぶのだが、エヴァンスが殺され、シアン化合物を仕入れる闇取引の男と出会うのだが、その男がまさか潜入捜査官だったとは。
ですが、あえて矛盾だらけのままに描き、派手に作ろうと思えばいくらでも派手にできる題材を、極めて地道にかつ丁寧に映画化していると思う。途中から登場するクリス・エヴァンス演じるアイスクリームの行商人も、シャノンに負けないほど怪演しているのだ。あの、「キャプテン・アメリカ」を演じたエヴァンスがですよ、汚い長髪にヒゲ、垂れたサングラスをかけての、筋肉ムキムキぶりに驚きです。
シャノンとエヴァンスが乗るアイスクリームのバンの不気味な存在感(まさか、シャノンが目撃者の少女を逃がしてしまったのを、エヴァンスが見つけて殺し、冷凍保存している)とか、ラストに登場するネコとかの面白い細部もあり、ノワール感たっぷりの画面が昼間のシーンも含めて中々いい出来であります。
私にとって、マイケル・シャノンは、この1作で忘れられぬ俳優となりました。
2014年劇場鑑賞作品・・・23 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
あらすじ:1964年。美しい女性デボラを射止め、子宝にも恵まれたリチャード・ククリンスキー。平穏な日々を送っていた彼だったが、ひょんなことからその度胸を見込まれ、ギャングのロイから殺しの依頼を請け負うようになる。1970年代半ば。殺し屋家業も板に付き、すっかり羽振りも良くなったククリンスキー。妻には為替ディーラーと偽り、家庭では相変わらず良き夫にして、良き父親としての顔を保っていた。そんな中、ロイとの契約関係が破綻し、仕事にあぶれたククリンスキーは、ミスター・フリージーというフリーの殺し屋に近づき、仕事を斡旋してもらうようになるのだったが…。
<感想>実在した暗殺者の凶行を描いた実力サスペンス。なんかアメリカ映画らしい映画が登場したと思った。「殺人」が転職である実在した殺人マシーン、リチャード・ククリンスキー。しかもその職能を生かせる場所は多くなく、失業の危機はもう大変なのだ。更にゴルゴ13と違って家族を強烈に愛しているから、人間としては謎が深まります。
演じるマイケル・シャノンの不気味な怪演に殆ど見惚れてしまった。まずは、水で完敗と言って、ウィノナ・ライダーに不吉だと言われる冒頭部の奇妙な静けさがいい。リチャード・ククリンスキーのキャラクターが、病的とか異常というふうでなく、ごく普通に見える所がこの作品のキモなのかもしれません。とにかく、シャノンの平静さが怖いのだ。冷酷このうえない殺し屋でありながら、家族に対しては完璧に善良な夫であり父親であっただけでなく、神を信じていないのに、娘をカトリック系の私立学校に入れるという矛盾だらけの主人公なのだ。
加えて映画にかかわる主役級の俳優さんたちが脇を固めている。大物マフィアのロイ役のレイ・リオッタが演じ、ククリンスキーに目を付けて、目の前で街の浮浪者の老人を殺せと命じる。これが凄いんですよ。
それに、ジェームズ・ブランコの殺され方の悲惨なんです。彼が殺される前に「オー・ゴット」と言ったがために、「神を信じるなら祈りで俺を止めて見ろ」このシーンは強烈な不快感が残りました。
かくして、水を得た魚のように銃殺に、刺殺、絞殺と臨機応変に殺しまくるククリンスキー。殺せば殺すほど儲かるので、愛する妻には自分の仕事は証券ブローカーだと嘘をついて、立派な家も購入した。
しかし、殺し屋稼業も仕事が無くなり、廃業寸前のところにエヴァンス演じるミスター・フリージーに遭遇し、タッグを組むことになる。彼のシアン化合物を用いて毒殺。死体を冷凍保存した後に遺棄、殺害時期を判別不能にするという技術も学ぶのだが、エヴァンスが殺され、シアン化合物を仕入れる闇取引の男と出会うのだが、その男がまさか潜入捜査官だったとは。
ですが、あえて矛盾だらけのままに描き、派手に作ろうと思えばいくらでも派手にできる題材を、極めて地道にかつ丁寧に映画化していると思う。途中から登場するクリス・エヴァンス演じるアイスクリームの行商人も、シャノンに負けないほど怪演しているのだ。あの、「キャプテン・アメリカ」を演じたエヴァンスがですよ、汚い長髪にヒゲ、垂れたサングラスをかけての、筋肉ムキムキぶりに驚きです。
シャノンとエヴァンスが乗るアイスクリームのバンの不気味な存在感(まさか、シャノンが目撃者の少女を逃がしてしまったのを、エヴァンスが見つけて殺し、冷凍保存している)とか、ラストに登場するネコとかの面白い細部もあり、ノワール感たっぷりの画面が昼間のシーンも含めて中々いい出来であります。
私にとって、マイケル・シャノンは、この1作で忘れられぬ俳優となりました。
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