レバノン出身の劇作家ワジディ・ムアワッドの戯曲「戦火」を、「渦」のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が映画化。民族や宗派間の抗争、社会と人間の不寛容がもたらす血塗られた歴史を背景に、その理不尽な暴力の渦中にのみ込まれていったヒロインの魂の旅を描く。出演は「パラダイス・ナウ」のルブナ・アザバル、「みなさん、さようなら」のレミー・ジラール。

あらすじ:初老の中東系カナダ人女性ナワル・マルワン(ルブナ・アザバル)は、ずっと世間に背を向けるようにして生き、実の子である双子の姉弟ジャンヌ(メリッサ・デゾルモー=プーラン)とシモン(マキシム・ゴーデット)にも心を開くことがなかった。そんなどこか普通とは違う母親は、謎めいた遺言と二通の手紙を残してこの世を去った。
その二通の手紙は、ジャンヌとシモンが存在すら知らされていなかった兄と父親に宛てられていた。遺言に導かれ、初めて母の祖国の地を踏んだ姉弟は、母の数奇な人生と家族の宿命を探り当てていくのだった……。(作品資料より)

<感想>何と言うタイトルなのだろう。つい身構えたくなるが、作品の中身を知ると納得のタイトルなのだ。それほど心の奥底にずっしりと重くのしかかって来る、ギリシャ悲劇ふうの運命劇である。
冒頭で初老の中東系カナダ人女性が亡くなる。双子の姉弟に残されたのは、謎めいた遺言と、なぜか父親と兄に宛てた2通の手紙。葬式も柩もいらない、穴を掘って背中を向けて埋め、墓碑もいらないという、母の遺言に戸惑う双子。
やがて2人は母親の母国である、中東の某国に飛行機で飛び、母親の人生の足跡を辿る旅に出る。
姉のジャンヌは父親を、もう一人のシモンは兄を探して、謎を解明して行く内に明らかになる驚愕の事実。40年前の母親が若い頃に体験した、実際のところ想像を絶する事実の連続で、見ている側が、中東の過酷な現実に身をさらしているような気分に陥る。
何しろ母親が難民の子供を身ごもり、彼氏はすぐに銃殺される。親戚や両親の反対を押し切り不義の子を出産するも、その赤ん坊のかかとの部分に黒く3つの点を刻印する。その子供を祖母に託して、その息子は孤児院へ送られたと言う。
その後母親は、都会の叔父の家へ身を寄せた後、大学に通うも内戦が始まり故郷で産んだ息子の行方を追う。実家のある南部はすでに占拠され、孤児院の子供たちは軍に連れ去られたというのだ。

命からがらそこから逃れた母親は、軍の反政府ゲリラに入ってしまう。そして極右政府の議長の家に、家庭教師として入り込み議長を暗殺する。テロリストとなってしまった母のナウルは政治犯として捕まって投獄される。
この時、何故テロリストの言うことを聞き、殺人を犯したのか私には理解できない。高等教育を受けて世の中のことを知っていたのに。この殺人が、母親の運命を狂わせてしまったのだろう。
その刑務所での拷問やレイプなど、妊娠に繋がる性的暴行を受けるのだから、この世の地獄と言ってよいだろう。15年間の投獄生活、その逆境から逃れようと歌を歌う女として有名になる。
レイプ拷問で妊娠した彼女は、お腹の子供を流産させようと、ドアにお腹をぶつけたりするも臨月迎えて双子を出産することに。その赤ん坊は、川に捨てられるところを、取り上げた助産婦に引き取られ、母親も何故か釈放され赤ん坊も彼女が引き取ることになる。そして双子を連れてカナダに渡った。

そんな母親の過去を追う姉と、弟が最後に辿り着いた残酷な真実とは?・・・彼らの父親とは、兄とはいったい誰なのか?・・・。もうお分かりであろう。つまり母親が受けたレイプは、近親相姦であって、それもカナダに来てから老婆になってプールで何気なく見た男のかかとの黒い3つの刻印。そしてその男を見上げて母親のショックは極限に陥る。
信じられなかったのでしょう。父親と兄が同一人物とは知る由もなく、こういうケースは現在のアフリカでも、実際父親が娘をレイプして子供を身ごもらせている事実が明らかにされている。この場合は、産まれて来た子供は何らかの合併症があり、自閉症とか心臓疾患とか近親者との関係で産まれて来た子供は、普通の子供とは違うと思う。
だからと言って、真実を知ってどうなることでもなく、この姉弟にとっては残酷な告知であろう。姉弟が健常者で育った事が救いとも言えるのだが、本当のことを知って苦しむよりも、知らないでいた方が良かったのかもしれない。
この母親は、自分の祖国と若い頃に体験した内戦を知ってほしかったのと、どうしても姉弟の父親と兄を、探してもらいたかっただけなのかもしれませんね。
こういう状況に母親を追い込んだ時代の、政治に対する憤と憎しみと、そして生涯の苦悩を背負わせてしまった自分の子供たちへの真実の物語、母の無償の愛も伝わって来るのも残酷で悲しみを誘う。
2012年劇場公開鑑賞・・・7 a href="http://blog.with2.net/link.php?1426107:1122" title="映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキングへ">
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あらすじ:初老の中東系カナダ人女性ナワル・マルワン(ルブナ・アザバル)は、ずっと世間に背を向けるようにして生き、実の子である双子の姉弟ジャンヌ(メリッサ・デゾルモー=プーラン)とシモン(マキシム・ゴーデット)にも心を開くことがなかった。そんなどこか普通とは違う母親は、謎めいた遺言と二通の手紙を残してこの世を去った。
その二通の手紙は、ジャンヌとシモンが存在すら知らされていなかった兄と父親に宛てられていた。遺言に導かれ、初めて母の祖国の地を踏んだ姉弟は、母の数奇な人生と家族の宿命を探り当てていくのだった……。(作品資料より)

<感想>何と言うタイトルなのだろう。つい身構えたくなるが、作品の中身を知ると納得のタイトルなのだ。それほど心の奥底にずっしりと重くのしかかって来る、ギリシャ悲劇ふうの運命劇である。
冒頭で初老の中東系カナダ人女性が亡くなる。双子の姉弟に残されたのは、謎めいた遺言と、なぜか父親と兄に宛てた2通の手紙。葬式も柩もいらない、穴を掘って背中を向けて埋め、墓碑もいらないという、母の遺言に戸惑う双子。
やがて2人は母親の母国である、中東の某国に飛行機で飛び、母親の人生の足跡を辿る旅に出る。
姉のジャンヌは父親を、もう一人のシモンは兄を探して、謎を解明して行く内に明らかになる驚愕の事実。40年前の母親が若い頃に体験した、実際のところ想像を絶する事実の連続で、見ている側が、中東の過酷な現実に身をさらしているような気分に陥る。
何しろ母親が難民の子供を身ごもり、彼氏はすぐに銃殺される。親戚や両親の反対を押し切り不義の子を出産するも、その赤ん坊のかかとの部分に黒く3つの点を刻印する。その子供を祖母に託して、その息子は孤児院へ送られたと言う。
その後母親は、都会の叔父の家へ身を寄せた後、大学に通うも内戦が始まり故郷で産んだ息子の行方を追う。実家のある南部はすでに占拠され、孤児院の子供たちは軍に連れ去られたというのだ。

命からがらそこから逃れた母親は、軍の反政府ゲリラに入ってしまう。そして極右政府の議長の家に、家庭教師として入り込み議長を暗殺する。テロリストとなってしまった母のナウルは政治犯として捕まって投獄される。
この時、何故テロリストの言うことを聞き、殺人を犯したのか私には理解できない。高等教育を受けて世の中のことを知っていたのに。この殺人が、母親の運命を狂わせてしまったのだろう。
その刑務所での拷問やレイプなど、妊娠に繋がる性的暴行を受けるのだから、この世の地獄と言ってよいだろう。15年間の投獄生活、その逆境から逃れようと歌を歌う女として有名になる。
レイプ拷問で妊娠した彼女は、お腹の子供を流産させようと、ドアにお腹をぶつけたりするも臨月迎えて双子を出産することに。その赤ん坊は、川に捨てられるところを、取り上げた助産婦に引き取られ、母親も何故か釈放され赤ん坊も彼女が引き取ることになる。そして双子を連れてカナダに渡った。

そんな母親の過去を追う姉と、弟が最後に辿り着いた残酷な真実とは?・・・彼らの父親とは、兄とはいったい誰なのか?・・・。もうお分かりであろう。つまり母親が受けたレイプは、近親相姦であって、それもカナダに来てから老婆になってプールで何気なく見た男のかかとの黒い3つの刻印。そしてその男を見上げて母親のショックは極限に陥る。
信じられなかったのでしょう。父親と兄が同一人物とは知る由もなく、こういうケースは現在のアフリカでも、実際父親が娘をレイプして子供を身ごもらせている事実が明らかにされている。この場合は、産まれて来た子供は何らかの合併症があり、自閉症とか心臓疾患とか近親者との関係で産まれて来た子供は、普通の子供とは違うと思う。
だからと言って、真実を知ってどうなることでもなく、この姉弟にとっては残酷な告知であろう。姉弟が健常者で育った事が救いとも言えるのだが、本当のことを知って苦しむよりも、知らないでいた方が良かったのかもしれない。
この母親は、自分の祖国と若い頃に体験した内戦を知ってほしかったのと、どうしても姉弟の父親と兄を、探してもらいたかっただけなのかもしれませんね。
こういう状況に母親を追い込んだ時代の、政治に対する憤と憎しみと、そして生涯の苦悩を背負わせてしまった自分の子供たちへの真実の物語、母の無償の愛も伝わって来るのも残酷で悲しみを誘う。
2012年劇場公開鑑賞・・・7 a href="http://blog.with2.net/link.php?1426107:1122" title="映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキングへ">
