パピとママ映画のblog

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五日物語-3つの王国と3人の女 ★★★★

2016年12月19日 | アクション映画ーア行
「ゴモラ」のマッテオ・ガローネ監督が17世紀初頭に書かれた世界最初のおとぎ話『ペンタメローネ 五日物語』を映画化した大人のファンタジー・ドラマ。3つの王国を舞台に、自らの欲望に絡め取られた女たちが辿る恐ろしくも奇想天外な物語の顛末を、幻想的な映像美で描き出す。出演はサルマ・ハエック、ヴァンサン・カッセル、トビー・ジョーンズ、ジョン・C・ライリー。
あらすじ:3つの国が君臨する世界。ロングトレリス国。不妊に悩む女王を心配した国王は“魔法使い”の助言に従い、自らの命と引き換えに海の怪物を仕留める。怪物の心臓を食した女王は、たった1日で男の子を出産するのだったが…。ストロングクリフ国。人目を避けて暮らす老婆の姉妹。好色な国王は偶然耳にした姉の歌声に心奪われ、若く美しい娘に違いないと思い込む。やがて不思議な力で若さと美貌を取り戻した姉は、王宮へと召されるが…。ハイヒルズ国。まだ見ぬ大人の世界に憧れを抱く王女。早く結婚したいと国王にせがむと、なんと醜い巨漢男に嫁ぐハメになってしまうのだったが…。

<感想>西洋のお伽噺がもつ怖さがたっぷりの物語です。大道芸人の見世物に始まり、イタリアに実在すると言われる、3つの古い王城へと不思議な事件が次々に展開していく。画家の出身だというマッテオ・ガローネ監督は、ロケ地の選択も怪物の造形も見事であり、3つの王国の物語が絡みあって展開され、残酷、背徳、恐怖、不条理、不思議、失笑、美醜といった、アレコレがぎっしりと詰め込まれた、まさに残酷絵図の仕上がりになっていた。

最初の話が、サルマ・ハエック扮する王妃が、不妊に悩み魔法使いの要れ知恵で、国王自らの命と引き換えに海の怪物を仕留めて、その怪物の心臓を調理場の処女の女に調理させて、王妃に食べさせれば妊娠するということなのだが。

王様は、王妃が子供を欲しがるので仕方なく海の中にいる怪物(真っ白いシーラカンスのような)を生け捕り、陸へ上がるとすぐに息絶えてしまう。王妃のサルマ・ハエックは、魔法使いの言葉を信じて妊娠するために、ガツガツと顔を血まみれにしてその怪物の心臓を食べるのだが、じつは調理の女は処女じゃなくて、腹ぼての妊娠していた女だったということ。
怪物の心臓を食べて1日で男の子を生み、喜ぶ王妃。しかし、調理場の女も男の子を生んでいた。それが王子とそっくりで、まるで双子のようで、大きくなると仲良く遊び、母の王妃が亡くなったら、王子はそのそっくりの召使の子供と一緒に国を治めようと誓う。母親の王妃は、王子とそっくりな召使の子供を見つけて、城の外へ旅に出るように命じる。だが、王子がその後を追いかけて、連れ戻そうとするも、召使の子供は崖の洞穴にいる怪物に襲われたりして、でも勇敢に戦って何とかそこから抜け出し、そこへ王子が助けに来てくれるという物語。

2番目が、皺だらけの老婆の姉妹が歌を歌っていると、その美声に聞きほれる王様。その王様には、ヴァンサン・カッセルが扮していて、どんな時代でも、どんな世界が舞台でも、破廉恥な役柄を完璧にこなすヴァンサン・カッセルのブレのなさに感服してしまった。

いつも愛人たちを侍らせては酒を飲んでいる。どんな女でも自分に従うというおバカな王様で、村の女の美声に惚れ込んで恋をする。

どうしても城へと、ベッドに連れ込もうとしたい王様は、あの手この手で通い詰めやっと闇夜に紛れて王様のベッドへと来るのだが、どうしても女の顔を見たくてローソクの明かりで照らすと、それが醜い老婆だったので、窓から森の中へと投げ落とすのだ。


落とされた老婆は、運よく木に引っ掛かり助かったのだが、そこへ魔法使いが現れて、老婆を若い美人に変身させてくれる。ある日森の中で、狩猟にでていた王様が、その美女を見つけて一目惚れをして、お城で結婚式をするので、老婆に招待状と素敵なドレスが届けられる。

城へ行ってみると、その美しい王女は、なんと自分の姉の婆さんではないか。驚いて自分も若い美人に生まれ変わりたいと願い、街の職人に宝石を上げるので自分の皺皺の婆を何とか若い肌に作り変えてくれと頼む。

それが、まるで血だらけで皮だけはがれた醜い女になっていたのだ。それに、お城の姉も、次第に化けの皮がはがれて皺皺の老婆に変わっていくという話。

3つ目が、王様と娘という国で、若い王女が結婚をしたいと願うも、王様は自分についていたノミを可愛がり、まるでペットのようにエサをあげて大きく育てて、ノミの寿命なのか死んでしまう。それで、そのノミの皮を剥いで壁に掛けて、その皮が何の皮なのか当てたら娘の婿として認めるというのだ。

たくさんの婿候補が来るも、誰も当てることが出来ない。そこへ来た汚い怪物のような男が、ノミの皮だと当ててしまう。王様は、約束だからと、娘をその怪物に嫁入りさせてしまう。なんてバカで横暴な父親なんだろう。その怪物から逃亡を試みる王女の話も面白かった。

たぶんかなり脚色されているのだろうが、お伽噺のフォーマットはやっぱり引きが強い。いずれも怪奇でホラー性が充分だけれども、女性としてはイマイチ気味が悪いし、そこまでして嫁に行かなくても。
観終わってみると、希望を託されているのは、みんな若者たちだったということで、怪物の造形を含めた美術、お城の周辺でのロケーションに魅力を感じつつ、撮影がクローネンバーグ作品で知られるピーター・サシツキーである。
VFX全開のヴィジュアルがこれでもかと繰り出される大作が、ファンタジーの主流となっている現在だからこその映画。

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