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直木賞作家・井上荒野の同名小説を「サード」「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」の東陽一監督が映画化したサスペンス・ドラマ。たまたま出会った美容師の青年に危険な妄執を抱いて常軌を逸していく孤独な専業主婦の心の奥底をスリリングに描き出していく。主演は「赤い月」「野のなななのか」の常盤貴子。共演に池松壮亮、佐津川愛美、勝村政信。
あらすじ:優しい夫と可愛い中学生の娘と3人暮らしの専業主婦、親海小夜子。念願だった一軒家にも引っ越すことができ、何不自由ない生活を送っていた。そんなある日、ふらりと入った初めての美容院で、山田海斗という美容師に髪をカットしてもらう。その日のうちに海斗からのお礼のメールが届くと、小夜子はその営業メールに律儀に返信してしまう。何気ないメールのやり取りのはずが、小夜子の中で何かが燃え上がる。日を置かず頻繁に店を訪れるようになり、海斗を指名する小夜子。そんな小夜子の行動に戸惑いを隠せない海斗だったが…。
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<感想>この映画を観て、今年の上半期はやたらと芸能人などの不倫バッシング報道が多かったのだが、不倫=悪といった観点で不倫する側を叩きつけている人がこれを見てどう思うのだろうか?・・・それをストレートにバッシングできるほど人の世は簡単に割り切れるものではない。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3b/22/dc6bff726a1e24246ee235d74267547b.jpg)
シュールで官能的な、どこかガランとした無自覚サスペンスでもある。監督のクールな感覚的演出には痺れてしまう。冬の寒空のした、一人でワインを飲む小夜子。彼女の姿は優雅だけれど、どこかおかしいのだ。それは静かにくるっている感じなのだが、そのことと同様に、常盤貴子の演じた小夜子には悪意が感じられなく、だからこそ純粋なる悪にも見えるのだ。
主人公の常盤貴子の感情を閉ざしたような演技も素晴らしく、彼女に付きまとわれる美容師の池松壮亮も、彼が小夜子のことを突き放さない演技にも心を打たれる。
ラストに流れる井上陽水の歌「最後のニュース」が、ヒロインも含めた現代人のカオスの暗示になっているのも見事で、観終わった後の方がゾクゾクする。
ヒロインの行動が現実なのか夢なのか、曖昧としたまま見せられていくので、より不思議な印象を与えるのだ。ストーカーだって近年に発生したものだし、これらを現代への批評としたいものだ。
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例えば、海斗の家へ向かう途中の踏切のシーンでも、前のシーンを引きずりながら急いで渡るのかと思っていたら、ゆっくりと歩いている。その時の違和感から、既にこのシーンが何かを意図しているのだと感じる。後で踏切が小夜子の現実の世界と、彼が存在する別の世界との境界線になっていることを表しているのだと知らされたときは驚きました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7b/40/cc2c03ace43a918655c113a9f771aa1e.jpg)
海斗と唯のカップルが、小夜子の存在に対してストレートに怒りきれず、むしろ戸惑っているのも面白い。「たまたま近くに来たので」という小夜子。異質なリズムが、みんなを徐々に狂わせていき、みんなが、何がしか崩れていく。
ゴスロリ・ファッションの店に勤める唯にしても、実はマザコンの気がある海斗にしても、どこかしらズレている。そもそも、みんなズレているのであって、だからこそ、心と心が軋み合いながら人生を連ねていくわけ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5f/0b/fd5fbb1ade1d975b6d8ca6e9e575bd51.jpg)
海斗が何故に小夜子を拒絶しないのか、それは男性の心理として、モテている分にはってことなのかもしれない。それとも彼自身の孤独ゆえに。
そして、夫の勝村政信の意味深な行為も、浮気をほのめかしているような、夫婦メールの場面が多い。
見方によっては見え方が違うことを提示しているのだ。ですから、確かに狂っているのに、静かに狂っているようにしか見えない。それ故に一見万事解決にも見える終幕へと、戦慄が走るのだ。
2016年劇場鑑賞作品・・・247
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あらすじ:優しい夫と可愛い中学生の娘と3人暮らしの専業主婦、親海小夜子。念願だった一軒家にも引っ越すことができ、何不自由ない生活を送っていた。そんなある日、ふらりと入った初めての美容院で、山田海斗という美容師に髪をカットしてもらう。その日のうちに海斗からのお礼のメールが届くと、小夜子はその営業メールに律儀に返信してしまう。何気ないメールのやり取りのはずが、小夜子の中で何かが燃え上がる。日を置かず頻繁に店を訪れるようになり、海斗を指名する小夜子。そんな小夜子の行動に戸惑いを隠せない海斗だったが…。
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<感想>この映画を観て、今年の上半期はやたらと芸能人などの不倫バッシング報道が多かったのだが、不倫=悪といった観点で不倫する側を叩きつけている人がこれを見てどう思うのだろうか?・・・それをストレートにバッシングできるほど人の世は簡単に割り切れるものではない。
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シュールで官能的な、どこかガランとした無自覚サスペンスでもある。監督のクールな感覚的演出には痺れてしまう。冬の寒空のした、一人でワインを飲む小夜子。彼女の姿は優雅だけれど、どこかおかしいのだ。それは静かにくるっている感じなのだが、そのことと同様に、常盤貴子の演じた小夜子には悪意が感じられなく、だからこそ純粋なる悪にも見えるのだ。
主人公の常盤貴子の感情を閉ざしたような演技も素晴らしく、彼女に付きまとわれる美容師の池松壮亮も、彼が小夜子のことを突き放さない演技にも心を打たれる。
ラストに流れる井上陽水の歌「最後のニュース」が、ヒロインも含めた現代人のカオスの暗示になっているのも見事で、観終わった後の方がゾクゾクする。
ヒロインの行動が現実なのか夢なのか、曖昧としたまま見せられていくので、より不思議な印象を与えるのだ。ストーカーだって近年に発生したものだし、これらを現代への批評としたいものだ。
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例えば、海斗の家へ向かう途中の踏切のシーンでも、前のシーンを引きずりながら急いで渡るのかと思っていたら、ゆっくりと歩いている。その時の違和感から、既にこのシーンが何かを意図しているのだと感じる。後で踏切が小夜子の現実の世界と、彼が存在する別の世界との境界線になっていることを表しているのだと知らされたときは驚きました。
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海斗と唯のカップルが、小夜子の存在に対してストレートに怒りきれず、むしろ戸惑っているのも面白い。「たまたま近くに来たので」という小夜子。異質なリズムが、みんなを徐々に狂わせていき、みんなが、何がしか崩れていく。
ゴスロリ・ファッションの店に勤める唯にしても、実はマザコンの気がある海斗にしても、どこかしらズレている。そもそも、みんなズレているのであって、だからこそ、心と心が軋み合いながら人生を連ねていくわけ。
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海斗が何故に小夜子を拒絶しないのか、それは男性の心理として、モテている分にはってことなのかもしれない。それとも彼自身の孤独ゆえに。
そして、夫の勝村政信の意味深な行為も、浮気をほのめかしているような、夫婦メールの場面が多い。
見方によっては見え方が違うことを提示しているのだ。ですから、確かに狂っているのに、静かに狂っているようにしか見えない。それ故に一見万事解決にも見える終幕へと、戦慄が走るのだ。
2016年劇場鑑賞作品・・・247
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