ジェームズ・ボンドの活躍を描く「007」シリーズ25作目。現役を退きジャマイカで穏やかな生活を送っていたボンドのもとに、CIA出身の旧友フィリックス・ライターが助けを求めにやってきたことから、平穏な日常は終わりを告げる。誘拐された科学者を救出するという任務に就いたボンドは、その過酷なミッションの中で、世界に脅威をもたらす最新技術を有した黒幕を追うことになるが……。
ダニエル・クレイグが5度目のボンドを演じ、前作「007 スペクター」から引き続きレア・セドゥー、ベン・ウィショー、ナオミ・ハリス、ロリー・キニア、レイフ・ファインズらが共演。新たに「ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密」のアナ・デ・アルマス、「キャプテン・マーベル」のラシャーナ・リンチらが出演し、「ボヘミアン・ラプソディ」のフレディ・マーキュリー役でアカデミー主演男優賞を受賞したラミ・マレックが悪役として登場する。監督は、「ビースト・オブ・ノー・ネーション」の日系アメリカ人キャリー・ジョージ・フクナガ。
<感想> ジェームズ・ボンドを15年に渡り演じてきたダニエル・クレイグ。彼の6代目、最後のボンド作品は多様性あふれるアクション・メロドラマになっており、5作目にして卒業を迎える。シリーズで唯一ボンドが結婚する過去作「女王陛下の007」を色濃く反映しており、恋人マドレーヌの陰惨な過去や、彼女がボンドと育む愛の形が描かれている。青い瞳の女の子、ボンドの瞳と同じであり、まさしく自分の子供を持つという、子孫を残すという、今までになかった物語になっていた。
冒頭にて「カジノ・ロワイヤル」で死んだ恋人ヴェスパーの墓参りシーン(「ユア・アイズ・オンリー」のオマージュ)を入れるなど、メロドラマの要素も強くいままでのボンド作品にはない家族愛という、珍しく多様性に富んでいる。 「スカイフォール」からのテーマ、スパイ諜報戦を手がけるMI6部門が時代遅れという議論は、同ジャンルの傑作「裏切りのサーカス」の原作で知られるル・カレのスマイリーものが出版された70年代から題材とされてきたが、本作ではそれをよりいっそうに進展させていたようだった。
ダニエルファンとして、今までのボンドのアクションは、オープニングでのオートバイによるアクションが一番すごくて、あとは尻つぼみ感が否めなかったのが残念でならない。撮影地でのノルウェー、洞窟住居で知られるイタリアの世界遺産マテーラ、ジャマイカ、そして勿論、本拠地ロンドンと、冒頭から元祖ロケーションムービーとしての魅力を発散していて、とても良かった。
悪役のラミ・マレックは正解だったと思う。真っ白い能面の姿も、顔のケロイドもイマイチ説明不足って感じであったが、殺人ウィルスを操る新たなる敵サフィンとの因縁も絡みあって、予想不可能な結末を迎えている。それと 用心棒の義眼の❝サイクロップス❞もイマイチ存在感なかったし、ナノマシンとか怖い細菌兵器も登場しており、今風な物語であり作品としては、これで良かったと思うしかない。
ボンドシリーズをダニエル・クレイグと共に楽しんだ15年間が、これで終わると思うと寂しくもある。世代やタイミング、そして好みの違いはあるだろうが、正直予想していなかった最後の作品だという、喪失感の中にいる。
それにましても、いつもの通りのボンドカーからの、ライトの機関銃射撃 。走行しながらライトに戻る芸の細かさが実にかっこよかったです。
まさかの❝無敵❞なボンドが、あっけなく逝ってしまったのは、哀しいかな違和感を覚えましたが、 エンドクレジットで「Jemes Bond Will Return」とあったので、次回の、新ボンドシリーズでは、若いイギリス俳優の中から選ばれると思うし、 それでもダニエルボンドが、以外にも15年間という長きにわたり、充実感溢れる作品になっており、そう思うと本当に長い間お疲れ様でした。
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