パピとママ映画のblog

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トールキン 旅のはじまり★★★・5

2019年10月07日 | アクション映画ータ行

「トム・オブ・フィンランド」のドメ・カルコスキ監督が『ホビットの冒険』『指輪物語』の作者J・R・R・トールキンの若き日の物語を映画化した伝記ドラマ。両親の死や戦争など過酷な運命の中でかけがえのない出会いを重ねて成長していくトールキンの愛と友情の前半生に焦点を当て、偉大な作家の創作の原点に迫っていく。主演は「マッドマックス 怒りのデス・ロード」「X-MEN:ダーク・フェニックス」のニコラス・ホルト。共演にリリー・コリンズ、コルム・ミーニイ。

あらすじ:幼い頃に父を亡くし、母と弟と英国の田園地域で暮らしていたトールキン。しかしその母も彼が12歳の時に他界してしまう。孤児となってしまったトールキンだったが、母の友人のモーガン神父が後見人となり、高校では名門キング・エドワード校に通うことに。そしてそこで、ロバート・ギルソン、ジェフリー・スミス、クリストファー・ワイズマンという3人の仲間と出会い、かけがえのない友情を育んでいく。そんな中、同じ家に下宿している3つ年上の女性エディス・ブラットと恋に落ちるトールキンだったが…。

<感想>世界のだれもが知る『ホビットの冒険』『指輪物語』。その作者であるJ・R・R・トールキンの若き日の物語。天才小説家の知られざる半生は、生涯の仲間との強い絆、そして運命の女性との恋など、小説以上に壮大な物語が秘められていた。

あの壮大な冒険物語は、愛と友情、そして、勇気から生まれた。偉大な創造を成し遂げた人間の実人生は、得てして平凡で地味なものだが、このトールキンの若き日を描いた伝記映画は、そこで妙な無理をせず、平凡に見えるものの中に、非凡な細部を見つけていくような語り口で全体を描き切っていた。

伝記映画は数多いが、本作は「ホビットの冒険」「指輪物語」で知られるトールキンの幼少から青年期までを描いたもの。なにせ、エルフ語まで発明したファンタジー作家ゆえに、その半生が興味深くないわけがない。だからして、この映画がユニークなのはその知られざる生涯を追うだけではなく、トールキンの果てしない想像力の源泉は何処から生まれたのか、その神秘に焦点が当てている点でもある。

12歳で孤児となり、空想の世界に籠ることが多かったこと、下宿先における後の、妻となる利発な女性との出会いが、エルフの王女の創造に繋がったこと、これぞ純愛です。エディスを演じたリリー・コリンズが魅力的なだけに、トールキンとの運命的な出会いで惹かれ合うのだが、しかし、彼の大学進学を機に忘れられることを予感して、別の男性と婚約してしまう。同じく孤児のエディスとの関係に、もう少し光を注いで欲しかった気がしましたね。

また強い絆を結んだ学友たちとの出会いが、彼の作品の核にある何物にも侵されないフェローシップのひな形になったことなどが語られていた。

第一次世界大戦下、親友を探して彷徨う主人公トールキンの姿から始まる物語は、おのずと「指輪物語」を想起させるのだ。そんな中で、一つの重しというか、目玉となるのが第一次大戦の塹壕戦の体験であり、戦場の凄惨な光景とトールキンの創造した神話の世界とが、同じ力で入り混じり、一つに重なり合うのだった。

特に彼が体験した戦場における凄惨な光景が、のちに身の毛もよだつクリーチャーたちの創造源となっていくさまを、映像的な解釈で表現したのは独創的でした。病弱であり、戦場で肺結核になり血を吐きながら、兵士の死体のある塹壕の中で生き延びる朦朧とした姿が焼き付く。生死を彷徨う彼を支えたのは、エディスへの一途な想いと、その天才的なイマージネーションの力だったのです。

さらには、本作を牽引するのが、青年時代のトールキンに扮するニコラス・ホルトの素顔に光を当てた構成にも、魅力である。これまで、七変化の怪優的な路線を目指しているような印象があったのだが、サリンジャーに続く作家役の今回は、真っ直ぐで紳士的で、特異な才能に満ちた愛すべき好青年の魅力を引き出し、観る者誰もをトールキン好きにさせずにはおかないだろう。

バロウ書店をはじめとし、舞台美術も重厚であり、純粋に、映画的説得力に満ちた作品になってました。「事実は小説より奇なり」とは良く言ったものだが、トールキンの生み出した心躍る冒険物語の裏に、これほど壮絶な過去が存在したとは、思いもよりませんでした。明るい未来が約束されていたはずの利発そうな4人の少年たちが、大人に混じってサロンでいっぱしの芸術を語り合うシーンの眩しさが、冒頭の第一次世界大戦の残酷な描写との、息苦しいほどのコントラストを生んでいた。

 

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