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ターナー、光に愛を求めて★★★

2015年08月17日 | た行の映画
18世紀末から19世紀にかけて活躍したイギリスの風景画家ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーの謎に満ちた人生に迫る伝記ドラマ。『秘密と嘘』『ヴェラ・ドレイク』などの巨匠マイク・リー監督が構想に10年を費やし、愛と光を求め旅を愛した天才画家の創作への情熱や人物像を描く。主演は、リー監督の『人生は、時々晴れ』にも出演したティモシー・スポールが務め、第67回カンヌ国際映画祭男優賞などを受賞した。
あらすじ:18世紀末イギリス、若かりしころからロイヤル・アカデミーで評判だった自由な芸術家のターナー(ティモシー・スポール)は、インスピレーションを得るために旅に出ることが多かった。また異色の作風から、画壇や観る者に理解されないこともあった。そんなある日、助手を務めていた父親が突然他界してしまい衝撃を受ける。

<感想>ターナーの風景画は日本でもかなりのファンがいると聞くが、それにしても、ターナー本人のことについては殆ど知られていないのが実情ではないだろうか。実際、脚本を書いたリー監督も相当に調査を重ねたらしく、ここでは60余年の画業のうち最後の25年間に焦点を絞り、彼の旺盛な創作活動と影に日向にそれを支えた2人の女性との交情を描いている。

ここはパトロンの一人であるエグルモント卿の屋敷にて。
その2人の女性とは長年にわたりターナー一家を切り盛りした家政婦と、ターナーがスケッチ旅行で訪れた港町の宿屋の女将。彼女らとの親密な関係を中心に謎に満ちた私生活が次第に明らかになるのだが、精神病院で死んだ母親の面影が、常に彼の孤独な内面を覆っていたという事実は、人間の運命をとらえた彼の画家としてを知る上でも見逃せないことでしょう。

しかしながら、堅苦しい芸術映画というわけでもなく、事実、逆にターナーを演じるティモシー・スポールの圧倒的な演技力で、観客を画面に釘付けにしてしまうのだ。彼は「ハリー・ポッター」シリーズのピーター・ペティグリューとか「英国王のスピーチ」のウィンストン・チャーチル役などで知られている実力派俳優。決して美男子で渋い中年オヤジではないけれど、見せる演技が申し分ないのだ。

常にモグモグ、ブツブツと喋り、時にはキャンバスに向かって粉を吹き付けたり、ペっと吐いたツバで絵の具を延ばしたり、もうやりたい放題なのだ。それでも周囲から慕われ、ユーモアたっぷりに毒舌を吐いたりする反骨の人というのだから。ひよっとするとターナーって、こんな人だったのではと思わせるだけの、リアリティーはあるのです。

これはもちろん、マイク・リーと言う傑出した監督の眼を通して見た、英国の風景画家、ターナー像に違いありませんね。例え細部は事実と異なっていても、マイク・リーならではの人間主義はここでも健在でした。圧倒されるシーンは、ターナーの描いた絵の世界で、その光と影の織りなす綾が目の前のスクリーンで鮮やかに映しだされていくのが素晴らしい。
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