パピとママ映画のblog

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ドラッグ・ウォー 毒戦 ★★★.5

2014年06月11日 | アクション映画ータ行
香港ノワールの鬼才ジョニー・トーの監督50作目で、アジア全域に及ぶ巨大麻薬組織壊滅に挑む中国公安警察の極秘潜入捜査を描いたクライムサスペンス。ジョニー・トー監督作品で脚本を務めてきたワイ・カーファイとヤウ・ナイホイらがタッグを組み、公安警察と組織の壮絶な戦いを通し現代中国の薬物犯罪の内情も映し出す。主演は、『強奪のトライアングル』でも共演しているルイス・クーとスン・ホンレイ。さらにラム・シューやラム・カートンなど、ジョニー・トー作品の常連が共演を果たしている。
あらすじ:中国・津海にある、覚醒剤を密造する工場で爆発が発生。そこから車で逃走したテンミンは衝突事故を起こし、意識不明の状態で病院に搬送される。その病院に居合わせた麻薬捜査官のジャン警部は、テンミンが麻薬組織の重要人物であることを察知。覚醒剤密造には死刑判決が下るため、減刑と引き換えで捜査協力することを要請する。テンミンの情報をもとに潜入捜査が進められるなか、中国全土だけでなく韓国や日本にまで勢力を拡大する麻薬シンジゲートと、その巨大組織を裏で操る“香港の7人衆”の存在が浮かび上がる。

<感想>ここ数十年、様々な形での連携を見せながら、合作の動きを加速させてきた中国と香港の映画界。そんな中にあって、あくまでもメイドイン香港たる作品を撮り続けてきたのが、映画ファンのみならず世界のクリエーターからの熱狂的な支持を受ける鬼才ジョニー・トー監督。もちろんトー監督も中国マーケットの重要性は充分に認識しており、頑なに香港にこだわってきたわけではなかったようですね。ネックになっていたのは、やはり中国の「検問の厳しさ」だったようです。
ほとんど完全に香港アクション調の作品になっているので、いったいこれを中国本土の話にした意味合いはどこに行ったのだろう?・・・と、妙に落ち着かない気持ちで見てしまった。せっかく中国本土で制作したのだから、その特徴、特異性を引き出して欲しかったのに。これでは香港アクションと変わるところがない。普通の捜査活劇に終わったのは残念でした。

それにしても、中国公安警察による、巨大麻薬組織への極秘潜入捜査の様子。映画作りにおいて何より自由を求めるトー監督が中国公安の実態に迫る作品を本土で撮ったということなのであろう。さらに出来上がったその作品が、妥協なき全くの、ジョニー・トー映画だったということ。
中国公安麻薬捜査官、ジャン警部率いる捜査チームの命懸けの活躍を描いたもの。だが、これはトー作品、当然、お話は単純な英雄譚におさまるはずもなく、いつものシャープな演出手腕にて、囮を使い架空取引を仕掛ける捜査チームと、麻薬組織との二転三転する心理戦をスリリングに、描き出していくのだが、その過程で、じりじりと浮かび上がってくるものは、中国としてはあまり触れて欲しくないはずの、現代中国社会の闇の深さだと思います。

加えて、アクションの連続でみせてゆく本作の、主にラストを彩る至近距離のガンアクションによる、ひたすら壮絶なその様よ、これはいったい、ここまでやったこれらのどこに、妥協があったというのだろうか。ですが、終盤失速気味になるのがつくづく惜しまれる。
公安当局の制限としては、公安のイメージのため「あまりたくさん死んではいけない」「あまり銃を撃つな」というものがあったそうだが、この仕上がりで妥協したという監督の頭の中には、当初、どんな地獄絵図が渦巻いていたのか、想像するだに恐るべしジョニー・トー監督である。

ですが、中国資本で中国を舞台にぐっとスケールアップして、ロケーションも凝りに凝った本作の衝撃は変わらずでありました。どうしたらこんなに面白い映画が撮れるのか。流麗なキャメラワークと連動するストーリーテリング。音楽のタイミングも美しく、まるで映画全体が一篇のミュージカルナンバーを形成しているkのようだ。派手な部分だけでなく、シガレットケース(仕掛けてあるカメラ)を巡る細やかな駆け引きまでもが面白い。
そして、これでもかこれでもかのアクションと、どんでん返しのスリルと思わぬ隠し玉。毎度お馴染みのモチーフ探しも楽しいです。ラストに死刑と引き換えに潜入捜査に協力したテンミンが、麻薬仲間や警察を銃殺するシーン、そして警察に捕まるテンミンが女々しく懇願する姿が可笑しかった。ただし、年々“哀しみ”が薄れてきているのは残念な気がするかもです。でも、超娯楽快作には違いありませんから。
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