SF作家フィリップ・K・ディックの短編小説「トータル・リコール(旧題:追憶売ります)」を映画化した『トータル・リコール』。1990年に製作されたポール・バーホーベン監督版は、当時人気絶頂だったアーノルド・シュワルツェネッガーが主演し、大ヒットを記録した。そんな『トータル・リコール』が、更なる進化を遂げて甦った。記憶を操作され、自分自身をも信じることができない主人公ダグラス・クエイドを『マイアミ・バイス』『ヒットマンズ・レクイエム』のコリン・ファレルが、主人公の妻をケイト・ベッキンセール、主人公の記憶の鍵を握る女性をジェシカ・ビールが演じる。監督は、『ダイ・ハード4.0』のレン・ワイズマン。(作品資料より)
あらすじ:“記憶”が簡単に売買される近未来。世界は大きな戦争の果てに、正常な環境を失い、人々はわずかな土地で裕福なブリテン連邦と貧しいコロニーという二つの地域に分かれて暮らしていた。彼らは退屈な日常の中で、刺激を求めてリコール社の人工記憶を買いに行き、不満を解消していた。
コロニーに住む工場労働者のクエイドもその一人。工場で働く毎日にふと嫌気が差し人工記憶センター、リコール社を訪れる。だが、彼の記憶が書き換えられようとしたその時、なぜか突然、ブリテン連邦の連邦警察官の襲撃を受ける。そこで自分の知らぬ戦闘能力を知り、困惑する。
混乱の中、帰宅したクエイドは、今度は彼の妻ローリーに襲われる。「記憶を消され、新しい記憶を植えつけられただけ。ダグラス・クエイドなんて人間は、この世に存在しない」と話すローリーを振り切り逃げるクエイドは、その先に数々の謎メッセージと共にメリーナと出会う……。(作品資料より)
<感想>アーノルド・シュワルツェネッガー主演の90年度版の舞台は火星だったが、今回の舞台はブリテン連邦とコロニーという2大国家が支配する未来の地球。世界は表側と裏側に分断され、労働者の通勤には地球のコア(核)を貫く“ザ・フォール”と呼ばれる巨大エレベーターが使用されている。
90年版のダグの夢は、火星旅行。悪と戦うスパイとして火星に乗り込む記憶をリコール社で買ったのだが、シュワちゃんから本作では彼と似ても似つかないコリン・ファレルがダグ役に挑戦。普通の男がスーパーヒーローになっていく、そのファンタジーを満たしてくれるのが、この物語の魅力の一つ。普通の男が違うものに変化するその過程が興味深い。
もちろんシュワちゃんの主演作をリメイクしているので、当然のごとくオリジナル版へのオマージュがたっぷり。あの有名な顔が割れる“おばさん”もヒネった演出で再現され、思わずニヤリとした。しかし、オリジナル以上にオマージュを捧げられているのが「ブレードランナー」なのだ。
主人公が暮らす労働者地域のコロニーの、ダークで湿気が漂う街全体と、けばいネオンがきらめく歓楽街は、「ブレードランナー」をそのまま再現したかのよう。漢字が多用されたアジアンな雰囲気もそっくりだ。
監督が和洋折衷の近未来を創造。原作のコンセプトが気に入り監督を引き受けたワイズマンが、斬新な近未来を創造。コロニーは番傘や大仏さん、ブリテン連邦にはビッグベンといった旧世界の物が近未来的な物と混在する世界は独特ですね。
そんなダグの夢はスパイになること。記憶操作装置もスタイリッシュにモデルチェンジになっている。リコール社は労働者層の不満を解消するガス抜き的な役割で、彼らは好みの記憶を買って日頃の憂さを晴らしているのだ。
監督の妻、ケイト・ベッキンセールがローリー役で鬼嫁を演じている。もう一人のメリーナ役のジェシカ・ビールとの派手なキャットファイトやガン・アクションが凄い。ボクシングやマーシャル・アーツ、カポエイラなんてアクションも取り入れて、鬼嫁とのバトルが凄まじい。
もち、主人公のコリン・ファレルもトレーニングを重ね、スタントマンの下でバルクールの特訓も。だいぶマッチョな身体を見せてます。ダグは武器の扱いや戦い方には精通しているという設定だから、リコール社で武装警官たちを一人で叩きのめすシーンはスタントなし。
ここでの富裕地域「ブリテン連邦」の治安を守るのは、人間ではないロボット警官隊だが、こいつらの機能や動き方、隊列は絶対に「アイ・ロボット」を参考にしているなぁと確信。氾乱まで起こしたらパクリになったけど、そこはギリギリセーフだった。
過去の記憶を消されていた労働者階級の男が辿り着く衝撃の事実とは?・・・貧富の差が拡大した現実味のある未来の設定や、2億ドル近い制作費を投入して生み出された近未来世界のビジュアルなど、
そして、ディックの原作小説に描かれていたホバーカーがついに登場。90年度版では、車は地上の道路を走るだけだったが、新作では未来都市の空を自由に駆け回る。窮地のダグをメリーナが救った時に乗っていたのもこの車で、追っ手のホバーカーとのダイナミックなカーチェイスが展開される。
放射能汚染によってミュータント化した者たちを、人類が差別する火星社会が描かれた90年版に対して、少数の富を持つ者が多数の貧しい者を支配する構図で、格差社会のあつれきが描かれている。
そんな主人公の真実探しのミステリーが、宙を浮かんで猛然と疾走する車のチェイスや激烈なガン・バトルなど、圧倒的な迫力みなぎる見せ場と共にノンストップに展開する。やがて危機、また危機に見舞われる主人公の逃亡劇は、地球の命運を左右する壮大なる死闘へと発展していく。
ある日突然“自分を失う”恐怖と、すべてを懸けて“自分を取り戻す”極限のスリルを体感しよう。
とにかくコリンが、妻のケイトから追われる逃亡劇のスリルと、自分が最後は富裕層が貧しいコロニーを奪ってしまうという戦いに、果敢にも挑む姿がいい。シュワちゃんのとは比べものにはならないが、それなりに現代のCGを駆使した映像に満足。
2012年劇場鑑賞作品・・・81 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキングへ
あらすじ:“記憶”が簡単に売買される近未来。世界は大きな戦争の果てに、正常な環境を失い、人々はわずかな土地で裕福なブリテン連邦と貧しいコロニーという二つの地域に分かれて暮らしていた。彼らは退屈な日常の中で、刺激を求めてリコール社の人工記憶を買いに行き、不満を解消していた。
コロニーに住む工場労働者のクエイドもその一人。工場で働く毎日にふと嫌気が差し人工記憶センター、リコール社を訪れる。だが、彼の記憶が書き換えられようとしたその時、なぜか突然、ブリテン連邦の連邦警察官の襲撃を受ける。そこで自分の知らぬ戦闘能力を知り、困惑する。
混乱の中、帰宅したクエイドは、今度は彼の妻ローリーに襲われる。「記憶を消され、新しい記憶を植えつけられただけ。ダグラス・クエイドなんて人間は、この世に存在しない」と話すローリーを振り切り逃げるクエイドは、その先に数々の謎メッセージと共にメリーナと出会う……。(作品資料より)
<感想>アーノルド・シュワルツェネッガー主演の90年度版の舞台は火星だったが、今回の舞台はブリテン連邦とコロニーという2大国家が支配する未来の地球。世界は表側と裏側に分断され、労働者の通勤には地球のコア(核)を貫く“ザ・フォール”と呼ばれる巨大エレベーターが使用されている。
90年版のダグの夢は、火星旅行。悪と戦うスパイとして火星に乗り込む記憶をリコール社で買ったのだが、シュワちゃんから本作では彼と似ても似つかないコリン・ファレルがダグ役に挑戦。普通の男がスーパーヒーローになっていく、そのファンタジーを満たしてくれるのが、この物語の魅力の一つ。普通の男が違うものに変化するその過程が興味深い。
もちろんシュワちゃんの主演作をリメイクしているので、当然のごとくオリジナル版へのオマージュがたっぷり。あの有名な顔が割れる“おばさん”もヒネった演出で再現され、思わずニヤリとした。しかし、オリジナル以上にオマージュを捧げられているのが「ブレードランナー」なのだ。
主人公が暮らす労働者地域のコロニーの、ダークで湿気が漂う街全体と、けばいネオンがきらめく歓楽街は、「ブレードランナー」をそのまま再現したかのよう。漢字が多用されたアジアンな雰囲気もそっくりだ。
監督が和洋折衷の近未来を創造。原作のコンセプトが気に入り監督を引き受けたワイズマンが、斬新な近未来を創造。コロニーは番傘や大仏さん、ブリテン連邦にはビッグベンといった旧世界の物が近未来的な物と混在する世界は独特ですね。
そんなダグの夢はスパイになること。記憶操作装置もスタイリッシュにモデルチェンジになっている。リコール社は労働者層の不満を解消するガス抜き的な役割で、彼らは好みの記憶を買って日頃の憂さを晴らしているのだ。
監督の妻、ケイト・ベッキンセールがローリー役で鬼嫁を演じている。もう一人のメリーナ役のジェシカ・ビールとの派手なキャットファイトやガン・アクションが凄い。ボクシングやマーシャル・アーツ、カポエイラなんてアクションも取り入れて、鬼嫁とのバトルが凄まじい。
もち、主人公のコリン・ファレルもトレーニングを重ね、スタントマンの下でバルクールの特訓も。だいぶマッチョな身体を見せてます。ダグは武器の扱いや戦い方には精通しているという設定だから、リコール社で武装警官たちを一人で叩きのめすシーンはスタントなし。
ここでの富裕地域「ブリテン連邦」の治安を守るのは、人間ではないロボット警官隊だが、こいつらの機能や動き方、隊列は絶対に「アイ・ロボット」を参考にしているなぁと確信。氾乱まで起こしたらパクリになったけど、そこはギリギリセーフだった。
過去の記憶を消されていた労働者階級の男が辿り着く衝撃の事実とは?・・・貧富の差が拡大した現実味のある未来の設定や、2億ドル近い制作費を投入して生み出された近未来世界のビジュアルなど、
そして、ディックの原作小説に描かれていたホバーカーがついに登場。90年度版では、車は地上の道路を走るだけだったが、新作では未来都市の空を自由に駆け回る。窮地のダグをメリーナが救った時に乗っていたのもこの車で、追っ手のホバーカーとのダイナミックなカーチェイスが展開される。
放射能汚染によってミュータント化した者たちを、人類が差別する火星社会が描かれた90年版に対して、少数の富を持つ者が多数の貧しい者を支配する構図で、格差社会のあつれきが描かれている。
そんな主人公の真実探しのミステリーが、宙を浮かんで猛然と疾走する車のチェイスや激烈なガン・バトルなど、圧倒的な迫力みなぎる見せ場と共にノンストップに展開する。やがて危機、また危機に見舞われる主人公の逃亡劇は、地球の命運を左右する壮大なる死闘へと発展していく。
ある日突然“自分を失う”恐怖と、すべてを懸けて“自分を取り戻す”極限のスリルを体感しよう。
とにかくコリンが、妻のケイトから追われる逃亡劇のスリルと、自分が最後は富裕層が貧しいコロニーを奪ってしまうという戦いに、果敢にも挑む姿がいい。シュワちゃんのとは比べものにはならないが、それなりに現代のCGを駆使した映像に満足。
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