
「セッション」のマイルズ・テラーが、交通事故で選手生命の危機に直面しながらも不屈の闘志で奇跡のカムバックを果たした伝説のボクサー、ビニー・パジェンサを演じるボクシング伝記ドラマ。共演はアーロン・エッカート。監督は「マネー・ゲーム」のベン・ヤンガー。

あらすじ:スーパーライト級チャンピオンのロジャー・メイウェザーに完敗を喫し、プロモーターからも引退勧告されたビニー・パジェンサ。これを機に、飲んだくれだが名伯楽の呼び声高いケビン・ルーニーをトレーナーに迎える。そしてみごと世界ジュニアミドル級タイトルを獲得する。だがその直後、正面衝突事故に遭い、首の骨を折る重傷を負ってしまう。再び歩けるようになるかさえ医者も保証できず、家族をはじめ誰もが選手生命は終わったと思っていた。そんな中、ただ一人リングに戻ることを諦めず、ケビンを説得して密かにトレーニングを再開するビニーだったが…。

<感想>あの「セッション」から久しぶりに観たマイルズ・テラーが、ビニー・パジェンサという実在のボクサーを演じると言うので鑑賞。1980年代の後半。ロードアイルランド出身の自惚れやのボクサー、ビニーが、対戦相手のチャンピオンに滅多打ちにされ、プロモーターから引退勧告を受けるも、ビニーは諦めずに実力はあるが飲んだくれのトレーナーの、アーロン・エッカートと組み、二階級上の世界ジュニアミドル級に体重を上げ世界チャンピオンに挑戦し、見事に地元で勝利を掴んだ。

意表を突くのがヒョウ柄のパンツを穿いて、計量の寸前まで水も飲まずに減量の為に汗をかき、時間ギリギリで計量台に乗るビニー。そして、2回戦でKOを取り世界ジュニアミドル級獲得となる。

ここまででボクシングの映画が1本出来るのに、ビニーが凄いのはここからだった。チャンピオンとなった彼は高級車を買い、友達に運転をしてもらいドライブへ出かけ、対向車と正面衝突する大事故を起こし、幸い命は取り留めたものの、ボクシングはおろか「二度と歩けないだろう」と医者から宣告される。

ビニーは自分はこれで終わりだという絶望感や周囲の同情、治療の痛みと戦いながらも、もう一度リングに上がりたいという決意を固め、内緒で一人地下室にあるトレーニングマシーンで、腕の筋肉や足の筋肉を鍛える。それは、過酷な、よくぞ我慢ができるもんだと思う。
首の骨を固定する金具を付けて、自分との戦いだろうこれは。これが実話だというから、観ているこちらも頭が痛くなる思いだ。ちょっと気の弱い人なら、スクリーンに向かって「やめてくれ」と叫んでいることだろう。でも実話なのだから。この先もあるのだ。

首の骨折の治療と、その後のハードなトレーニングをこなしつつ、周囲の反対をも乗り越えてリングに復帰をするわけ。もちろん両親の反対もあり、兄弟も親戚の人たちも、彼が復帰をしてリングに上がったら「死んでしまう」と。
リングの上でしか生きられない男が、リングの外に放り出されて己と闘う物語でもあり、主人公の「頑固さ」がきちんと描かれていて、彼の核心が捉えられている感があり、映画にびしっと筋が通って見えた。

それにつけても、トレーナーのアーロン・エッカートが良かった。彼の後押しがなかったらここまでは復帰できなかっただろうに。
観ていて一番の辛さは、ハローとよばれる金属製の頚椎固定器具は、頭に直接ねじ止めする手術で装着するのだが、それを外す時に、ビニーは麻酔ナシでいいと頑張って、留め金を外す度のショッキングかつ痛々しい場面がある。

そして1年後、見事に復帰して、世界戦に挑戦する。12Rまで闘うのだが、観ていて試合経過をアレンジするなど、けっこうな脚色が加えられているも、判定でビニーの勝利が決まると、最後の試合の見せ方が相当に素晴らしく、涙なしでは観られない。

このTV放映を家で見ているビニーの母親の姿が映されるが、息子の試合のTV中継がある度に、奥の部屋に引っ込んでしまいみんなと一緒にTVを見られないのだ。その気持ちがよく分かるから、息子が殴られるのを見て、嬉しい母親はいないのではないかと。それでも、家族の声だけは耳に集中させていて、歓声が上がる度に胸を撫でおろし、声だけで一喜一憂する母親の姿に泣けて来るのだ。
エンドロール後に、ビニー本人が録画映像に出て来て「病気に打ち勝つ勇気と、治ると信じること」を、そこで病気で闘っている全ての人たちに、贈る言葉となっていた。
2017年劇場鑑賞作品・・・193
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あらすじ:スーパーライト級チャンピオンのロジャー・メイウェザーに完敗を喫し、プロモーターからも引退勧告されたビニー・パジェンサ。これを機に、飲んだくれだが名伯楽の呼び声高いケビン・ルーニーをトレーナーに迎える。そしてみごと世界ジュニアミドル級タイトルを獲得する。だがその直後、正面衝突事故に遭い、首の骨を折る重傷を負ってしまう。再び歩けるようになるかさえ医者も保証できず、家族をはじめ誰もが選手生命は終わったと思っていた。そんな中、ただ一人リングに戻ることを諦めず、ケビンを説得して密かにトレーニングを再開するビニーだったが…。

<感想>あの「セッション」から久しぶりに観たマイルズ・テラーが、ビニー・パジェンサという実在のボクサーを演じると言うので鑑賞。1980年代の後半。ロードアイルランド出身の自惚れやのボクサー、ビニーが、対戦相手のチャンピオンに滅多打ちにされ、プロモーターから引退勧告を受けるも、ビニーは諦めずに実力はあるが飲んだくれのトレーナーの、アーロン・エッカートと組み、二階級上の世界ジュニアミドル級に体重を上げ世界チャンピオンに挑戦し、見事に地元で勝利を掴んだ。

意表を突くのがヒョウ柄のパンツを穿いて、計量の寸前まで水も飲まずに減量の為に汗をかき、時間ギリギリで計量台に乗るビニー。そして、2回戦でKOを取り世界ジュニアミドル級獲得となる。

ここまででボクシングの映画が1本出来るのに、ビニーが凄いのはここからだった。チャンピオンとなった彼は高級車を買い、友達に運転をしてもらいドライブへ出かけ、対向車と正面衝突する大事故を起こし、幸い命は取り留めたものの、ボクシングはおろか「二度と歩けないだろう」と医者から宣告される。

ビニーは自分はこれで終わりだという絶望感や周囲の同情、治療の痛みと戦いながらも、もう一度リングに上がりたいという決意を固め、内緒で一人地下室にあるトレーニングマシーンで、腕の筋肉や足の筋肉を鍛える。それは、過酷な、よくぞ我慢ができるもんだと思う。
首の骨を固定する金具を付けて、自分との戦いだろうこれは。これが実話だというから、観ているこちらも頭が痛くなる思いだ。ちょっと気の弱い人なら、スクリーンに向かって「やめてくれ」と叫んでいることだろう。でも実話なのだから。この先もあるのだ。

首の骨折の治療と、その後のハードなトレーニングをこなしつつ、周囲の反対をも乗り越えてリングに復帰をするわけ。もちろん両親の反対もあり、兄弟も親戚の人たちも、彼が復帰をしてリングに上がったら「死んでしまう」と。
リングの上でしか生きられない男が、リングの外に放り出されて己と闘う物語でもあり、主人公の「頑固さ」がきちんと描かれていて、彼の核心が捉えられている感があり、映画にびしっと筋が通って見えた。

それにつけても、トレーナーのアーロン・エッカートが良かった。彼の後押しがなかったらここまでは復帰できなかっただろうに。
観ていて一番の辛さは、ハローとよばれる金属製の頚椎固定器具は、頭に直接ねじ止めする手術で装着するのだが、それを外す時に、ビニーは麻酔ナシでいいと頑張って、留め金を外す度のショッキングかつ痛々しい場面がある。

そして1年後、見事に復帰して、世界戦に挑戦する。12Rまで闘うのだが、観ていて試合経過をアレンジするなど、けっこうな脚色が加えられているも、判定でビニーの勝利が決まると、最後の試合の見せ方が相当に素晴らしく、涙なしでは観られない。

このTV放映を家で見ているビニーの母親の姿が映されるが、息子の試合のTV中継がある度に、奥の部屋に引っ込んでしまいみんなと一緒にTVを見られないのだ。その気持ちがよく分かるから、息子が殴られるのを見て、嬉しい母親はいないのではないかと。それでも、家族の声だけは耳に集中させていて、歓声が上がる度に胸を撫でおろし、声だけで一喜一憂する母親の姿に泣けて来るのだ。
エンドロール後に、ビニー本人が録画映像に出て来て「病気に打ち勝つ勇気と、治ると信じること」を、そこで病気で闘っている全ての人たちに、贈る言葉となっていた。
2017年劇場鑑賞作品・・・193
