気鋭の劇作家・前川知大率いる劇団イキウメの同名舞台劇を「岸辺の旅」「クリーピー 偽りの隣人」の黒沢清監督が映画化した異色SFドラマ。人々から“概念”を奪っていく謎の侵略者によって人類が滅亡の危機に直面していく中、夫が侵略者に乗っ取られた妻の戸惑いと夫婦が辿る予測不能の運命を描き出す。主演は長澤まさみと松田龍平、共演に長谷川博己、高杉真宙、恒松祐里。
あらすじ:日本海に面した小さな港町。ここに暮らす加瀬鳴海(長澤まさみ)のもとに、数日間行方不明となっていた夫・真治(松田龍平)が帰ってくる。鳴海は夫の浮気を疑うが、性格が一変してしまった夫の様子に困惑する。やがて夫は会社を辞め、毎日散歩するようになる。その頃、町では謎めいた一家惨殺事件が発生し、不可思議な現象が頻発していた。ジャーナリストの桜井(長谷川博己)は、偶然出会った奇妙な青年・天野(高杉真宙)に興味を抱き、彼とともに事件のカギを握る女子高生・立花あきら(恒松祐里)の行方を追う。そんな中、真治から“自分は地球を侵略に来た宇宙人だ”と告白される鳴海だったが…。
注意:ネタバレで書いております。これからご覧になる方はご注意下さい。
<感想>愛する人が“別人”になったら、今まで通り愛せますか? 人気女優・長澤まさみと松田龍平がパートナーを演じ、その手腕が国内外で高く評価される黒沢清監督が手がけた「散歩する侵略者」は、“究極の愛”を突きつける映画でした。謎の侵略者に体を乗っ取られてしまったパートナーは、どんどん理想の相手に近づいていく。だがその一方で、刻一刻と世界の崩壊が迫っていった。だが、宇宙人には仲間意識があっても愛の概念がなかった。その概念を知ることで、侵略の愚かさに気付き、途中で攻撃を止めたという物語。
驚いたのが、冒頭での女子高生が金魚すくいをして、土産に家に持って帰ったら、・・・何と家の中では宇宙人によって家族が殺されてしまう。この描写こそないが、女子高生は体をすぐにその殺人鬼の宇宙人によって体を乗っ取られてしまう。そして、真っ赤な血で染まったセーラー服を着て街を彷徨う。前からトラックが来て、危なく女子高生を轢くところを、ハンドルを切って女子高生を避けたところへ、対向車の乗用車がぶつかってしまう。どうやらその女子校生は、病院へ入れられて、立花あきらと名乗っており、警官によって見張られていた。
もう一方では、長澤まさみと行方不明となっていた夫・真治の松田龍平が帰って来るも、別人のような温厚な性格になってしまった夫に戸惑うも、病院へ連れて行くと、若年性アルツハイマーとか言われてしまう。夫は仕事も辞めて家でダラダラと毎日を過ごす。妻はそれでも、離婚したいと思っていた以前の夫とは違って、何処か病気のような不安定な感じで、独りにはしておけない。
そうかといって、生活するのに自分が働かないといけないし、イライラして怒りが込み上げるも、散歩してくるといって外へでても、転んでけがをするし、独りにはしておけないのだ。妻が作った料理を美味しいといったことが無かったのに、上手いと言って食べてくれる。今までになかった夫の変化に、戸惑いながらも、母性愛に目覚めて夫の世話をすることに決める。
家に遊びに来た鳴海の妹の明日美(前田敦子)、散歩するなかで出会った引きこもりの青年・丸尾(満島真之介)、鳴海の取引先の嫌味な社長・鈴木(光石研)……皆、真治と会話をした後、謎の言葉をかけられ、真治にトンと額を突かれた人々は、以前とは異なる性格になり、会う人会う人に奇妙な変化をもたらす。
あまりにも変わってしまった夫の真治に、戸惑いを隠せない妻の鳴海。ですが夫は口癖のように、「僕は宇宙人で、地球を侵略に来た」と、衝撃的な告白をする。妻の鳴海の目の前にいる真治は、宇宙人の侵略者に体を乗っ取られていたのだ。それでも夫婦として一緒にいるのか? 別れるのか? 鳴海の愛が、試されようとしていた。
長谷川博己が、ユーモアも交えながら緊迫感たっぷりに、世界の危機に迫るジャーナリスト桜井に扮して熱演している。「シン・ゴジラ」で世の女性を魅了した長谷川博己が、物語のカギを握り、世間を震かんさせる一家惨殺事件に関わる、新たな“宇宙人”たちと行動を共にする役どころ。
その桜井と奇妙な友情を築くのが、成長著しい若手イケメン俳優・高杉真宙と運動神経抜群の恒松祐里が扮した謎の若者たち。得体の知れない存在という難役に挑み、不気味な表情で見る者を凍りつかせ、屈強な男たちを相手に激しいバトルを披露するのが、恒松祐里扮する女子高生の立花あきら。
ここでは、拳銃で警官を殺害したり、最後には長澤まさみの車に轢かれてしんでしまう宇宙人という役どころを、圧倒的な存在感を見せつけます。
侵略者に出会ってしまった人々は、人間が大切にしている概念を次々と失っていく。そんな中で妻の鳴海だけは夫を信じ続け、何があっても夫の真治を守ろうとする物語は、SFというジャンルでありながら、その実エモーショナルなラブストーリーでもある。それにどこかコメディでもあり、何か恐ろしいことが起こりそうな雰囲気も漂っているのだ。
世界が崩壊に向かう真っ最中に、加瀬夫婦は車で逃げてホテルに泊まるのですが、そこで二人が仲良く抱き合い、妻の鳴海が宇宙人の夫に「愛情」という「概念」を私の頭の中から盗んで頂戴と懇願するシーン。宇宙人には、人間の愛情という概念を知らないから、それを教えてあげようと必死でしたね。
それに、高杉真宙が厚生省の人という笹野高史率いる国家権力の男たちに、機関銃で撃たれてしまい、自分の星に通信が出来なくなり、桜井が自分の体に乗り移って通信をやり遂げてくれと言うところも、友情という愛ですよね、これも。
地球を侵略する宇宙戦争のような描写はありませんが、それでも、加瀬夫婦がホテルを出て見る風景は、海が広がっており、空には真っ赤な雲が暗雲を立ち込めており、夫の真治が妻の鳴海をかばって守るところが映し出され、夫婦愛というか、人間の真髄とでも言いましょうか、愛するものを守るという構図になってましたね。
この映画は宇宙人による人類への脅威を描いたSF映画でありますが、宇宙人でも「人類の愛」という概念には敵わないということなのかもしれませんね。
派手な宇宙船は出てこないのに、侵略の開始とともに襲い来る天変地異のビジュアルは恐怖と鮮やかさに目を奪われてしまいます。
そして後日談でも、丁寧に積み重ねられていく描写と斬新な設定が、夫婦の行く末が、今までになかった空気感を醸し出して、見事なまでに深い余韻を残していました。
2017年劇場鑑賞作品・・・206アクション・アドベンチャーランキング
あらすじ:日本海に面した小さな港町。ここに暮らす加瀬鳴海(長澤まさみ)のもとに、数日間行方不明となっていた夫・真治(松田龍平)が帰ってくる。鳴海は夫の浮気を疑うが、性格が一変してしまった夫の様子に困惑する。やがて夫は会社を辞め、毎日散歩するようになる。その頃、町では謎めいた一家惨殺事件が発生し、不可思議な現象が頻発していた。ジャーナリストの桜井(長谷川博己)は、偶然出会った奇妙な青年・天野(高杉真宙)に興味を抱き、彼とともに事件のカギを握る女子高生・立花あきら(恒松祐里)の行方を追う。そんな中、真治から“自分は地球を侵略に来た宇宙人だ”と告白される鳴海だったが…。
注意:ネタバレで書いております。これからご覧になる方はご注意下さい。
<感想>愛する人が“別人”になったら、今まで通り愛せますか? 人気女優・長澤まさみと松田龍平がパートナーを演じ、その手腕が国内外で高く評価される黒沢清監督が手がけた「散歩する侵略者」は、“究極の愛”を突きつける映画でした。謎の侵略者に体を乗っ取られてしまったパートナーは、どんどん理想の相手に近づいていく。だがその一方で、刻一刻と世界の崩壊が迫っていった。だが、宇宙人には仲間意識があっても愛の概念がなかった。その概念を知ることで、侵略の愚かさに気付き、途中で攻撃を止めたという物語。
驚いたのが、冒頭での女子高生が金魚すくいをして、土産に家に持って帰ったら、・・・何と家の中では宇宙人によって家族が殺されてしまう。この描写こそないが、女子高生は体をすぐにその殺人鬼の宇宙人によって体を乗っ取られてしまう。そして、真っ赤な血で染まったセーラー服を着て街を彷徨う。前からトラックが来て、危なく女子高生を轢くところを、ハンドルを切って女子高生を避けたところへ、対向車の乗用車がぶつかってしまう。どうやらその女子校生は、病院へ入れられて、立花あきらと名乗っており、警官によって見張られていた。
もう一方では、長澤まさみと行方不明となっていた夫・真治の松田龍平が帰って来るも、別人のような温厚な性格になってしまった夫に戸惑うも、病院へ連れて行くと、若年性アルツハイマーとか言われてしまう。夫は仕事も辞めて家でダラダラと毎日を過ごす。妻はそれでも、離婚したいと思っていた以前の夫とは違って、何処か病気のような不安定な感じで、独りにはしておけない。
そうかといって、生活するのに自分が働かないといけないし、イライラして怒りが込み上げるも、散歩してくるといって外へでても、転んでけがをするし、独りにはしておけないのだ。妻が作った料理を美味しいといったことが無かったのに、上手いと言って食べてくれる。今までになかった夫の変化に、戸惑いながらも、母性愛に目覚めて夫の世話をすることに決める。
家に遊びに来た鳴海の妹の明日美(前田敦子)、散歩するなかで出会った引きこもりの青年・丸尾(満島真之介)、鳴海の取引先の嫌味な社長・鈴木(光石研)……皆、真治と会話をした後、謎の言葉をかけられ、真治にトンと額を突かれた人々は、以前とは異なる性格になり、会う人会う人に奇妙な変化をもたらす。
あまりにも変わってしまった夫の真治に、戸惑いを隠せない妻の鳴海。ですが夫は口癖のように、「僕は宇宙人で、地球を侵略に来た」と、衝撃的な告白をする。妻の鳴海の目の前にいる真治は、宇宙人の侵略者に体を乗っ取られていたのだ。それでも夫婦として一緒にいるのか? 別れるのか? 鳴海の愛が、試されようとしていた。
長谷川博己が、ユーモアも交えながら緊迫感たっぷりに、世界の危機に迫るジャーナリスト桜井に扮して熱演している。「シン・ゴジラ」で世の女性を魅了した長谷川博己が、物語のカギを握り、世間を震かんさせる一家惨殺事件に関わる、新たな“宇宙人”たちと行動を共にする役どころ。
その桜井と奇妙な友情を築くのが、成長著しい若手イケメン俳優・高杉真宙と運動神経抜群の恒松祐里が扮した謎の若者たち。得体の知れない存在という難役に挑み、不気味な表情で見る者を凍りつかせ、屈強な男たちを相手に激しいバトルを披露するのが、恒松祐里扮する女子高生の立花あきら。
ここでは、拳銃で警官を殺害したり、最後には長澤まさみの車に轢かれてしんでしまう宇宙人という役どころを、圧倒的な存在感を見せつけます。
侵略者に出会ってしまった人々は、人間が大切にしている概念を次々と失っていく。そんな中で妻の鳴海だけは夫を信じ続け、何があっても夫の真治を守ろうとする物語は、SFというジャンルでありながら、その実エモーショナルなラブストーリーでもある。それにどこかコメディでもあり、何か恐ろしいことが起こりそうな雰囲気も漂っているのだ。
世界が崩壊に向かう真っ最中に、加瀬夫婦は車で逃げてホテルに泊まるのですが、そこで二人が仲良く抱き合い、妻の鳴海が宇宙人の夫に「愛情」という「概念」を私の頭の中から盗んで頂戴と懇願するシーン。宇宙人には、人間の愛情という概念を知らないから、それを教えてあげようと必死でしたね。
それに、高杉真宙が厚生省の人という笹野高史率いる国家権力の男たちに、機関銃で撃たれてしまい、自分の星に通信が出来なくなり、桜井が自分の体に乗り移って通信をやり遂げてくれと言うところも、友情という愛ですよね、これも。
地球を侵略する宇宙戦争のような描写はありませんが、それでも、加瀬夫婦がホテルを出て見る風景は、海が広がっており、空には真っ赤な雲が暗雲を立ち込めており、夫の真治が妻の鳴海をかばって守るところが映し出され、夫婦愛というか、人間の真髄とでも言いましょうか、愛するものを守るという構図になってましたね。
この映画は宇宙人による人類への脅威を描いたSF映画でありますが、宇宙人でも「人類の愛」という概念には敵わないということなのかもしれませんね。
派手な宇宙船は出てこないのに、侵略の開始とともに襲い来る天変地異のビジュアルは恐怖と鮮やかさに目を奪われてしまいます。
そして後日談でも、丁寧に積み重ねられていく描写と斬新な設定が、夫婦の行く末が、今までになかった空気感を醸し出して、見事なまでに深い余韻を残していました。
2017年劇場鑑賞作品・・・206アクション・アドベンチャーランキング