chimi*四方山話

よもやま日記

‥‥帰らねばならぬと考へた

2024-12-31 15:50:00 | 小田原


2024年9月21日 19年ぶりに見た小田原城

『‥‥長い間のあらくれた放浪生活のなかで、私の夢は母を慕ふて蒼ざめる夜が多かつた。母の許へ帰らねばならぬと考へた。』
**青空文庫 “剥製”牧野信一著より抜粋**

小田原市出身の作家、牧野信一さん。
10月に小田原を訪れた際に、
10代の頃よく寄っていた書店、
“高野書店”で購入した古書で知りました。

小田原市栄町にある高野書店

↑購入した『小田原 箱根•真鶴•湯河原 文芸散歩』小田原文芸愛好会(H6.4.1発行)

本文冒頭の抜粋した一節に、
小田原に今年何度か来たのは、
この一節に近い様に思えました。
放浪生活‥まではいかないものの、
ある日を境に家を黙って出ました。
20歳の年のクリスマス前に
アルバイト代をどこかに置き忘れ。
それを短期間で取り戻すために新宿へ。
その年の年末年始を小田原で過ごしたのを
最後にもう小田原に住むことありませんでした。

小田原を離れて35年程になります。
その間に立ち寄ったのは冠婚葬祭の時だけで、今年来た時は父の葬儀以来19年経っていました。
何度か小田原に戻るきっかけはありましたが、逃したまま。
そそっかしい失敗をして、
浅はかな考えの選択をしたばかりに、
こんなに長い年月小田原に戻れなくなっていました。

ここ数年、小田原の夢をよく見る様になって、どうしたのだろうかと思う日々。
小田原には誰も住んでいないのに。
小田原のブログやGoogleマップを
覗いては、郷愁の思いは増すばかり。
とうとう今年の9月に仕事を当日欠勤して、
小田原に来てしまった。
9月の小田原は強風の日でしたが、
空は青空で気持ちが良く、
懐かしい場所に着いては、
来て良かったと思った。
来年もまた何度か訪れてみたいと思う。