数年前、成績優秀な小学5年生のKくんのお母様との面談での話です。
Kくんは、模試の偏差値がいつも70に届くくらいのとても優秀な生徒でした。
Kくんは野球が大好きで、休み時間にはクラスの男の子たちが何人も周りに集まってくるようなタイプ。幼い頃から、人を引き寄せる魅力を持つ子がクラスに一人くらいいますよね。
さて、どんなに優秀な生徒の保護者が相手でも、塾の面談で「このままで大丈夫です」と言うのはNGです。成績が良くても、保護者には不安や心配があるものですし、「さらに成長してほしい」という願いがあるからこそ塾に通わせているのです。
その面談では、お母様からの質問にお答えしながら、いくつかの問題点を解決することができました。
実は当時、私の息子は3歳で、まさに第一次反抗期の真っ最中。そのことをKくんのお母様もご存じでした。少し職権乱用のようですが(笑)、雑談の中で、子育ての先輩であるKくんのお母様に思い切ってアドバイスを求めてみました。
我が家は共働きで、妻も私も毎日、家では格闘の日々…。
そこで私はストレートに、
「Kくんが3〜4歳の頃、どのように接していらっしゃいましたか?」
と聞いてみました。Kくんのように優秀に育つには、幼少期の接し方に何か秘訣があるのではと思ったからです。
すると、お母様はこう答えてくださいました。
「何かに興味を持った瞬間を見逃さないようにしていました」
例えば、数字に興味を持ったと感じたら、その関連のおもちゃを与えたり、お風呂にポスターを貼ったり。国旗、ひらがな、アルファベットなども同じように、興味を示したタイミングで取り入れていたそうです。
つまり、親が「これをやらせたい」と一方的に与えることは絶対にせず、子どもが興味を持つまでじっと待ち、興味を示したら初めてそれを提供する、という方針だったそうです。
この話を聞いて、さっそく我が家でも実践してみましたが、さて、どうでしょう? うまくいくといいなぁ。
Kくんのお母様と私、どちらが先生なのかわからなくなります…。私は、保護者面談のときはいつもそうです。当然、雇用主も上司も知る由もありませんでしたけど(笑)。
塾の講師という仕事は、日々、数多くの「子育ての先輩」である保護者の方々から、直接貴重な体験談を聞ける立場にあります。わたくしは1年間にのべ200名以上の保護者とお話をしていました。
しかもその中には、学年トップどころか、その地域でも指折りの優秀な生徒も多くいます。こんな仕事、なかなかありませんよね。現在も子育て真っ最中の私(と妻)にとっては、本当にありがたいことです。
もちろん、こちらが普段から誠実に向き合い、顧客から求められているものを提供していることが必要なのは言うまでもありませんけど。