メキシコの感染症対応能力は中南米諸国の中ではトップレベルである。医療体制や情報収集力に問題があるとは思えない。メキシコ政府の対応と共に不思議な事は、あれだけ大騒ぎしている当のWHOが、情報不足を補うための調査団を派遣しないことである。しかも調査団の派遣を阻止している中心人物が、何とWHOのマーガレット・チャン事務局長(中国)自身であるというのである。
WHOの活動に疑惑の目を向ける国々や人々は多い。アフリカやブラジルにHIV感染者が多いのは、WHOがアフリカやブラジルで行った種痘ワクチン接種キャンペーンで、種痘にエイズウィルスを混ぜたという指摘もある。2004年、アフリカのナイジェリアはWHO主導のワクチン接種キャンペーンをポリオワクチンにエイズウィルスを混ぜて接種させるアメリカの陰謀だとしてボイコットした。また2006年12月、鳥インフルエンザの死亡者が最も多いインドネシア政府は、大手製薬会社の営利活動に一方的に協力するのが不満だとの姿勢を打ち出し、WHOへのウイルス標本の提出を拒否している。
国家財政といえばメキシコの台所事情は苦しい。先月19日にはIMFから過去最大の470億㌦(約4兆7000億円)に融資枠が承認されている。またインフルエンザ騒動直後、2億500万㌦(約198億円)緊急融資が行われている。どうやら今回の騒動にはIMFやWHOの思惑が絡みあっていることは否定できないようだ。
厚労省によればH5N1型の新型鳥インフルエンザが国内に蔓延した場合、患者数5000万人、死者64万人という試算がある。政府試算は甘く、死者200万人ともいう専門家もいる。しかも鳥インフルエンザによる経済損失は20兆円になるという民間試算もある。この数字を信ずるならば、一国の生産・経済活動の息の根を止め、医療体制も整っていない発展途上国ならば、人的被害のさらなる拡大と共に国家財政破綻を起こす事も可能となる。
予断は許されないものの、今回の新型インフルエンザは弱毒性であり、通常の季節型インフルエンザと大差が無いように思える。しかし今回の新型インフルエンザが日本国内に広がった場合の政府の対策はなんとも仰々しい。休校、職場の閉鎖、集会、イベントの中止、外出禁止、自転車・徒歩での通勤、食料備蓄、等々まるで戒厳令かと勘違いしそうな内容である。
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