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世界大混乱のどさくさに中国は何をやっているか

「宮崎正弘の国際情勢解題」 

 世界大混乱のどさくさに中国は何をやっているか
南シナ海に行政区、欧米の責任追及を拒否。武漢は安全になったと宣言


令和二年(2020)4月21日より転載


いまさら驚くことはない。中国はどさくさに便乗して違うことをおこなう。火事場泥棒の行為である。

まずウィルスの武漢発生、中国元凶説を否定し、欧米の賠償請求に対してこういう。
「エイズは米国から発生したが、米国の責任を問うたか。米国は賠償したか。中国もこんかいは被害者である」(外交部、4月20日)。
 
生物兵器研究所の武漢ラボが元凶とほぼ特定されたが、中国は「武漢は安全になった」と腰を抜かす開き直り。

中国は2012年に海南省三沙市(人口は1800人)を勝手に制定した。2020年4月19日に「正式な行政区」だと獅子吼して、「西沙区」と「南沙区」を新設するとか。
「西沙区」はパラセル諸島を中心とする資源の宝庫。付近では4月2日にも中国海警船がベトナム漁船に体当たり、沈没させている。1974年以来、ベトナム漁船への攻撃が頻発しており、ベトナムと激しく戦闘を繰り返す海域である。

「南砂区」は、フィリピンとスカボロー島をめぐって軍事衝突を引き起こした海域である。
米国国務省は「武漢コロナ対策での忙殺に付け込んでいる」と憤懣やるかたなき姿勢だが、軍艦を派遣する余裕はない。なにしろ米海軍空母乗り組員のコロナ感染で機能不全に陥った。
この「絶好の機会」を中国は「いまだ」として機械便乗し、領有権を正当化し南シナ海の実効支配を強めるのだ。

ベトナム政府は「これらの動きは無効だ。不当な決定を破棄せよ」と強く抗議した。
習近平政権は海域の七つの拠点となる島嶼をすでに白昼堂々と埋立て、人工島を造成し、軍事基地化した。三つの島には滑走路を敷設し、ミサイルを配備した。
レーダー基地を設置した島もあるが、中国は「このあたりの海域は昔から中国の領海だ」と強盗の居直りを続ける。

あまつさえ、南シナ海の55の海底地形や25の島嶼と暗礁、合計80を勝手に命名した。これまでにも287の島嶼・暗礁の名称を一方的に公表している。
なるほど、火事場泥棒って、こうやるんだ。


 ▼香港では自由民主の活動家、指導者らをいきなり逮捕へ

どさくさ紛れに、もうひとつトンデモナイことを中国は展開している。
昨夏から香港でSNSの呼びかけに呼応した香港の若者たちの香港政庁への抗議行動、その背後で操る中国共産党への反対集会、デモがつづき、火焔瓶が燃え、キャンパスは武器庫となり、親中派は区会議員選挙で惨敗した。

習近平は、この香港大乱をじっとこらえながら、隙を待っていた。反撃のチャンスを窺っていたのである。
昨師走にようやく沈静化すると大学構内へ警官を導入し、つぎに生徒を先導したとして自由民主派の教職員を解雇し、ヴィデオにおさめた証拠写真を元に活動家を洗い出して逮捕を続けた。

逮捕者は7700名、保釈金をクラウドファンディングで呼びかけると、HSBCは、その口座を凍結したため、銀行本部にもデモ隊が襲撃し、親中系と言われた銀行のATMは殆どが破壊された。起訴された者、現在までに1100名である。香港の自由民主活動家たちを、欧米の人権批判が弱まった隙を狙ってごっそりと逮捕し裁判に持ち込むという卑劣なやり方である。

4月19日、反政府運動の先頭にたっていた黎智英(ジミーライ)ら十五名を逮捕した。非合法デモを指導したという濡れ衣を被せ、香港基本法の解釈をかってに変更し、弾圧を強化する。すぐに抗議集会がもたれるのだが、いまコロナ騒ぎで香港でも五人以上の集まりが禁止されている。このタイミングを見逃さず、中国共産党は香港自治に重大な干渉を再開したことは、警戒するべきだろう。

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