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NPO法人POSSE(ポッセ) blog

10月5日「格差社会とナショナリズムイベント」報告

 10月5日、POSSEでは「格差社会とナショナリズム」をテーマとしてイベントを行いました。ゲストとして、『靖国問題』などでナショナリズムについて研究している東京大学教授の高橋哲哉さんと、『「生きづらさ」について』などを出版している津田塾大学准教授の萱野稔人さんをお招きしました。当日は多数の方々にお越しいただき、またゲストの議論も活発なものとなり、盛況のうちにイベントを行うことができました。

 まず、司会から秋葉原事件を例として問題提起が行われました。不安定な働き方が広がる中、単に賃金が低く不安定であるというだけではなく、自分は取替え可能な部品であり、社会から全く見放されていると思わされてしまうような、アイデンティティの揺らいでしまう状況が生じており、そこにおいてナショナリズムがはたす効果や問題点はどんなことか、ということが論点として取り上げられました。

 それを受けて萱野さんから、あえてナショナリズムという言葉を使う肯定的な意味はなにか、ということについてのお話がありました。一つは、格差という問題を日本のなかで考える以上、それは国民国家や国民経済といったナショナルなものを前提として議論せざるを得ないということと、もう一つは、「国民なのだから生活を守れ」というように、統治権力に対して抵抗する戦略としてナショナリズムを使える、という点です。

 これに対して、高橋さんからは、国民国家や国民経済という枠組みを前提とすること自体をナショナリズムとは呼べないのではないか、また、統治権力に対抗する際の戦略として「国民」を持ち出すが、その「国民」から排除される人々はどうなるのか、移民の排斥につながる危険性があるのではないか、ということが述べられました。

 さらに、後半部では、若者の間でナショナリズムが果たしている機能は何なのか、ということが話し合われました。

 萱野さんからは、ナショナリズムには、国民としての平等と、また国民として承認されるという、平等要求と承認要求をみたす機能がある、との指摘がありました。社会的に排除されアイデンティティが揺らいでいる人にとっては、他人への暴力か、自分への暴力しか残されていない場合が多く、そこにおいてはこのようなナショナリズムが、社会性を回復する回路となっている、との意見がありました。

 これに対して高橋さんの方からは、貧困や社会的に排除されていると感じている当事者にとって、そのようなナショナリズムの果たしている機能は否定できないが、社会性を回復する回路としてはナショナリズム以外の、アソシエーションや個人と国家の間に位置するような中間団体を通じて行うことができるのではないか、さらに、ナショナリズムによる承認は、常にそこから排除される人を生み出すもので、排他的なものとなる危険性があるのではないか、ということが指摘されました。

 当日は他にも様々な点について議論が活発に交わされました。その模様は次号の雑誌『POSSE』にて掲載予定です。今後もPOSSEでは、「働くこと」の問題に様々な切り口で取り組んで参ります。活動を是非ご期待ください。

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私たちPOSSEは、フリーターや学生など若者によるNPOです。
下北沢に事務所を置いて、若者の「働くこと」に関する問題に取り組むとともに
、若者が集まり交流し学ぶ場をつくります。
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コメント一覧

サン*ジュスト
感想デス
萱野稔人さんのファンですが、ナショナリズムに関する萱野さんの考え方には賛同出来ないですね。高橋さんの仰るとうりナショナリズムは排除される人を必然的にうみだしてしまう。
このNPO初めてしりました。注目です。
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