初めまして、POSSE学生ボランティアの川村ひなのです。
コロナ禍で浮き彫りになった様々な社会問題。「コロナ危機のなかでこそ、学ぼう」をテーマに社会問題について学び考える機会として、POSSEオンラインアカデミーを定期的に開催しています。
4月17日に開催された今回は「難民を「犯罪者」にする「入管法改定案」を廃案に!ー若者が取り組む日本の難民問題ー」と題し、入管法改定案の問題点や、POSSEボランティアの若者の取り組みについて、収容・送還問題を考える弁護士有志の会事務局の指宿昭一弁護士と、POSSE学生ボランティアの岩本菜々さんが講演しました。
入管法「改悪」を絶対に許してはいけない
指宿弁護士は「入管法改定案の問題点」について、立法事実を踏まえながら説明してくださいました。
衝撃的だったのは、入管当局が事実に基づかない論拠で法案を改定しようとしていることです。「長期収容の原因は送還を忌避する人の増加である」「長期収容を防止するためには送還忌避者に対して罰則を与えるか、強制送還をしなければ」という入管側の主張を裏付ける事実は、存在しません。
また、先月(3月)に名古屋入管で起きたスリランカ人女性の死亡事件についても取り上げていました。入管での医療放置が原因であることは明らかですが、入管当局は死因を特定せず責任も取ろうとしていません。
このような乱暴粗悪な行政をしている入管が提案している「改悪案」について、現在国会では審議され、これが可決されようとしています。
私はこの改悪案の内容を知り、そして政府がこれを可決しようとしている事態を見て、恐ろしさと怒りしか感じませんでした。
この5年間の間に、入管行政の中で17人もの人の命が奪われている。この事実を、入管は「強制送還に応じない外国人が悪い」と言って責任を取らず、「送還した先でその人が死んでも構わない」と言っているのです。
これに賛成すること、または見過ごすことなんて、絶対にあってはならないと思います。
指宿弁護士の「この入管法案は、絶対に許してはならない。諦めたら終わりだ。世論の力で、国会を動かさなければならない」というメッセージを受け、私も恐怖と怒りの感情をパワーに変え、声を上げていきたいと強く思いました。
「救済」ではなく、私たちは普遍的な「権利」を求めなくてはならない
岩本さんからは「難民の生きる権利を実現するために」という題で、現在POSSEでどのような運動が組織されているかについての報告がありました。
岩本さんからの報告で特に重要だと思ったのは、難民の生きる権利を奪っている側の責任を問い、普遍的な「権利」を求める運動をする、という点です。
支援団体は、その支援する対象である当事者の状況に「同情」的になり、しばしば「助けてあげなきゃ」という「救済」の考え方が出てきてしまいます。私も実際、支援団体による食糧支援や学習支援、医療の支援などは重要だと考えていましたし、仮放免者の現在の生活状況を変えるためには日本政府が在留資格を「与える」ことが解決策の一つだと考えていました。
しかし、私も現在POSSE学生ボランティアとして運動に参加する中で、そのような支援のあり方がいかに恣意的で危険なものかということがわかり、これまでの考え方について反省しました。
「支援する/される」という非対称な関係性の中で、その「権利」を求めることなく「与え続ける」というのは、当事者の脆弱な立場を維持し続けることだからです。
POSSEは、この「支援」の罠についてしっかりと理解すること、普遍的な「権利」を求めるために当事者と共に闘うことを非常に重視しています。
だからこそ、相談会から可視化された実態とともに生存権獲得の必要性を社会へ発信し、ボランティアを組織し、入管に対し4万筆以上の署名を提出できたのではないでしょうか。
「わたし」にできることは「全て」
岩本さんは最後に、「学生にできることは何か?と言われますが、「全てです!」と言いたいです」とおっしゃっていました。
POSSEにいて、そしてこのイベントに参加して、私も強くそのように感じます。
確かに、もし私が一人ぼっちのままだったら「無理だ」「変えられない」と諦めの気持ちもあったかもしれません。
しかし、私が入管や入管の暴力を許すこの日本社会に対して感じた「恐ろしさ」や「怒り」を共有できる人々、共に闘える人々に出会った今、「できることは全てだ」と感じます。
実際、講演後に一緒にディスカッションをした参加者からも、
「入管法改悪に憤りを感じた」「入管での死亡事件にショックを受けた」「日本がやっていることは「奴隷労働」と同じだ」「自分もボランティアとして何かしたい」という声が上がりました。
このイベントは、「学びの場」でも「報告会」でもなく、「運動を組織する場」でした。
この入管の問題は、一朝一夕には解決できません。一人で「おかしい!」と言い続けても、なかなか入管という壁を壊すことは困難です。
しかし、「おかしい」「変えたい」と思う人がつながり協力し合える場がここに存在する以上、運動の可能性はどんどん広がっていきます。
今後もPOSSEボランティアの一人として、そしてこの社会に生きる市民の一人として、社会を変えていく大きな波を一緒に作りたい。
改めてそのように感じさせる、オンラインアカデミーでした。
POSSE学生ボランティア 川村ひなの
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