著者、出版社:城繁幸(光文社新書)
若者が感じる「閉塞感」。その原因はどこにあるのか。
著者の城繁幸氏は、富士通の人事部で働き、2004年退社。その後出版した『内側から見た富士通成果主義の崩壊』(光文社ペーパーバックス)がベストセラーとなりました。本書では、多くの若者が感じている、仕事がつまらない、将来がどうなるか分からない、といった「閉塞感」の原因を分析しています。
筆者の指摘では、それは「昭和的価値観」の崩壊と関係があります。「昭和的価値観」とは、日本型の雇用慣行(新卒一括採用、終身雇用、年功序列)のもとで、良い大学、良い企業、安定した生活を求める価値観です。しかし、この日本型の雇用慣行は、バブルの終焉などで経済成長が鈍るとともに崩壊しました。
問題は、その崩壊の仕方が、若者を中心とした一定の層に影響を与えている、ということです。例えば、年功序列の上に成果主義が導入された結果、新人は成果を上げても、上にいけるか分からず、上がれたとしても時間がかかる。また、新卒一括採用の制度を残したまま、採用数を絞ったため、多くの非正規雇用者が生み出される。さらには、社会福祉においても今後の若者は以前よりも多くの負担を強いられることとなる。結果、仕事に対する充足感を得られず、将来像を描けないという「閉塞感」が生じてきました。
ではどうすれば良いのでしょうか。筆者は「若者が声をあげ、働く理由を取り戻す」ことを挙げています。今までの仕組みが崩れているからこそ、自分自身で意義を見出せる働き方を求める機会も広がっており、また、若者自身でつながることによって、制度的な改革を求めることもできるでしょう。
「閉塞感」を乗り越えて次へ進みたい人にとって、本書は現在の位置を示してくれます。今何が崩れて、日本社会のどこが変わろうとしているのか、それを知りたい人にとって、入門的な一冊です。
※筆者の城繁幸さんは、POSSEのシンポジウムにもゲストとして参加していただきました。その時の模様はこちら です。
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