前回の報告にあった通り、会議の前半では、これから打ち出していくキャンペーンの骨子について、京都POSSEと合同で考えました。
まず、京都POSSEから最近の相談事例の傾向や問題点を報告してもらい、そこからキャンペーンのコンセプトについて考えていきます。京都POSSEからは、パワー・ハラスメント(パワハラ)、長時間労働、契約時と実態の違いといった3つの問題が出されました。契約時と実態の違いとは、面接で1日何時間と決めたにもかかわらず、実際働いてみると約束よりも長く働かされたなどの事例が挙げられます。これは、子育てや介護との兼ね合いなど家庭生活にも影響をあたえ、安心して働けないという問題につながります。また、パワハラの一つとも考えられる上司が仕事を教えてくれないという問題は、上司自体の忙しさや人不足で新人を育てることができないという側面も考えられます。教えられる側としては、仕事がわからないのに誰も助けてくれず、さらには怒られてしまうといった状態が続くことになります。すると、そうした働き方にはついていけなくなり、辞めざるをえなくなってしまうことも考えられます。職場自体が統治不全に陥っているという指摘もありました。
こうした職場の問題を踏まえ、キャンペーンのコンセプトとして適している事象を考えます。「過労死」や「うつ」は、労働問題を伝える典型的な言葉ですが、今現在、職場の働き方に不安を抱えている・困っている方にアプローチするには、何を打ち出すべきか…。次回も継続して検討することになりました。
ここまでの話で私が一番印象に残ったのは、雑誌『POSSE』14号で紹介されているX社の座談会を引き合いに出した話です。X社においても、すぐに店長にならなければいけないという教育プログラムや拘束される労働時間の長さ、問題のある上司といった問題についていけなくなり、離職を余儀なくされています。これは、会社にとっては、合理的な経営のあり方ということになるでしょう。巧みな社員教育プログラムによって使い勝手の良い社員を大量に生み出し、プログラムについていけない“使えない”社員を自発的に辞めるよう仕向ける、いわば「選別型」のスタイルといえます。サービス残業に文句を言わない、長時間労働でも体を壊さない“優良な”社員を求めているのです。しかし、このような会社のもとで、労働者は安心して働き続けられるでしょうか?
前回の労働相談班の報告にあった変形労働時間制でアルバイトをしているのは私なのですが(笑)、労働法を勉強し始めた私でも、最近まで会社の言いなりになっていました。会社という狭い空間の中にいると、会社の言うことが正しく、逆らうことが悪いような雰囲気にどうしてものみ込まれがちです。会社の要求にNOと言えず痛い目を見ているのに、友人から「その働き方おかしいよ!」と言われても、結局会社の言いなりでした。働いて生活している方々だったらなおさらだと思います。こうした状況を利用し、労働者を酷使し続ける会社は、社会的に責任を問われる必要があります。ひとつひとつの相談を解決していくことで、もっと人間らしくみんなが働ける社会を作りたいと思います。
次に、休憩をはさんだところで、今対応している相談事例の共有を行いました。
介護職の方からの相談で、契約と実態の乖離・賃金未払い・長時間労働・社会保険未加入などが主な相談内容です。
まず、相談者の方は、契約と違う業務を資格もないのにさせられています(法律的には合法なケースでした)。日勤と夜勤を繰り返すような長時間労働もさせられていて、詳細はまだ不明ですが、計算すると最低賃金を下回るような賃金となっていました。もともとこの会社は、届出と違う業務を行っていたり、利用者の命を軽視するようなひどい扱いをしていたりと、かなりずさんな経営をしているといえます。それでもこの会社が存在しているのは、利用者に対して低廉な使用料でサービスを提供しているためです。特別養護老人ホーム(特養)に入るお金がない人や、特養の入所への空き待ちをしている待機者の人など、介護サービスを受けたくても受けられない人が、こうした施設へ流れてきてしまっているのです。必要なケアを十分には行わず、ただ低い使用料金を設定することで利用者を増やし、利益を上げているといえ、まさにこうした会社は「貧困ビジネス」そのものであると思います。
今回の相談内容に戻ると、まず賃金については、適切な手順を踏むことによって、未払い分を取り戻すことができます。その際には、実際に働いていた時間を証明する証拠が必要となります。これは難しいことではなく、毎日の労働時間の記録を手帳などに残しておけばよいのです。これをもとに、本来支払われるべき給与を算出し、会社に請求することができます。また、契約時と実態の乖離については、労働組合で交渉し、解決することもできます。労働組合は、1人では圧倒的に弱い労働者の権利を守るために、賃金や労働時間のトラブルにとどまらない、さまざまな問題について柔軟に交渉することができるという特徴をもちます。
相談者の方は、労働組合に加入し争うことで、会社の責任を追及することを検討しているそうです。POSSEとしても最大限サポートしていきたいと思います。
今回は、キャンペーンの検討を中心に行いましたが、次回は離職形態についての勉強会もあります。盛りだくさんの内容になりそうです!
キャンペーンについても、京都POSSEと協力して、もっともっとおもしろい取り組みを打ち出していきたいです!
(大学2年生、ボランティア参加1年目)
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NPO法人POSSE(ポッセ)は、社会人や学生のボランティアが集まり、年間400件以上の労働相談を受け、解決のアドバイスをしているNPO法人です。また、そうした相談 から見えてきた問題について、例年500人・3000人規模の調査を実施しています。こうした活動を通じて、若者自身が社会のあり方にコミットすることを 目指します。
なお、NPO法人POSSE(ポッセ)では、調査活動や労働相談、セミナーの企画・運営など、キャンペーンを共に推進していくボランティアスタッフを募集しています。自分の興 味に合わせて能力を発揮できます。また、東日本大震災における被災地支援・復興支援ボランティアも募集致します。今回の震災復興に関心を持ち、取り組んで くださる方のご応募をお待ちしています。少しでも興味のある方は、下記の連絡先までご一報下さい。
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代表:今野 晴貴(こんの はるき)
事務局長:川村 遼平(かわむら りょうへい)
所在地:東京都世田谷区北沢4-17-15ローゼンハイム下北沢201号
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