4/28震災・貧困WTの会議報告
今回は、震災・貧困ワーキングチームの会議の様子を紹介します。この班では、生活保護や奨学金等についての生活相談や、被災地へのボランティアの送り出しなどの活動をしています。2週間に1回のペースで開かれる会議では、相談事案の共有・検討や、学習会、セミナーの企画などを行っています。
先日の会議では、「子どもの貧困」についての学習会を行いました。レジュメ担当のボランティアが、文献等からたくさんのデータをまとめてきてくれました。子どもの貧困とは、子ども時代の経済的困難がさまざまなライフチャンスを制約し、結果として人生全体に影響を与えるほどの不利を負ってしまうことをいいます。一方で、それは社会全体で保障すべき子どもの成長・発達を、個々の家庭の責任とするために生じる問題でもあります。日本はOECD諸国のなかでも子どもの貧困率が高く、特に母子世帯などの一人親世帯や、親が有期雇用者である場合などに高い比率となります。近年は子どもの貧困率が上昇しており、親世代の雇用状況の悪化が影響していると考えられます。しかし、この問題に対する公的な支援はほとんどありません。育児や教育に対する社会支出は少なく 、例えば一般政府総支出に占める公財政教育支出の割合(2007年)は、OECD平均13.3%に対し日本は9.4%で、28カ国中27位となっています。(注1)子育て世代に対する公的な保障の少なさから、日本はもともとの所得状態より、課税や社会保障給付で政府が所得の再分配を行った後の方が、子どもの貧困率が高くなる特異な国となっています。
レジュメを一通り読み合わせたあとで、質問や意見交換を行いました。「なぜ有利子の奨学金が多いのか」、「なぜ大学は国公立より私立が圧倒的に多いのか」など、教育に関する質問が相次ぎました。教育分野は橋下大阪市長の改革をめぐる議論のなか で社会的な注目を集めていますが、競争原理の導入や公的支出のさらなる削減によって、貧困家庭の子どもたちがますます不利な状況に追い込まれる ことが懸念されています。例えば、大阪維新の会が主導して作った『府立学校条例』では、「入学を志願する者の数が三年連続して定員に満たない高等学校で、その後も改善する見込みがないと認められるものは、再編整備の対象とする」とされています。しかし、慢性的な定員割れに悩まされている学力底辺校では、交通費さえ払えずに自転車で1時間かけて通学してくるような貧困層の生徒の受け皿となっている実態があり、そういった経済上の課題を抱えた子どもたちは最寄りの高校の統廃合によりますます学校に通うことが困難になると言われています。(注2)そうした子どもたちにどのようにアプローチし、制度の対案を出していくことができるのか、NPOとして取り組むべき課題は大きいと感じました。
休憩をはさんで、直近の生活相談と、最近の社会情勢についての報告がありました。生活相談については、POSSEでも相談が相次いでいる、医療・介護などの福祉分野で働いている人の労働相談と、これもまた相談の多い奨学金の返済に関する相談について、事例を共有しました。情勢報告では、ニュースで取り上げられることの多い「孤独死」や「生活保護の不正受給」について、意見を交換し合いました。厚生労働省の発表によると、2010年度の生活保護の不正受給額は128億7400万円ですが、生活保護の総額が3兆3300万円なので、不正受給の割合はわずか0.4%にすぎません。生活保護を不正に受け取っているのは受給者のほんの一部 なのに、なぜこんなにもメディアでは大きく報道されるのか、視聴者は不正受給についてどのようなイメージを持っているのかなどの話題で盛り上がりました。
最後に、セミナーの運営の確認をして、お開きとなりました。なかなか盛りだくさんな会議でしたが、勉強を行いつつ、実際の支援活動も検討できる、有意義な時間になったと思います。POSSEでは学習会にも力を入れていますが、それは単に法制度や社会問題を勉強するだけでなく、より実践的な活動に役立てるためです。貧困については難しい課題も多いですが、こうした会議でボランティアも少しずつ力をつけていって、厳しい現状を変えていくような取り組みができればと思います。長々と書いてきましたが、興味を持たれた方は、ぜひ一度見学に来てください!
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(注1)文部科学省報道発表『図表でみる教育 OECDインディケータ(2010 年版)』
(Education at a Glance)の概要
(注2)青砥恭「通学の交通費が払えない 変わらない「高校中退と貧困」の構図」
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/1825
貧困・生活困窮問題に取り組むボランティアの力が必要です
POSSEでは、生活相談ボランティアを募集しています。生活困窮や介護保険などの制度利用、奨学金返還の困難といった相談には、全てボランティアで対応しています。知識や経験は一切問いません。社会福祉士や弁護士によるレクチャーや勉強会を定期的に開催しているので、相談対応に必要な法制度などの知識は一から学ぶことができます。
ご関心のある方はお気軽に下記連絡先にお問い合わせください。
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NPO法人POSSE(ポッセ)は、社会人や学生のボランティアが集まり、年間400件以上の労働相談を受け、解決のアドバイスをしているNPO法人です。また、そうした相談から見えてきた問題について、例年500人・3000人規模の調査を実施しています。こうした活動を通じて、若者自身が社会のあり方にコミットすることを目指します。
なお、NPO法人POSSE(ポッセ)では、調査活動や労働相談、セミナーの企画・運営など、キャンペーンを共に推進していくボランティアスタッフを募集しています。自分の興味に合わせて能力を発揮できます。また、東日本大震災における被災地支援・復興支援ボランティアも募集致します。今回の震災復興に関心を持ち、取り組んでくださる方のご応募をお待ちしています。少しでも興味のある方は、下記の連絡先までご一報下さい。
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