POSSEでは労働問題への取り組みの一環として、高校生や大学生を対象に労働法の出張授業を行っています。教材作りや実際の授業も、すべて学生のボランティアスタッフが中心となって行います。ここでは、5月19日に茨城県水戸市、大成女子高等学校で行った出張授業の報告をしたいと思います。
今回の生徒さんは、普通科に通う3年生102名。50分×2コマを使わせてもらい授業をしました。全体で8つのグループに分かれてもらい、スタッフが1人ずつ担当のグループに付いたところで、お互いの自己紹介もしながら前半のグループワークを始めていきます。
今回の授業のテーマは「正社員、非正社員」について。ということで、私が担当したグループでははじめに、「正社員、非正社員」に対してどのようなイメージを持っているのか尋ねてみました。非正社員については、何人かの生徒さんが2007年に放映された派遣社員を題材にしたドラマを思い浮かべて「個性を発揮できる」、「自由に仕事ができる」といったイメージを出してくれた一方で、やはり「給料が少ない」、「収入が不安定」、「労働時間が不定期」など正社員に比べてマイナスのイメージを持っている人の方が多かったように感じます。逆に正社員に対しては、「収入が多い」、「安定している」というイメージを持っている人がほとんどでした。生徒さんが出してくれたイメージをポストイットに記入し模造紙の上に並べ、正社員にはプラス、非正社員にはマイナスのイメージを持っていることを確認したところで、映像を観てもらいます。
今回、観てもらった映像は2つ。1つめは、請負会社から全国の工場に派遣され、過酷な業務に従事するフリーターの姿を追ったドキュメンタリー番組『フリーター漂流』(NHKスペシャル、05年)。2つめは、気象予報大手ウェザーニューズに正社員で就職した、当時25歳の新入社員が、入社後半年で過労自殺した事件(08年)を扱ったニュース番組です。合わせて40分ほどの映像でしたが、どちらも当事者が若者であることもあり、みなさん真剣に観てくれていたように思います。
映像を観終わったところで10分ほど休憩をはさみ、グループワークを再開しました。後半のグループワークでは、映像を観て「正社員、非正社員」のイメージに変化があったかどうか聞いてみました。
まず非正規社員に対しては「誰でもできる仕事」、「雇用が不安定」、「労働法が守られない」、「会社の言うことに逆らえない」、「職場の雰囲気が悪い」、「健康にも悪い」といった感想を出してくれました。映像を通して、非正社員の働き方のイメージがより鮮明になったのだと思います。また、ウェザーニューズ過労自殺事件で扱われている正社員の働き方に対しても、「労働時間が長い」、「会社の言うことに逆らえない」、「労働法が守られない」、「ストレスがたまり、健康にもよくない」といった非正社員の場合と同じような感想が聞かれました。
こうした感想を踏まえて、正社員で就職しながら、長時間労働や上司からのパワーハラスメントの問題を抱えてPOSSEに相談に来られた方の事例をいくつか紹介しました。「ブラック企業」と呼ばれる企業が増加するなかで、今の若者にとって正社員、非正社員どちらで働いても楽ではないという点では大差ないのだということを感じてもらいました。グループワークの最後に、こうした厳しい現状の中、働くうえで身を守るために覚えておいてほしい4つの合言葉を伝えます。
「会社のいうことがすべてではない」
「あきらめない、自分を責めない」
「証拠を残す」
「おかしい・つらいと思ったら専門家に相談する」
生徒さんが将来働くなかで違法行為を経験してしまったとき、その違法行為に気づいたり、違法状態に対処するための解決策や相談窓口があることを思い出したりという形で、今回の授業を役に立ててほしいと思います。
最後にクラス全体に向けて、各グループで行ったグループワークの内容を報告し、授業は終わりです。
今回の授業を通して、自分自身、改めて今の若者にとって正社員、非正社員どちらをとっても厳しい状況だということを痛感しましたし、誤解を恐れずに言えば、今回の生徒さんにとって働くうえでのトラブル(賃金未払いなどの違法行為、長時間労働、メンタルヘルスの問題など)は、ある種不可避のものであるといえるかもしれません。しかし、そうした違法行為に気づく実践的な知識や、相談する場所があることを知っていれば身を守れることが多いのも事実です。だからこそ、労働法教育が必要ですし、高校、大学生の時から、労働法や労働問題に関する知識を学ぶ機会を普及させることが、ますます重要になってきているのではないかと感じました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。労働法の出張授業以外にも、POSSEではボランティアが中心となってさまざまな事業(雑誌編集、セミナーの運営、アンケート調査など)を行っています。今回の記事を読んで関心を持たれた方は、ぜひ一度会議を見学にいらしてください。
(大学2年生、ボランティア経験8ヶ月目)
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NPO法人POSSE(ポッセ)は、社会人や学生のボランティアが集まり、年間400件以上の労働相談を受け、解決のアドバイスをしているNPO法人です。また、そうした相談 から見えてきた問題について、例年500人・3000人規模の調査を実施しています。こうした活動を通じて、若者自身が社会のあり方にコミットすることを 目指します。
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