2015年春、家事代行及び訪問介護を個人宅にて住み込みで行っていた女性Aさん(当時68歳)は、1日24時間労働を1週間続けた末に心臓疾患で亡くなりました。Aさんは、掃除や洗濯、食事の用意、おむつ交換など幅広い業務を休憩時間もなく行っていました。
しかし、国は個人家庭と契約し働く家事労働者には労働基準法や労災保険は適用されないとして、Aさんの死を過労死と認めていません。現行の労働基準法や労災保険は、家事労働者を「適用除外」とし差別しているからです。
Aさんの遺族は、2017年に労災申請をしましたが却下され、2020年3月に国に対して労災認定を求める裁判を提訴しました。しかし、2022年9月29日に出された東京地裁判決は、残念ながら遺族の訴えを退ける内容となりました。家事労働部分は労働時間として認定されず、1日たった4時間半しか働いていないとされ、「過重業務していたとは認められない」と結論付けられました。このままでは、同様の家事労働者の過労死がいつ起きてもおかしくありません。原告は東京高裁へ控訴し、闘いは続いていました。
家事代行女性の労災認めず 女性急死 労働時間に算入せず 東京地裁が請求棄却(東京新聞・2022年9月29日)
その一方、このような理不尽な状況を変えたいと思う、「ケア労働者」(家事、介護、保育等)、過労死遺族、NPO、労働組合、弁護士、ジャーナリスト、研究者、学生などの幅広いネットワークができ、この問題を社会的に訴える様々なアクションを行ってきました。
オンライン署名や厚労省への申し入れ、集会の開催など様々な取り組みをすることで、問題が可視化され、2023年2月に国は約60年ぶりに家事労働者の実態調査を行い、過酷な労働実態が明らかとなりました。そして、2024年6月には、家事労働者に対して労働基準法や労災保険を適用する方向だという国の研究会報告も出ることとなりました。
法が守ってくれない「家事労働者」、77年ぶり差別解消か 労働基準法「除外」から「適用」へ厚労省が大転換(東京新聞・2024年6月28日)
控訴審判決は、今年9月19日(木)14時から東京高裁101号法廷の予定です。1947年に現行の労働基準法が施行されて以降、77年間、家事労働者を労基法・労災保険から除外し差別してきた状況が、社会的な取り組みによって変化しようとしています。
今回のイベントでは、判決に向けて裁判を闘う遺族、弁護士、支援者等、それぞれの視点から問題や想い、意義を報告していきます。その後、それを踏まえた今後の展望を皆で検討していきたいと思います。
この問題に関心のあるケア労働者の方、過労死遺族の方、学生の方など、多くの方にぜひ参加いただければ幸いです。zoomでのオンライン参加も可能です。
■参加方法
参加申し込みは以下のURLからお願いします。
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdx4D60hY8Mdfnaq3SuUKQljziSYgmPIxFC_iJ8ToW8v_89Hw/viewform
■日時
2024年8月11日(日)14:00~16:15(プログラム変更により終了時間が少し遅れる可能性があります)
■会場
・経堂地区会館第3会議室
・東京都世田谷区経堂3丁目37番13号(経堂駅から徒歩7〜8分ほど)
※zoomでのオンライン参加も可能です。
■プログラム
14:00 開会あいさつ
弁護団(明石順平弁護士・指宿昭一弁護士)から家事労働者過労死裁判の概要とポイント
裁判を闘う遺族の想い
「ケア労働者」から現場の労働実態
支援者の取り組み
本裁判の社会的意義(竹信三恵子さん)
15:10 質疑/休憩
15:30 パネルディスカッション
16:00 閉会あいさつ。支援・寄付の呼びかけなど。
16:15 終了
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