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NPO法人POSSE(ポッセ) blog

11月8日 東京地裁で、新宿区生活保護訴訟の判決があります。



11月8日東京地裁で、新宿区生活保護訴訟の判決があります


NPO法人POSSE(ポッセ)では裁判支援の取り組みとして裁判の傍聴させていただいています。 ここでは前回6月21日の結審を傍聴した感想を中心に、この事案の問題点や意義についても整理したいと思います。

【事案の概要】
原告Yさんは上野での路上生活を経て葛飾の自立支援センターに住みながら2008年3/24~4/28の間、1日に10~12時間スーパーで経理の仕事をしていました。10人部屋で各々の出勤時間が異なり十分睡眠がとれないこともあって、4/29に風邪をひいたため仕事を休もうとしたところ会社は出勤するよう指示します。しかしYさんは仕事に行かず、その日はサウナに外泊しました。無断外泊したことになり5/3に退寮し、5日から新宿で路上生活をはじめます。その後ハローワークに行くも、「住所がないと職の斡旋をできない」といわれました。5/31、チラシをきっかけに、路上生活者の支援団体である「ホームレス総合相談ネットワーク」が主催した法律相談会へYさんは参加します。支援団体のスタッフが同行して、6/2に新宿区に生活保護申請するも、「他法他施策が優先」、「働く努力をしろ」などと対応されました。その後の申請にも「うちではホームレスは自立に行ってもらっている」と連呼され、6/13、保護申請を却下されました。

この事案の問題点としては主に以下の2点があげられています。 まず申請を受理せず、自立支援施設に誘導し、たとえ申請を受理したとしてもアパートに住ませないようにした新宿区の対応は、保護は自宅またはアパートで受けるという原則(生活保護法30条)に反しています。こうすることでケースワーカーが受給者を訪問する手間を省くことができます。そして2点目の問題点は、ホームレスであることを理由にした申請の却下は生活保護法1条や同2条で定められる無差別平等原則に反したものだということです。「ホームレスは自立に行ってもらっている」といった対応で明らかなように、ホームレスは生活保護を受けられず、そうでない人は受けられるというのは生存権の具体的保障という制度の理念とはかけ離れたものです。実際、生活保護は、住所がない・若い・収入がある、人でも生活に困ったら申請、受給することができます。 
詳しい法的論点、概要については以前の記事をご覧ください。
    →【3月2日に新宿七夕訴訟の傍聴に行きました!】
http://blog.goo.ne.jp/posse_blog/e/62744932896bdae8084d212a532fa31c

6月21日の結審では、原告の弁護士の方が傍聴に来た一人ひとりにその日に陳述する内容が書かれたプリントを配布していて、いかにこの裁判が持つ社会的な意義を重視しているかがわかりました。
  その意見陳述で印象的だったのは、この訴訟が「特別扱いを求めるものではない」ということを強調されていた点です。実際、新宿区で申請が却下されたのち8/25に板橋区で申請した結果、「緊急性が高い」ということでその日うちに保護が決定しました。稼働能力活用を強調することなく施設入所を強要することもなく居宅において保護をかけることは他の福祉事務所では当時、普通に行われていたことです。
   傍聴人の数は平日の午後ということもあり少なく、より多くの方の関心が払われる必要があると感じました。
   結審の後には、弁護士会館で報告集会があり結審の報告に続いて持たれた質疑応答では、参加者から「他法他施策とはなにか?」といった質問に弁護団がわかりやすく説明していました。

   震災後、被災地で義捐金や東電からの過払い補償金を収入とみなし、生活保護給付の基準となる最低生活費を超えているとして、多くの世帯で保護が打ち切られました。また震災前から、いわゆる「水際作戦」のように申請に来た人を窓口で追い返す福祉事務所が多くあることも分かっています。このような状況の中で今回の裁判が持つ社会的な意義について以下の点が挙げられています。まず何より、本来生活保護を受けるべき人にきちんと保護費を支給することは、生存権を形骸化させないために重要です。さらに、労働問題と貧困問題に焦点を当てて見ようと思います。まず失業している人の生活が守られないと、どんな仕事でも職にありつこう、しがみつこうと考えるようになるようになり、原発労働や今日問題となっているパワーハラスメントにみられるような劣悪な労働環境に耐えざるを得ない状況が作り出されます。またこのような失業者は過剰人口として現在職に就いている人に対して、「代わりはいくらでもいる」という圧力として作用し、職場の劣悪な環境にますます声を上げられないような状況を生み出します。社会全体の雇用条件の向上のためにも、「ちゃんと失業できる」社会を作る必要があり、そのためにも失業した人の生活を守る仕組みが最低限、本来の役割を果たす必要があります。本事案では新宿区の申請却下の違法性を適切に認定することが求められます。
  
   本事案は「ふつうのこと」を求めている裁判です。それだけに多くの人が傍聴に来て、社会の関心の大きさを裁判官などに示すことが重要です。皆さんもぜひ11月8日の16時30分から東京地裁103号法廷に足を運んでみてください。



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