11/8(火)に東京地裁であった新宿区生活保護訴訟の判決を傍聴してきました。ここではその報告をしたいと思います。この裁判の概要については以前の記事をご覧ください。
http://blog.goo.ne.jp/posse_blog/e/31ac10b8811a724bdfdad6df206bc39c
被告である新宿区側担当者の姿が見えない中、判決の主文が裁判長から言い渡されました。
判決は原告の全面勝訴といえるもので、新宿区の「生活保護申請却下の取り消し」と申請当日から板橋区で申請が開始されるまでの「居宅での保護の義務付け」を求めました。
平日の午後であるのに、傍聴席は満席に近く、報道機関も見られました。
判決に引き続いて行われた、弁護士会館での記者会見を兼ねた報告集会では、弁護団により判決の解説が行われました。判決主文については、「原告の全面勝訴といえるもので、特に居宅での保護義務付けは今回が初ではないか」とのことでした。また判決文にも触れて、「いくら法といえども不可能を強いることはできないとあり、格調高い生活保護の理念に基づいた判決で、裁判官の法感覚と想像力を評価する」と述べられていました。
弁護団長である宇都宮健児弁護士からもお話があり、「今回の判決は原告の方一人の問題ではなく、同じように苦しむ多くの方が生存権を堂々と行使することを促す大きな意味があり、特に震災後被災地で保護が打ち切りにされることが問題になっている今の時点で出された意味は大きい」とおっしゃっていました。しかし一方で、報道等において生活保護受給者の増加を批判的に捉える風潮があることについて憂慮されていました。
原告の方もあいさつされ、「行政に勝てるとは思っていなかった」とおっしゃっていました。
報告会で印象的だったのは、弁護団による準備書面の数が他の裁判よりかなり多かったというお話で、それ程までに今回の事案の持つ社会的な意義を重視されていると感じました。
3年にわたる詳細な審理を経たこの裁判が問うたのはあくまで、全ての人に平等に生存権を保障する、という生活保護の理念に乗っ取った当たり前のことでした。しかし、実際には今回の新宿区の対応や、被災地の福祉事務所でも見られるようにそれが当たり前ではない状況にあります。その中での今回の判決が持つ社会的な意味は大きいと思います。
今回の裁判を一つの事案に終わらせず、同じように苦しむ多くの人を勇気づけ、生活保護を取り巻く現状を改善するためには、やはり、現実にある貧困問題や労働問題にしっかりと向き合っていく必要があると改めて感じました。
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