この実現のために経団連が打ち出しているのが、次の2つのアイディア、「トライアル雇用制度の活用」そして「紹介予定派遣制度の見直し」だ。
「それって正社員になれる制度でしょ?」と思っている人もいるかもしれない。しかし、実際の目的はそんなものではない。一度雇ってみて、使えない人材だったら簡単にクビを切ってOKという制度なのだ。
解説すると、「トライアル雇用」制度は、まず3ヶ月程度の期間を定めて労働者を雇うというもの。期限がきたら、一度契約が打ち切られる。その後、新たに正社員として契約するかどうかはその期間の働きぶり次第。企業としては、労働者を「トライアル」させて、「使えるか使えないか」をじっくり選別してから改めて採用できるというわけ。
そして今回の提言では、この制度の期間を3ヶ月から1年に延ばすことが提案されている。
次に「紹介予定派遣制度」。「派遣社員から正社員になれる!」とのうたい文句で求人広告でよく目にするアレだ。しかし実際に正社員になれる人は多くない。そもそも裏をかえせば、労働者を一定期間「派遣社員」として採用しておきながら、その後正式に採用するかどうかは企業の自由、クビ切り放題です、という制度にほかならない。
経団連はこちらも、派遣期間を半年から1年に引き延ばすことを提案している。
労働者のクビ切りは、法的には厳格な条件が必要とされ、そうカンタンにはできないことになっている。ところが、この二つの制度は、解雇を合法化して法律を骨抜きにしてしまうものだ。
ところで、去年フランスで起きた、CPEという法案に対する大規模ストライキを覚えている人は多いだろう。
多くの大学や高校、交通機関が占拠・閉鎖状態。路上に300万人の若者が溢れかえり、法案はついには撤回された。このCPEとは、新卒で正規として採用された若者を、2年間は自由に解雇してOKという内容。どこかで聞いたような話だ。
そう、トライアル雇用、そして紹介予定派遣は、フランスで若者の大ストライキを巻き起こしたCPEの日本版とも言える政策なのだ。
それが、日本ではもっとしたたかに、あまり目に見えない形で進行しているわけだ。
私自身、以前「インターンシップ」を理由に賃金を支払ってもらえない、という内容の相談を受けたことがある。インターンシップといえば、学生が企業を知るために、一定期間無償で働くもの、と普通は思うだろう。
その制度自体の是非もあるにせよ、実はこの相談者は、既に卒業して生計を自ら立てている労働者だったのだ。それでもその企業は、インターンシップだから正式な契約はしていないと言い、相手を不安定な状況におきながらじっくりと「選別」し、しかもその間の賃金は払わないというのだ。
若者の「意欲と能力」を見極めて、カンタンにクビが切れる制度が、日本ではどんどん蔓延しつつある。フランスでは若者が集まって、自分たちの意思を貫き通し、実際に法案を撤回に追い込んだ。…日本の若者はこれでいいのだろうか?
(POSSE事務局)
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