NPO法人POSSE(ポッセ) blog

労働相談の報告(2010年7~9月)  

●労働相談の概況                                
この間の労働相談は7月28件、8月26件、9月29件と、3か月間で合計83件にのぼりました。
相談内容としては、賃金未払い、解雇、パワー・ハラスメント(以下、「パワハラ」という。)がそれぞれ29件、23件、21件と大半を占めました。(1件の相談のうちに複数の問題を含む場合は重複して計上。)賃金未払いや解雇は問題が明らかになりやすいことが相談の多さにつながっていると考えられます。パワハラに関する相談の多さは、前季(4月から6月まで)から継続しての特徴であり、NPO法人POSSE(ポッセ)でも大きな課題のひとつとして取り組んでいます。
相談者の雇用形態としては、約半数(不明分を除くと実に7割)が正社員からの相談でした。
(詳細については、別添「2010年7月~9月労働相談状況」(PDF形式)参照)

●傾向の分析と今後の活動方針                                
これまでもNPO法人POSSE(ポッセ)ではパワハラと退職強要の問題に特に力を入れてきました。問題をクローズアップさせるために「若者のキャリアを守ろうキャンペーン」を展開。相談においても、パワハラによるうつを個人の問題ではなく労災として扱い、会社としての責任を追及するという、いわば労働問題としての正攻法をとってきました。

しかし、これらの取組を進めるなかで新たな課題も現れてきました。
それは、会社に対する憤りから会社と争い、補償を勝ち取ることができる相談者がいる一方で、会社に対して自分の意見・権利を主張することもままならないほどに、深刻なダメージを受けている相談者が多くいることです。労働契約という民事の領域において自分の権利を主張することができない状態は、いわば「民事的に殺されている」状態とも捉えられます。
「民事的に殺された」相談者に対しては、まず回復を促し、社会復帰できるようにサポートしていくエンパワーの空間が必要であることが改めて認識されました。

たとえば、日常的に13、14時間の長時間労働をしていた男性からの相談をみてみましょう。(個人の特定を避けるために、多少加工しております。)
彼からの相談の主な内容は休職についてとそれに伴う健康保険(傷病手当金)の受給についてでした。事情を詳しく聞いてみると、繁忙期には、連日終電で帰宅し、家でも持ち帰ってきた仕事をこなすという毎日を送っており、当時の睡眠時間は平均3~4時間程度でした。その結果、体調を崩し1週間ほど休んだところ、「休む人に仕事は任せられない」と皆の前で言われ、雑用ばかりを押し付けられるというパワハラを受けます。うつになり会社に行けなくなった彼は、当初は有給休暇により休んでいましたが、休職を考えはじめたとのことでした。
本来であれば、会社の休職制度の利用はもちろんですが、それ以前に、長時間労働による労災を申請し、(彼の場合、厚労省が定める過労死ライン(脳・心臓疾患の新認定基準:発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間)を超えていました。)会社の職場環境配慮義務違反を追及、会社からの補償と職場改善を求めることができる相談です。
しかし、彼の場合、すでにうつ状態にあり、会社に対して責任追及するだけの力さえも奪われている状態でした。このような場合、まずは、医療機関を受診し、会社から距離をおくことが急務です。そのため、会社に休職制度があれば利用しつつ、とにもかくにも健康保険組合から傷病手当金を受給し、一定の収入を確保したうえで療養に専念することをすすめ、その具体的な申請方法を伝えるにとどまりました。

たしかに、このままでは会社側は一切責任を負うことなく、職場の労働環境や指揮命令のあり方は等閑視されたままとなります。彼の同僚が同じ境遇に陥らないとも限りません。団体交渉等を通じて会社の責任を追及し、職場改善を促し、社会的規範をつくっていくことは依然重要な課題です。
しかし、「民事的に殺された」相談者をエンパワーし、社会復帰できるようにサポートしていくことも、現実に大きな課題となっているのです。単に職場に戻るというだけではなく、また同じような目にあっても今度は自分の身を守り闘える、生き生きと働ける職場をつくっていける労働者として社会に戻れるようサポートしていく――エンパワーメントの空間をつくっていくことは、今後NPO法人POSSE(ポッセ)の活動の大きな軸のひとつになると考えています。


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NPO法人POSSE(ポッセ)は、社会人や学生のボランティアが集まり、年間400件以上の労働相談を受け、解決のアドバイスをしているNPO法人です。また、そうした相談 から見えてきた問題について、例年500人・3000人規模の調査を実施しています。こうした活動を通じて、若者自身が社会のあり方にコミットすることを 目指します。

なお、NPO法人POSSE(ポッセ)では、調査活動や労働相談、セミナーの企画・運営など、キャンペーンを共に推進していくボランティアスタッフを募集しています。自分の興 味に合わせて能力を発揮できます。また、東日本大震災における被災地支援・復興支援ボランティアも募集致します。今回の震災復興に関心を持ち、取り組んで くださる方のご応募をお待ちしています。少しでも興味のある方は、下記の連絡先までご一報下さい。
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代表:今野 晴貴(こんの はるき)
事務局長:川村 遼平(かわむら りょうへい)
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