NPO法人POSSE(ポッセ) blog

2011年労働相談状況報告


○2011年(1月~12月)の労働相談件数は、年間総計で364件にのぼりました。
こちらより「年間の労働相談状況(2011年)」をご覧いただけます。(PDF形式)

○相談内容の傾向
 相談内容をみると、パワーハラスメント(以下、「パワハラ」と表記。)に関する相談が最も多く、全体の約3割(32.2%)を占めています。次に、賃金未払いに関する相談が28.0%、退職勧奨に関する相談が21.5%、解雇に関する相談が16.8%と続いています。(1件の相談のうちに複数の問題を含む場合は重複して計上しています。)特に退職勧奨に関する相談の3分の1、解雇に関する相談の3割弱が同時にパワハラに関するトラブルを含んでおり、パワハラを受けた結果辞めるに至ってしまったケース、辞めさせるにあたってパワハラを行なっているケースなど、注目すべき点としてあげられます。また、解雇の相談のうち約4分の1が賃金未払いを含んでいました。

○相談者の傾向(雇用形態)
 相談者の傾向をみると、正社員からの相談が全体の約半数にのぼり、派遣社員や契約社員、パート・アルバイトなどの非正規社員の約2倍の相談が寄せられています。もちろん、労働力人口全体における人数が異なるため、相談件数だけの単純な比較には注意が必要ですが、25歳未満の正社員及び派遣社員(年齢層を問わず)からの相談は、格段に多い傾向にあります。(これは、POSSEが若者の労働問題・相談受付に特に力を入れていることもありますが、)それだけ若年正社員及び非正規労働者のおかれている労働環境が厳しいものであることがうかがえます。

 この間、内閣府の「雇用戦略対話」のほか、厚生労働省の審議会や研究会等からも有期雇用法制に関する答申や「多様な形態による正社員」研究会報告、「望ましい働き方」ビジョンの策定など正規雇用・非正規雇用に関する発表が相次いで出されています。特に「高卒の3人に2人、大卒の2人に1人が教育から雇用へ円滑に接続できていない(「非安定就労」)」という状況はインパクトを与えました。正規/非正規の二項対立や「多様化」という表面上の議論ではなく、その働き方/働かせ方の実態をもとにした、中身の議論が必要だといえるでしょう。
(参考:「多様な正社員」実現のための二つの条件:朝日新聞「働く」NPO法人POSSE代表・今野晴貴インタビュー補足)

○相談者の傾向(産業・業種)
 次に、産業分類別にみますと、製造業(12.4%)、医療・福祉業(10.0%)、卸売・小売業(9.7%)、情報通信業(8.2%)に従事する労働者からの相談が多くあります。ここで、特に注目すべきは情報通信業からの相談件数の多さではないでしょうか。産業別の労働人口を考慮に入れると、他の産業の約3倍の頻度で相談がきている計算になります。
 「ブラック企業」はもはやどの産業・業種にもみられることですが、特に新興の企業や業界においては、そもそも労働法や「労務管理」を知らない「経営者」が多く、また労働組合や外部機関などとの交渉・監視を通じて職場秩序が形成されるという経験がないことも要因としてあるように思えます。

○相談者の傾向(勤続年数)
 勤続年数別では、1年未満が約3割(28.9%)、1年以上3年未満が約2割(18.3%)と、就職して早い段階でトラブルにあうことが多い状況がうかがえます。そして、相談者の勤務状況や職場の様子を詳細にきいていくと、様々な違法状態や過重労働など、ここでは誰であっても長くは働けないなと感じる職場であることが多くあります。
 勤続年数の短さは労働者側の問題として捉えられがちですが、相談者本人に原因があるというよりは、職場環境そのものが劣悪であることや、違法状態が蔓延化していること、企業の社員を「使い捨て」にする姿勢(その結果としての劣悪な職場環境)などによるところがあるといえます。

○「職場うつ」の問題
 この間、POSSEでは「職場うつ」の問題を中心的に扱い、『POSSE』14号を中心に雑誌等でも取り上げてきました。
 「職場うつ」の原因としては、長時間労働やパワハラが主なものと考えられ、長時間労働に関する相談は全体の約1割、パワハラに関するものは約3割ありました。うつ病の発症・罹患状況に関する年間を通じた統計は十分にはありませんが、統計のある部分に関して言えば、パワハラあるいは長時間労働に関する相談者のうち、どちらも約半数の方がうつ病・うつ状態と診断されたかその可能性がある状況で、これは非常に深刻な事態だといえます。

 こうした状況に国も危機感をいだき、厚生労働省は「心理的負荷による精神障害の認定基準」の改訂や「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」の開催、「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」の取りまとめなどを行なっています。
 一度うつ病を患ってしまうと、仕事の面だけでなく、家庭生活や人生そのものにも長期間、大きな影響を及ぼしてしまいます。そのため、何よりも未然防止となるべく早い段階での対応が重要ですが、本人が気づきづらい、言い出しづらい、解決策が見出しづらいなど様々な難しさがあるのも事実です。なるべく早い段階で相談できる体制づくりと、様々な制度を利用しながらの対処や職場環境の改善のためのサポートが求められています。POSSEとしても今ある取り組みの継続・拡充していくとともに、今ある制度を利用するだけでなく、その利用と問題解決をとおして、よりよい働き方、社会のあり方を模索していきたいと思います。
 POSSEでは「職場うつ」対策のための冊子を作成しております。こちらよりご覧ください。

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NPO法人POSSE(ポッセ)は、社会人や学生のボランティアが集まり、年間400件以上の労働相談を受け、解決のアドバイスをしているNPO法人です。また、そうした相談 から見えてきた問題について、例年500人・3000人規模の調査を実施しています。こうした活動を通じて、若者自身が社会のあり方にコミットすることを 目指します。

なお、NPO法人POSSE(ポッセ)では、調査活動や労働相談、セミナーの企画・運営など、キャンペーンを共に推進していくボランティアスタッフを募集しています。自分の興 味に合わせて能力を発揮できます。また、東日本大震災における被災地支援・復興支援ボランティアも募集致します。今回の震災復興に関心を持ち、取り組んで くださる方のご応募をお待ちしています。少しでも興味のある方は、下記の連絡先までご一報下さい。
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代表:今野 晴貴(こんの はるき)
事務局長:川村 遼平(かわむら りょうへい)
所在地:東京都世田谷区北沢4-17-15ローゼンハイム下北沢201号
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