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NPO法人POSSE(ポッセ) blog

都の「公設派遣村」を取材!その評価と報道されない宿泊所の実態

(※写真はオリンピックセンターでの「公設派遣村」利用者へのインタビュー風景)

2008年末、東京・日比谷公園に出現し、大きな話題となった「年越し派遣村」。民主党への政権交代を受け、2010年への年越しは「公設派遣村」として、国や自治体が主催側に回り実施されました。

東京都では、2009年12月28日から1月4日朝にかけて、渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターを利用して「派遣村」を開設しました。『POSSE』編集部では、この「公設派遣村」を取材し、入所者にインタビューを行いました。ここでは、簡単に今回の「派遣村」の経緯と入所者の声を報告したいと思います。

一年前は野党として「派遣村」を政治災害だといって批判した民主党。今年は与党として、「派遣村を繰り返さない」(鳩山首相)ということで、緊急雇用対策の一環として、各自治体に役所が閉庁する年末年始も失業者対策を実施するよう求めました。

それを受けて、年末年始、全国各地の自治体で生活相談や就職相談が行われ、なかでも、東京都では、運営費を国が負担し、都が主体となって宿泊施設を提供、食事の提供や生活相談も行われました。利用できるのは、都内の路上やネットカフェなどで生活し、ハローワークで求職登録をしている人に限定され、実際に入所したのは、ピークとなった1月3日で833人。私たちが施設内に入って確認した限りでは、入所者の多くは中高年の男性でしたが、一方で若い男性も多く、女性の入所者の姿も見られました。
(※写真は4日まで「派遣村」となっていたオリンピックセンターの個室)



32歳の入所者、Tさん(男性)に話を聞きました。

「6年前まで正社員として働いていましたが、人員削減のあおりを受け退職を余儀なくされました。その後、派遣で働いていましたが、1年ほど前に「派遣切り」に会い、職を失いました。その後、雇用保険や日雇いの仕事などによって生活していましたが、秋にはお金がなくなり、路上で生活するほかありませんでした。ボランティアの人が配っているビラでこの派遣村のことを知りここに来ました。外は本当に寒いので、暖かいところにいられるだけでもありがたい。食事も出て本当に感謝しています。ただ(派遣村の終わる)4日以降のことが不安で夜も寝られません。ここで生活相談を受けて生活保護のことを知ったので、派遣村を出たら申請に行くつもりです。」(1月1日時点でのインタビュー)
都は、4日以降も住む場所が決まらない入所者を、都営の日雇い労働者向け宿泊施設に受け入れることを決定し、2週間の延長を決定、18日が施設の使用期限とされています。都によると、新たな就労先を見つけて退所した人は1割程度だとされます。

このような形で行政が主体となって「公設派遣村」が行われたことは、1年前と比べて大きな前進といってよいでしょう。実際に800人以上の方が利用したことはこうした取り組みが今後も必要であることを示しています。

一方で、課題も残ります。

まずは、「派遣村」の情報がそれを必要とされる人にどれだけ行き渡っていたかという問題です。派遣村で出会った入所者の半数以上が、昨年末に年越し派遣村に取り組んだ労組や市民団体のメンバーで構成する「年越し派遣村が必要ないワンストップ・サービスをつくる会」が配ったチラシで「派遣村」のことを知ったと答えており、行政側がどれだけ周知する努力を行ったかには疑問が残ります。

また、本来こうした施策は年末年始に限らず必要なはずです。1年前に市民団体が行った「派遣村」の力によって国の貧困政策の不十分さが浮き彫りになり今回の「公設派遣村」に結びつきましたが、これを一時的なものでなく、年間を通じたものにしていくことが求められます。ハローワークで求職登録をしている人に限定されあくまで求職者に対する対策とされたことも課題のひとつだといえます。

さらに、今回の「公設派遣村」では、都の対応の悪さもあり、現場でも多くのトラブルが生じました。上記のインタビューにも見られるように不安になっている入所者に対し、閉所間際となった3日になってもその後の説明がなされないなど、入所者からは不満の声が多く聞かれました。

あまり報道されていませんが、5日以降宿泊先となった都の貧困者対策用の宿泊施設「なぎさ寮」(大田区)では数十人が大部屋に一緒に宿泊するような状況にあり、とてもよい住環境とはいえません。実際に現金の盗難も 発生しており、仕事や住居を探すために現金が支給された後行方不明者が続発したことを入所者のモラルの問題とする報道が流れていますが、その背景にこうした状況があることは押さえておく必要があります。

なお、今回の「派遣村」でも、1年前と同様、市民団体が大きな役割を果たしました。上記の「ワンストップ・サービスをつくる会」は「公設派遣村」の期間中、施設の外で独自に生活相談を行い、325人の生活保護申請をファクスで送ったとされます。「公設派遣村」が実現したことも、こうした市民の運動の行政に対する働きかけがあったからであり、これだけ多くの人が「派遣村」のことを知って利用することができたのもこうした団体の活動があったからだといえます。
(※写真は年末年始に生活相談を受け付けるボランティア。都の不十分な対策をカバーするはずが、オリンピックセンター敷地内から取材陣以外は都の職員によって強引に追い出されてしまった。仕方なくオリンピックセンター前の路上で受け付けているところだ。この後、この場所からも追い出されてしまうことになる)

今月発行予定の『POSSE』vol.6では、「ちゃんとやれ!民主党」という特集を組み、民主党の雇用政策や福祉政策を論じていきます。
今回の「公設派遣村」のさらに詳しい取材も紹介していきます。乞うご期待ください!



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