コロナ禍で浮き彫りになった様々な社会問題。「コロナ危機のなかでこそ、学ぼう」をテーマに社会問題について学び考える機会としてPOSSEオンラインアカデミーを定期的に開催している。
3月7日に開催された今回は「技能実習生への人権侵害に”加担する”SDGs企業ー労働運動が変えるサプライチェーンー」と題し、奴隷制度とも評される技能実習生の人権侵害の背後にあるSDGs企業の存在、そして労働運動を通してどのように変革を目指すべきかについて総合サポートユニオン共同代表の青木耕太郎さんが講演した。
青木さんの講演
カンボジア人技能実習生の強制帰国事件を主に挙げながら技能実習生の人権侵害の問題、その背景、そしてそれに対しどう闘っていくべきかを語った。
事件の概要
この事件は2016年トオカツフーズ で食品製造をしていたカンボジア技能実習生が突然パスポートと在留カードを取り上げられ成田空港へ連行、強制帰国させられたものである。
問題が指摘されている雇用主のトオカツフーズはスターバックス・ファミリーマートなどSDGsやCSRを謳う大手企業の取引先でもある。しかし雇用主および取引先の会社側は関与を認めないまたは無視をし、責任逃れが続いている。これに対しPOSSEでは外国人労働者へのチラシ配布や会社側へのデモ、スタバアクションなどを行い闘っている。
今回の事件の概要記事はこちら→外国人実習生の人権侵害
スタバアクションについての記事はこちら→「Z世代」がスターバックスを告発
青木さんは今回のように相談窓口と繋がり闘うことができる状況が非常にレアなケースであると語る。このような人権侵害の問題は見えていないだけで数多くあり、こうして声を挙げて問題を可視化できたことに意義があるのだ。
問題の根底、実習生の現状
外国人技能実習生数は東南アジアを中心に現在約40万人に達し、彼らの多くは衣食住に関わるエッセンシャルな産業に従事し日本社会を支える不可欠な労働力になっている。にも関わらず彼らの人権は労働現場で蹂躙されている。
青木さんは衣食住それぞれの産業での実習生導入の背景を事例を交えながら説明した。
本来技能実習制度とは開発途上国の人材に母国では習得困難な技能を習得してもらうための制度であるが、各産業への技能実習生の導入の背景は本来の目的と大きく異なっている。
共通する導入の背景としては低収入などから労働不足に悩まされ、低賃金で縛り付けられる都合のいい労働力として技能実習生が取り入れられた。その労働環境の実態は低賃金に長時間労働、賃金未払い、パワハラなど無法地帯といっても過言ではない。
このような人権侵害とどう闘うべきか、一つ目に雇い主だけでなく力のある元請や親会社など背景資本の責任を追求すること。二つ目に人権侵害の共犯関係と言わざるをえない監理団体などと闘い奴隷制度と言われる外国人技能実習制度の仕組みそのものと闘うこと。三つ目に話し合いでの解決は難しく、アクションをすることで人権侵害の事実を可視化、社会化していくこと。4つ目にこの問題は国際的な問題であり、国際NGOや現地メディアなどグローバルに連帯して闘うこと。これら四つの重要な点を挙げた。
カンボジアの技能実習生の事件からもわかるように、SDGsやCSRを謳うスターバックスやファミリーマートが人権侵害に加担するという矛盾が起きている。これに対し青木さんはSDGsやCSRは基本的に守られないと指摘する。元々企業がこれらに取り組み始めたのは人権侵害・環境破壊などへの国際NGOの運動、それに喚起された国際世論の批判によるもの。そのような世論の風潮を背景に企業はSDGsやCSRを一種の企業イメージ向上の広告として利用しているのだ。企業にちゃんと実行させるには企業が行う矛盾にきちんと闘っていく必要がある。
企業に外国人労働者の人権を守らせるために
青木さんは企業の人権侵害と闘う社会運動・キャンペーンの必要性を説く。
SNSや記者会見などで問題を発信し可視化し、関心を持った人たちで協力し合えるよう組織化していき、そして行政への申し入れやデモなどを通して問題解決を迫るアクションをし大きな運動にしていくことが重要なのだ。取り組む人が少ない故に問題はなくならないままであり運動に参加する人を増やしていくことが重要である、よりたくさんの人に人権侵害との闘いに加わってほしいと青木さんは締めくくった。
最後に
このイベントを通し外国人労働者の方々が相談窓口にアクセスする難しさ、SDGsやCSRを中身が伴わないまま企業のイメージ向上のために利用される懸念などの問題を強く認識した。これらの問題を可視化し人権侵害という大きな問題に闘っていくには組織化し、責任追及のためにアクションを起こし根本的な解決を目指す必要がある。
筆者はこの事件を知るまでSDGsなどを謳う企業に良い印象を抱いてしまっていた。企業が事業活動の上で持続可能性の視点を持つことは重要であると思うと同時に、SDGsが名ばかりでトレンド化してしまう恐れもある。SDGsを謳う企業が淘汰されていくためにも責任追及活動の必要性を感じた。
問題の存在を知り考えを深めること、それもオンラインアカデミーから得られる大事なことの一つ。しかしそれで終えるのではなく、輪を広げ活動に繋げることがこのオンラインアカデミーの大きな目的である。今回問題認識を通して何か行動に移したいと感じた方はぜひPOSSEの活動に参加し一緒にアクションを起こしていってほしい。
POSSE学生ボランティア 渡辺葉奈
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アーカイブ映像【SDGs】知られざる外国人技能実習生の「人権侵害」 SDGs企業の社会的責任とは?【#スタバアクション0314】
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