「生活保護相談ホットライン」を開催しました
ここでは、5月9日(水)に京都POSSEで、13日(日)に東京にて開催した「生活保護相談ホットライン」についての報告をしたいと思います。(私は東京で参加したので、以下では基本的に東京で開催したホットラインの報告がメインになります。)
POSSEの貧困問題への取り組みの一環として行っている「生活保護相談ホットライン」(以下、ホットライン)では、生活保護に関するトラブルを抱えている方に対して、POSSEの生活相談担当のスタッフが電話で無料相談を受け付けます。第一回目の開催となった今回に続き、今後は定期的に開催していくことを予定しています。
この日、東京で行ったホットラインには、4時間で5件の相談が寄せられました。また、京都POSSEで5月9日(水)に開催した際にも、9件の相談があり、合わせて14件の相談を受けることができました。14件という当初の予想を超える多くの相談が寄せられた背景として、今回は、各社の新聞の地方版にてホットライン開催についての記事が掲載され反響を呼んだことが大きかったと思われます。
寄せられた相談のなかには、「失業してしまい収入がなく所持金も残りわずかだが、どうすればよいか?」といった、生活保護をこれから受給する必要があるものや、「保護を受給しているが、ケースワーカーから嫌がらせを受けている。何とか止めさせられないか?」といった保護受給中のトラブルを抱えたものがありました。
今回のホットラインに寄せられた計14件の相談のうち保護申請時の不安やトラブルに関するものが5件であったのに対し、ケースワーカーからの嫌がらせやパワーハラスメント(以下、パワハラ)に関するものが同じく5件ほどと、これまでの生活相談の中心だった保護受給前のものだけでなく、保護受給中のトラブルがかなり多かった点が印象的でした。
生活保護受給前の相談については、地域的に可能な限り、後日POSSEのスタッフが生活保護の申請に同行して、保護を開始させるといった対応をします。実際に、今回のホットラインに寄せられた相談のなかには、後日スタッフも同行して保護の申請を行うことができたものがあります。
それに対して保護受給中のトラブルについては、当該ケースワーカーと交渉するといった対応が考えられます。もちろん、受給者本人が交渉できる場合はよいのですが、例えば受給者が精神疾患を患っていてケースワーカーと交渉するのが難しい場合などに、支援者が代理で行った場合、はたして本当にトラブルが無くなったのかどうか確認するのは難しいのが現状です。こういった意味では、POSSEとして保護受給中のトラブルに確実に対応しきれているとは言い難いでしょう。しかし、最近話題となっている京都府宇治市での誓約書問題(※1)にみられるように、このようなトラブルを抱えている受給者の方は少なくはないと考えられます。また、こうした嫌がらせやパワハラを受けることを苦にして、本来必要な保護の打ち切りを受け入れてしまったり、これから保護を受けようとする人が保護をあきらめてしまうといった状況が生まれかねません。だからこそ、6月19日(金)に舞鶴市の水際作戦に抗議して京都POSSEで行ったように(※2)、記者会見などのかたちで社会的に告発することも含め、こうした保護受給中のトラブルにもしっかりと対応していくことがPOSSEとして求められているのです。
今回のホットラインや最近POSSEに寄せられる生活相談において、保護受給中の方からの相談が目立ってきている背景としては、いわゆる「水際作戦」(※3)が社会的に広く知られるようになってきたなかで、貧困問題に取り組む団体の多くが生活保護の申請同行などを行なうようになり、今まで申請さえできなかった方々が、申請の壁を乗り越えることができるようになってきたことが挙げられます。申請時のトラブルが少なくなることで、相対的に受給中の問題が目立つようになってきたと考えられるからです。
その一方で、全国的な社会保障費削減の流れのなか、保護費を削減することを求められる自治体の職員であるケースワーカーにとっては、どれだけ保護を受けさせないか、あるいはどれだけ早く保護から抜けさせるか、といったことが大きな関心事とならざるを得ません。すると、本来保護が必要な状況なのに、保護を受けさせなかったり、あるいは保護を打ち切ったりといった制度の運用が行われることになります。このことが、宇治市での誓約書問題や、今回のホットラインに寄せられたようなケースワーカーからの嫌がらせやパワハラとして現れている点では、かつて水際作戦として現れていたものが、こうした受給中のトラブルに形を変えて現れているに過ぎないとも考えられるでしょう。だからこそ、POSSEとしては保護開始をスタートとして位置づけ、受給中にまでわたるトータルな支援を可能にすることが急務になってきているのです。
この間の生活保護の不正受給報道や受給者に対するバッシングの高まりのなかで、政府も保護費減額や受給決定時の調査厳格化に言及しており、今回のホットラインで見えてきた問題は、今後ますます深刻化する可能性もあります。このような状況のなかで、POSSEの生活相談活動のもつ意義が非常に大きくなってきています。今後定期的に開催するホットラインは、ボランティアスタッフが生活相談のスキル習得する場としても機能させていくことが目指されています。1人でも多くの生活相談員が必要になるなかで、自分自身、高い専門性をもって1人の相談者をトータルに支援できるような生活相談員にならなければと強く感じました。
最後まで読んでいただきありがとうございます。POSSEではボランティアスタッフが、生活相談はもちろん、働くなかでのトラブルや奨学金に関する相談を受けつけたり、雑誌を作成し、貧困・労働問題について社会に発信する活動を行っています。この記事を読んでそうした取り組みに関心を持たれた方は、まずは一度会議の見学にいらしてください。
※1 京都府舞鶴市における水際作戦と、京都POSSEによる抗議文提出・記者会見について
詳しくは以下POSSEブログ記事(「舞鶴市の生活保護の水際作戦に対し、抗議文を提出しました。」
http://blog.goo.ne.jp/posse_blog/e/859df66535ee11833f3fd3cee6d7cdef)をご覧ください。
※2ケースワーカーからのパワハラ問題や、宇治市での誓約書問題について詳しくは川久保尭弘論文「生活保護受給者の就労支援を妨げるケースワーカーのパワハラ問題」(雑誌『POSSE』14号所収)や京都POSSEスタッフ日誌関連記事*2 詳しくは川久保尭弘論文「生活保護受給者の就労支援を妨げるケースワーカーのパワハラ問題」(雑誌『POSSE』14号所収)や京都POSSEスタッフ日誌記事(「宇治市の生活保護誓約書事件にみるケースワーカーのパワハラ問題」
http://blog.goo.ne.jp/kyotoposse/e/142ece5d9666291b57c0873b01a750fa)をご覧ください。
※3 生活保護の水際作戦について
窓口で申請自体を受け付けずに追い返すといった、生活保護法において申請権の侵害として違法とされる制度運営の問題。※1で挙げた舞鶴市の対応はまさにその典型です。
(大学2年生、ボランティア参加1年目)
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NPO法人POSSE(ポッセ)は、社会人や学生のボランティアが集まり、年間400件以上の労働相談を受け、解決のアドバイスをしているNPO法人で す。また、そうした相談 から見えてきた問題について、例年500人・3000人規模の調査を実施しています。こうした活動を通じて、若者自身が社会のあり方にコミットすることを 目指します。
なお、NPO法人POSSE(ポッセ)では、調査活動や労働相談、セミナーの企画・運営など、キャンペーンを共に推進していくボランティアスタッフを募集 しています。自分の興 味に合わせて能力を発揮できます。また、東日本大震災における被災地支援・復興支援ボランティアも募集致します。今回の震災復興に関心を持ち、取り組んで くださる方のご応募をお待ちしています。少しでも興味のある方は、下記の連絡先までご一報下さい。
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