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NPO法人POSSE(ポッセ) blog

秋葉原事件と派遣法改正について

・早かった厚生労働大臣の対応

秋葉原事件を受け、桝添厚生労働大臣は即座に派遣法の改正に言及した。事件の容疑者は派遣会社大手の日研総業の社員であり、ブログで派遣労働の不安定さに不満を表していたと見られている。そうしたことから、枡添大臣は派遣労働問題の収束を図る方向でコメントをだしたのである。さらに、6月13日には日雇(スポット)派遣を禁止すると発言した。

・事件の原因
 事件の原因についてメディアでは、容疑者の家庭の事情、「オタク」としての性格、そして派遣労働者として社会に不満を抱いていたなどの原因が論及されている。メディアやネット上の書き込みでは、それらの中でも特に派遣労働者ゆえに生活が不安定であったことに注目があつまっている。
 派遣先の関東自動車が人員整理を計画しており、容疑者が解雇を確信していたこと。そしてより直接的には「つなぎが見つからない」という事件から、反抗を思い立ったものと見られているのだ。

・派遣規制の強化?
 このように多くの人々が派遣労働と犯行には強い関係があると考えていることがわかる。その結果、派遣会社である日研総業に対しては、かなり辛らつな批判が見られる。例えば日刊現代は「犯罪者予備集団と化した人材派遣会社」などと書き、派遣で働く労働者が犯罪にはしる傾向にあると指摘している。
 こうした批判の文脈の上に枡添氏のような派遣法改正発言がある。その内容は、日雇い(スポット)派遣を禁止するというものだ。

・第一の問題-派遣先の責任
 しかし、これらはまったくつじつまがあっていない。
 第一点目は、こうした議論が派遣先つまり関東自動車の責任をまったく問うていないことだ。前出の日刊現代では、関東自動車をあたかも犯罪者を送り込まれた被害者のように描き出している。
 だが、事実を思い返してみるとこれは大きな間違いだ。犯行の野直接のきっかけになったと思われている解雇は、関東自動車の派遣契約に対する中途解約が原因なのである。つまり、あくまでも「派遣先」の都合で、いつでもクビを切れる状態にされているわけだ。
 さらに、「つなぎがなくなった」という騒動についても、派遣社員の工場内でのできごとなので、管理責任は派遣先の企業にある。「隠した」事実があるのかどうかはともかく、相互に信頼関係が築かれていない不健全な職場環境であったと思われるが、それもあくまで「派遣先」の労務管理の問題だ。「使い捨て」の派遣労働者の管理など、派遣先はいい加減に行っているのが多いように思われる。
 このように見ると、あたかも派遣会社の日研総業が諸悪の根源であるかのような捕らえ方には大きな疑問を持たざるを得ない。もしも容疑者が関東自動車に直接雇用された期間工などの労働者であったなら、人員整理で解雇したり、不健全な職場環境を作り出していた関東自動車が批判の矛先となるはずである。
ところが実質的な解雇は派遣先の関東自動車が行ったのに、その身分が「派遣」であるために、責任は日研総業だけに転嫁されていまっている。問題の本質は容疑者が派遣かどうかではなく、大企業が生産調整のために多くの不安定雇用を都合よく利用しているという事実なのだ。派遣の利用は、「使い捨て」で労働力を利用するための一手段に過ぎない。だから派遣会社をたたくだけでは、問題の本質を見誤ってしまうことになるのである。

・第二の問題-日雇派遣(スポット)の禁止は派遣先責任の免罪につながる
 次に、枡添氏が提案する日雇派遣の禁止はどうだろうか。端的にいって、容疑者は日雇いではなかったので、日雇いを禁止して根本的な解決には当然ならない。
一方で、民主党は二ヶ月以下の派遣を禁止する案を出している。しかし、枡添氏にしても民主党案にしても問題を根本から捉え違っているとしか思えない。二ヶ月より一日ながい契約になったからといってどんな救済になるのだろうか? 二ヶ月ごとに解雇の恐怖にさらされるという現実には何の違いもないのである。
 さらに、加藤容疑者はもともと直接雇用の期間従業員になることをのぞんでいたという。だが、もし仮に彼が期間従業員になれたとしてもやはり不安定であることに変わりは無い。派遣よりは多少中途解約はやりにくいかもしれないという程度である。
 雇用全体が不安定化している状況の中では日雇派遣を禁止したところでほとんど意味が無いというのが現実なのだ。
 このように問題を摩り替えた議論がまかり通る背景こそが、「第一の問題」として述べた派遣先の責任を問わないことだ。格差と犯罪者を生み出した「諸悪の根源」を派遣会社に仕立て上げてしまうことによって、多様な不安定雇用を使いこなし、利益をあげている派遣先の問題が見えなくなっている。
 本当に必要な政策は、雇用システム全体を見直し、より公正な働き方を実現していくことである。そのためには雇用形態(派遣、契約、パートなど)を問わず、雇用全体の、使用者の責任を強化し、雇用を安定化させていく必要があるだろう。

*POSSEの政策提言

 http://www.npoposse.jp/style3/

コメント一覧

Fm G7
みんなが笑っていられる世の中であって欲しい
上記の意見は共感します。 一部の人間のために沢山の若人が切り捨てられる現状 さながら”感情のある部品”にしか見てないのかと大変悲しく思います。 私には物事の批判はできますが物事に革変をもたらしたり、まして世の中を変える力なんてごさいません。
善きにしろ悪しきにしろ政治家の諸先生方はこの状況を変える事を頑張っていらっしゃるようなのでまだ日本も捨てた物ではないと思いました。
秋葉原の事件では多くの意味で心を痛めました。
派遣社員の報復とも思えます。
こんな惨状への警笛にも思えます。世の中への”苦しい”という悲痛な叫びにも聞こえます。
つまるところ我々は事件を教訓に学んで少しでもいい方向へ持っていくのが被害に遇われた方々への慰めにもなる事でしょう。
そういう意味では犯人の方は色々教えてくれたんだと思います。私は犯人を笑う事ができません。一部の掲示板では”気違い”だとか言われてますが彼の都合の悪いようにメディアが仕立てあげているのです。実際、ニュースなどでト〇タの名前を聞く事はあまりありませんでした。 これは微弱にせよ情報の操作があったと思われてもしかたがない事だと思います。
 私の知り合いにも派遣社員をやっている方がいて「あれは、俺や。事件起こさない違いしかない」と語ってくれました。話しは辛らつなものでした。
しかし、結局 食べるクチは今はほとんど派遣社員。世の中自体病んでしまっています。
理想論でしかないですが結局、最後は生きているのも悪くない と思いたいです。
最後に 被害者の方々へのご冥福をこころよりお祈りします。
キャスバル
私も同感です
今回の日雇い派遣禁止については、行政は事の実態をほとんど把握していないように思います。
派遣社員がいれば当然それを利用する者がいるので、派遣会社のみを叩くことはほとんど意味がないと思います。
大手企業が人件費削減とリスク回避として派遣社員等の都合の良い労働力として捉えているのです。
その大手企業の保身体質はバブル景気から全く変わっていないように思います。
一部の人材の終身雇用を守るために若い労働者を使い捨てにしているのです。
私は、こんなことをしていたらいつかツケが廻ってくるものと思います。
いいかげんに「長い者に巻かれろ」的な考えは止めてほしいものです。
nihil
ガテン系連帯
メディア向け「懇談会」が開かれたようです。
http://jp.youtube.com/uniontube55

また、関東自動車工業へ申し入れも行ったようです。
http://jp.youtube.com/uniontube55

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