六角オセロ & 右・石田流 & 目くらまし戦法

六角オセロ と 六角碁 と 将棋の浮き飛車めくらまし戦法 の考案者です

さようなら ≪翼あるもの≫

2021-03-25 20:13:48 | Weblog
 SF傷だらけの天使 85話



よう子
「飛行機ですか?」
「飛行機は、魂が浮いて不安定になるので、あまり乗らないようにしています。新幹線です」
「魂が浮く?」
「はい。浮いて、気分が悪くなってしまうんです」
アキラ
「あゆみちゃん、はい、焼き芋」
「それじゃあ、失礼します。また来ます」
きょん姉さんは、あゆみを乗せて、ドームハウスに帰って行った。
「高野山大学を見てみたいわ」
「いいわよ、行きましょう」
高野山大学に着いた。
「ここよ」
「わ~~あ、大きいわ~~。食堂は、どこかしら?」
守衛さんらしい人が、セグウェイに乗ってやって来た。
「何か御用ですか?」
「この子の母親が、ここの食堂で、今日から働いているもので、この子が見てみたいと言うもので」
「あっ、そうですか。そちらのロボットは?」
「わたしのロボットと、この子のロボットです」
「ああ、通常の補佐ロボットと、高野山警察の番犬ロボットね。それなら、いいでしょう。じゃあ、案内してあげましょう。ついてきてください」
食堂の前に案内された。
「食堂は、ここです」
「あゆみちゃん、ここだって」
「わ~~あ、ママは、ここで働いているのね」
「そうよ」
「写真を撮ってもいいですか?」
「ああ、いいですよ」
きょん姉さんは、写真を撮ると、高野山大学を出た。コンビニで、写真データを印刷すると、あるみに手渡した。
「わ~~あ、どうもありがとう。今日子おねえちゃん」
「きょん姉さんって、呼んで」
あゆみは、大声で言った。
「はい。きょん姉さん!」
ドームハウスに着いた。程塚隆二が、公園で体操をしていた。
「やあ、きょん姉さん。二度目ですねえ。器用に、あゆみちゃんを乗せて、どこに行ってたんですか?」
「あゆみちゃんの靴を買いに行って来ました」
「買ってあげたんですか?」
「はい」
「じゃあ、僕が代金を払いましょう」
「いいんですよ。お別れのプレゼントですから」
「お別れ?もう帰られるんですか?」
「はい、これから」
「どこなんですか?」
「福岡の博多です」
「それは遠いですねえ、折角、お友達になれたのに」
「ドームハウスのことで、連絡するかも知れませんので、そのときはよろしく」
「じゃあ、電話番号とメールアドレスを教えておきますね」
姉さんは、スマホにメモした。
「じゃあね、あゆみちゃん!」
「もう行っちゃうの、きょん姉さん?」
「うん」
「また来てください」
「ええ、きっと。お借りしたセグウェイ、どうもありがとうございました」
「駅まで乗っていけば?あとでクルマで取りに行きますから」
「ここまででいいんです」
「じゃあ、クルマで送りましょう」
「ゆっくりと、高野山の風景を眺めながら帰りたいんです」
「ああ、そうですか・・」
隆二
「それでは、お気をつけて!」
「あゆみちゃん、隆二さん、さようなら~~!」
きょん姉さんは、手を振りながら去って行った。
「きょん姉さ~~~ん、さようなら~~~!」
あゆみちゃんは、涙を流しながら、しきりに手を振っていた。
「きょん姉さんは、行ってしまったねえ~~」

隆二は歌いだした。

 さよなら は 別れの言葉じゃなくって 再び会うまでの遠い約束~~ ♪

「隆二さん、それ何の歌?」
「薬師丸ひろ子の歌」
「ふ~~~ん。わたしは、やっぱり、たぬきさんの歌のほうがいいわ」
あゆみは歌いだした。

 負けるな 負けるな おっちょこちょいに負~~けるな ♪

「おっちょこちょい、じゃないでしょう。和尚さんじゃないの?」
「へへへ~~」
「じゃあ、僕も帰って、仕事をするか」
「もう行っちゃうの?」
「うん。ドームくんと遊んでいなさい」
「は~~~い」
「ドームくん、頼んだよ!」
「分かりました。隆二さん」

その頃、きょん姉さんは、高野山の街並みを見ながら、時速3キロの福之助と、同じスピードで、高野山駅に向かって歩いていた。
甲斐バンドの≪翼あるもの≫を歌っていた。

 明日は どこへ行こう~~ ♪
  明日は どこへ行こう~~ ♪

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02甲斐バンド LIVE in 薬師寺 翼あるもの

空戦・袖飛車 & 空戦・石田流


生きているから、生きている・・・

2021-03-25 08:59:38 | Weblog
生きているから、生きている・・・   SF傷だらけの天使 79話





「これが、夜のドームハウスか、なかなかロマンチックでいいじゃないか」
「そうですねえ」
「なんか、どっかの星の宇宙人の家って感じだねえ」
「そうですねえ」
「上空にUFOでもいたら、素晴らしい風景になるねえ」
「そうですねえ」
「あんた、そうですねえ、ばっかじゃん」
「そうですねえ」
「宇宙人が歩いてたら、面白いだろうねえ」
「そうですか?」
姉さんの背後から声がした。
「もしもし!」
姉さんは振り向いた。
「きゃ~~~!宇宙人!」
「違います。忍者隊・月光の者です」
宇宙人のような恰好をしていた。
「どうして、そんな恰好を?」
「これから、大スズメ蜂の退治に行くんです」
「こんな夜にですか?」
「はい、夜のほうが、蜂の動きが鈍くなるのです」
「どこなんですか?」
「ドームハウスの側にある、栗の木です」
「三人でやるんですか?」
「二人です。一人は、ここで、人が入って来ないように見張っています」
「大変ですねえ」
「ドームハウスの方ですか?」
「違います」
「じゃあ、この中には入らないでください。終わるまでは」
「わたしたち、もう帰りますので」
「お気を付けて」
・・
「豆乳を買ってくるの忘れたなあ」
「豆乳を投入ですか?」
「おまえ、ちっとも面白くないよ!」
「すみません」
「勝間屋まで買いに行くか」
「はい、そうしましょう」
「秋の夜だねえ、虫が鳴いてるねえ」
「虫は鳴きませんよ。泣くのは、昆虫です」
「昆虫と虫は違うのかい?」
「昆虫は、六本脚で虫の上です。クモやミミズなどの虫とは違います。虫は鳴きません」
「じゃあ、ゴキブリも六本脚だから、昆虫なのかい?」
「はい、そうです!」
「ええ~~~え、ほんとかよ~~?」
「ゴキブリは昆虫綱ゴキブリ目に分類されます」
「気持ち悪い昆虫だなあ」
「そうですねえ」
「昆虫なのに鳴かないじゃないか?」
「でも、ゴキブリは、キュッ、キュッ、と鳴くそうです」
「ええ~~え、ほんとかよ!」
「求愛や威嚇や、危機に瀕している時に鳴くそうです」
「あいつらは、何を食べているんだい?」
「ゴキブリは、生ごみはもちろん、カビやダニも食べます。仲間を食べることもあります」
「ゴキブリがゴキブリを?」
「はい」
「気持ち悪いねえ」
「他の生き物だって、共食いはありますよ。人間だって」
「え~~え、ほんとかよ~~?」
「中国や韓国、北朝鮮には、人食の習慣があって、市場で売られていたそうです」
「マジかよ~~!?」
「中国の史書に書かれてあります。そして、文化大革命の時代にも」
「え~~え、何てことだい!」
「日本人はやらないねえ、そんなことは」
「豊臣秀吉が、兵糧攻めにした鳥取城内で、人食が行われた、という記録が残っています」
「え~~~え、マジかよ!」
「はい」
「じゃあ、人間もゴキブリも同じじゃないか」
「そういうことになりますねえ」
「ああ、いやだいやだ!人間は虫じゃあないから、そんなことをしてはいけないんだよ!」
「そうですねえ」
「なんだか、悲しくって寒くなってきたよ」
「カイロ、出しましょうか?」
「ちょうだい」
福之助は、胸のポケットから、カイロを取り出した。
「ありがとう。考えると、人間も愚かな動物だねえ」
「人間が愚かなのは、人間を作った神様の責任ですね」
「はっ?」
「神様を裁判にかけましょう」
「はっ?」
きょん姉さんは、近くにあった御地蔵さんに向かって、手を合わせた。
「南無阿弥陀仏!南無阿弥陀仏!」
「お釈迦様ですね」
「南無阿弥陀仏!南無阿弥陀仏!」
「じゃあ、わたしも、南無阿弥陀仏!南無阿弥陀仏!」

哀しく切ない秋の風が吹いていた。哀しく切ない昆虫の鳴き声が聞こえていた。
きょん姉さんの脳裏には、吉田拓郎の≪人間なんて≫の歌が流れていた。
「人間は、何のために生きているんだろうね?」
「その答えは簡単です」
「なんだい?」
「生きているから、生きているのです」
「生きているから、生きている・・・」
きょん姉さんは、腕組みをして考え始めた。
「ほ~~~~~~う!?」
「ほけきょう」
「なんだい、それは?」
「ウグイスの鳴き声です」
「あんた、おもしろいねえ~~」
「どういたしまして」

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