与謝野大臣と民主党が日本経済を破壊する
ついき秀学氏転載http://tsuiki-shugaku.hr-party.jp/blog/
01月15日(土)
今回のタイトルの『』内は、菅改造内閣の経済財政担当大臣に
就任した与謝野馨氏が、昨年刊行した著書のタイトルそのもの
です。ツイッターでも多くの方がこのことについてつぶやかれ
ていましたが、民主党政権の経済政策を手厳しく批判し、それ
を本にして出版までした人が、当の民主党政権に入閣したの
ですから、開いた口が塞がりません。
与謝野氏は消費税増税とTPP参加に意欲を燃やしておられるよ
うですが、TPPはともかく、このデフレのご時世に増税という
のは、いかなる理由にせよ認められません。景気が悪くなって
、税収がかえって下がるのが明らかだからです。
1997年に橋本内閣下で消費税率引き上げや特別減税廃止がな
されたことによって、消費支出が冷え込み、大きな景気後退
と金融危機を招いたことは、周知の事実です。当時はまだ
デフレには突入しておらず、前年96年の成長率は2.6%と
比較的良好だったにもかかわらず、あれだけの大きな落ち
込みを経験しました。税収ももちろん減少しています。
現在はデフレ下にあって、リーマン・ショックの落ち込み
から何とかやっと回復してきたというような弱い経済状況
なのですから、ここで増税すれば二番底に向かっていくこ
とは火を見るより明らかです。
世間一般では与謝野氏は経済政策通で知られているようで
すが、氏の著作『民主党が日本経済を破壊する』を読めば、
実はそうではないことが判ります。
例えば、以下のような箇所です。
(引用開始)
中国の隣国である日本はこのデフレ圧力を正面から受けて
いる。(中略)一部に、ヘリコプターマネーをばらまけば
デフレは解決するような迷論を振りまく人々もいまだに
いるらしいが、日本を取り巻く状況はそれでは解決しない
。賃金引き下げの原因が、国内の製品価格低下を根源とす
るものではなく、各個人の稼げる付加価値が個人としての
国際競争力で決まる時代に入りつつあることによるものだ
からだ。金融に寄せて解決しようとすれば、円安による
資金の流出を招き、金利変動にもっとも脆弱な国の財政が
破綻してしまうだろう。
(引用終わり)
ここで「ヘリコプターマネーをばらまけばデフレは解決する
ような迷論を振りまく人々」と揶揄されている人の代表格は
、現在アメリカのFRB議長を務めているバーナンキ氏でしょう。
バーナンキ氏はかつて日本のデフレ脱却への処方箋として積極
的で大胆な金融緩和を説き、その分かりやすい極端な表現と
して「ヘリコプターからお金をばらまけばよい」と発言しま
した(元はミルトン・フリードマンの言葉)。その後、実際
にバーナンキ氏はFRB議長として、リーマン・ショック後に
アメリカ経済が直面したデフレ懸念を、その持論を実践する
こと(QE2など)によって乗り越えつつあります。
デフレの原因を安い中国製品の流入に求めるのであれば、日本
だけでなく、中国から大量輸入しているEUやアメリカもデフレ
になっていなければおかしいのですが、いずれもデフレには
なっていません。したがって、10年以上に亘ってデフレ基調が
続いている日本に特有の要因があると考えるべきであり、それ
が日銀の金融緩和不足ということなのです。
また、「金融に寄せて解決しようとすれば、円安による資金の
流出を招き、金利変動にもっとも脆弱な国の財政が破綻してし
まう」と、インフレ目標政策等の金融政策によるデフレ克服策
を批判していますが、やや意味が不明です。
日本国政府の財政は確かに借金が多いのですが、これもよく
知られているように、そのほとんどが国内で調達されており、
海外からの資金調達はごく一部にしか過ぎません。金融緩和を
一段と進めれば確かに円安にはなりますが、だからと言って、
これが財政の破綻につながることはあり得ず、むしろ輸出企業
を中心に景気が回復して税収が伸び、財政が改善する可能性が
高いと考えるのが普通です。
同書の別の箇所では、「インフレ政策は悪魔的手法だ」という
与謝野氏の持論が述べられています。というのも、氏によれば
インフレは「一生かかって貯金してきた人々の金融資産を一気
に目減りさせてしまいかねない」からだそうです。
確かにハイパーインフレになれば、これまでの貯金の値打ちが
あっという間に目減りしてしまいますが、インフレ目標政策は
当然のことながらハイパーインフレを目指す政策でもなければ
、ハイパーインフレになってしまう政策でもありません。
年率2~3%のマイルドなインフレに誘導し、そこで2~3%
程度の経済成長を実現しようとする政策です(なお、幸福実現党
はこれからもう一段高い成長率を目指しています)。この政策
を採用している先進国(イギリスやオーストラリア等)は、
実際にそのような経済成長率とインフレ率のパフォーマンス
を過去に示してきました。
高いインフレも困りものですが、かといってデフレが良い訳で
はありません。デフレの下では物価が下がって企業の売上が下
がるため、やがては給料が下がるか、リストラが増えるかし、
さらには倒産・失業が増えていきます。そうでなくても、将来
に強い見通しを持てないため、企業は人の採用を活発には行わ
ず、あるいは非正規雇用で済ませようとしがちです。ゆえに
デフレは害悪であると、しっかり認識しなくてはなりません。
むしろ「デフレ放置は悪魔的怠慢だ」と言うべきです。
さらに同書では、「通貨供給量で物価が決まる」「デフレも
貨幣的な現象」という考え方が妥当でないものとして述べら
れています。しかし、通貨供給量で物価が決まらないという
のであれば、そしてインフレやデフレが貨幣的な現象でない
というのであれば、それは日銀は物価をコントロールできな
いということを意味しており、であるならばそもそも日銀は
不要であると言っているに等しいでしょう。
このように与謝野氏の見解には数々の疑問な点が散見されます。
それらは、インフレやバブルを恐れてデフレに安住したい
日銀マンと、目先の財政収支改善と景気回復による金利上
昇阻止のために増税したい財務官僚によるバイアスが色濃く
にじみ出ているように感じられます。
経済財政担当相就任早々でお気の毒ではありますが、野党
が既に参院で問責決議案提出も検討しているそうですので
、与謝野氏にはお早めに辞任されることをお勧めします。
このままデフレ放置で増税が実施されれば、「与謝野氏と
民主党が日本経済を破壊した」と、未来の歴史は語ることに
なるでしょう。
.2011/01/15 0