重い腰を上げた日銀
日本の中央銀行といえば日銀こと日本銀行。
90年代の後半に日銀法が改正されてより、日銀は唯我独尊状態のごとく振舞ってきたことが、この10年の間に批判を浴びています。リフレ派の経済学者からはかなり痛烈な批判が繰り返され、最近は再びデフレ不況の犯人は日銀だという説が猛威を振るっています(学習院大学の岩田規久男教授、早稲大学の若田部昌澄教授など)。
結局、日銀が批判されているのはデフレに対して消極的だということに尽きるでしょう。彼らが考えているのは、0%近傍の物価上昇率を考えています。つまり、デフレでもインフレでもない水準です。ただ、専門家の間では、消費者物価指数は上昇バイアスがあるとの指摘があり、現実はマイナス1%か2%と言われ、日銀はデフレを容認していると指摘する論者もいます。確かに、これでは日本はいつまでたってもデフレを脱却できません(詳細な議論は、前出の岩田若田部教授の著書を参照)。
さて、ここにきてデフレ脱却に関して行動が遅い日銀が金融緩和策を出してきました。産経新聞の記事をご覧下さい。
円高・株安に対応するため政府が20日の経済関係閣僚会議から検討に入る追加経済対策と並行して、日銀も追加の金融緩和策の検討に着手することが18日、分かった。企業の資金調達を後押しし、景気下支え効果が期待される「新型オペレーション」(新型オペ)の拡充が有力視されている。来週に予定される菅直人首相と白川方明(まさあき)日銀総裁との会談前に「臨時の金融政策決定会合で決めるのではないか」との声も出ている。
選択肢として昨年12月に日銀が導入した、年0・1%の固定金利で貸出期間3カ月の資金供給を行う新型オペの規模を、現在の20兆円から30兆円に増やす案が浮上。期間を3カ月から6カ月に伸ばす可能性もある。1年以内の短い間、資金を調達する短期金融市場の資金を増やすことで金利をさらに下げる効果を狙うとみられる。 日本と欧米との金利差が広がれば、外国為替市場で円は売られやすくなる。追加的な金融緩和策で円安誘導が期待されるほか、企業が設備投資資金を借りやすくなったり、住宅ローン金利の低下など個人消費への刺激も見込まれている。 今月10日の金融政策決定会合で「企業業績は好転している」(白川総裁)との判断を示した日銀だが、財政難から政府の追加経済対策の中身が薄いだけに、日銀内には「追加緩和のカードはなくならない」との見方が強い。「週内に追加緩和策を決める」(市場関係者)との観測が浮上する背景には昨年12月、白川総裁と鳩山由紀夫首相(当時)が会談する1日前に日銀が臨時会合を開き、新型オペの導入を決めた経緯があるようだ。 ただ、今年3月に新型オペの規模が10兆円から20兆円に引き上げられた後も1年物の短期金利は0・1%前後のまま動いていない。「底を打った政策金利は上がりも下がりもしない」など、一部の市場関係者には追加緩和の効果を疑問視する向きもある。「日銀と緊密に連携する」(野田佳彦財務相)といった発言が相次ぐ中、中央銀行としての日銀の独立性は「絵に描いたもち」との批判も高まりそうだ。 【用語解説】新型オペレーション 市場金利の誘導を目的とする日銀の金融調節のひとつ。短期金利の低下を促すため、年0・1%の固定金利、期間3カ月の資金を短期金融市場に供給する。急激な円高と株安で景気が悪化する恐れが高まったのを受け、昨年12月の臨時金融政策決定会合で導入した。今年3月、資金規模を10兆円から20兆円に拡大した。 さて、日銀の金融緩和政策に関しては、どうしても否定的にならざるを得ません。
デフレを放置していたために、円高になったのは理論通りの結果です。
さらに、デフレギャップは30兆円以上あると試算されていることは既知の事実なのですが、新型オペで20兆円ではまだまだ足りないと言わざるを得ません。財政政策は緊縮、金融政策は遅いのでは話になりません。
日銀はもっと大胆に金融緩和をする必要があります。これまでの金融政策は、事態が悪くなってからの対処療法でしかありません。これでは一過性の効果しかないでしょう。継続した金融緩和政策の実行を望みます。
以上転載 |