著作権法を使った「言論の自由」弾圧にならないか。
黒川白雲氏 ブログ転載
2012年5月21日 国や地方公共団体等が作成した資料、報告書等は、
その内容を国民一般に広く知らせることを目的として作成された
ものであり、その主旨に鑑み、著作権法第32条2項(下記)の規定
により、新聞、雑誌、その他刊行物に自由に転載することが
できます。
2 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人
が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に
公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する
著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載する
ことができる。
ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。
では、国や地方公共団体等が作成した資料、報告書等のホームページや
ブログへの転載については、どうでしょうか?
著作権思想の普及、著作権制度の改善と適正な運用を目的として
設立された公益社団法人著作権情報センター(CRIC)の
ホームページには下記のように記されています。
著作権法第32条2項は、
「国若しくは地方公共団体の機関・独立行政法人又は地方独立行政法人
が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に
公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する
著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載
することができる。
ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。」
と規定しているので、「新聞紙、雑誌その他の刊行物」であれば自由に
使ってもよいということにはなりますが、ホームページがはたして
「刊行物」といえるかが問題となります。
本来、刊行物とは出版物を指す言葉として使われておりますので、
厳密にいえばこれに該当するとみることはできないということに
なります。
しかし、国・地方公共団体等が作成した資料はその内容を国民一般に
広く知らせることを目的として作成されたものですから、ホームページ
に転載して利用されることは、むしろ作成の目的に合致するものと
解されます。このように見ていきますと、これらの転載には許諾を
必要としないと考えてよいと思われます。
しかし、少し前のことになりますが、個人のブログに市役所の
ホームページの内容を無断転載したことで逮捕に至った事件が起きました。
本年4月17日の産経新聞に
「個人ブログに市のHPをコピペ著作権法違反容疑で無職男を逮捕」と題する
記事が掲載されました(⇒http://goo.gl/64rk7)。
下記に一部抜粋を掲載致します。
市役所のホームページの内容を無断で自分のブログに転載したとして、
千葉県警サイバー犯罪対策課と流山署は16日、著作権法違反の疑いで
同県八千代市米本の無職、影山万亀夫容疑者(25)を逮捕した。
調べに対し、転載は認めているが「法には違反していない」と
話しているという。
《中略》
同署によると、流山日日新聞を名乗る人物からメールで苦情を受けて
いた流山市が、同名ブログに職員を誹謗する内容や、市のホームページ
の無断転載があるのを確認。昨年11月10日ごろ、同署などに相談していた。
容疑は容疑者のブログ「流山日日新聞」上に、無断で同県流山市公式
ホームページ内の「先輩職員からのメッセージ」3人分をコピペし、
同市の著作権を侵害したことであるとのことです。
引用したものが、たとえ個人のメッセージ(⇒ http://goo.gl/YDTdp)
であったとしても、流山市の人材採用のPRページである以上、市の
「広報資料」に他ならず、「転載を禁止する旨の表示」も無い以上、
上記著作権法第32条2項の規定により、自由に転載することができるはずです。
容疑者のサイトが削除されているので確認できませんが、仮に
同市役所の職員を誹謗する内容があったとしても、著作権法ではなく、
名誉毀損で告訴すべきだったと考えます。
逮捕の真相が「表現の自由」と密接な関わりがある「著作権法」を
使った「別件逮捕」だったとしたら極めて問題です。
著作権法第32条2項の主旨は、国や地方公共団体等が作成した資料、
報告書等の自由な流通により民主主義の維持・発展に役立てることにあり、
今回の事件によって、国や地方公共団体の公開文書の引用を使った批判が
萎縮するようなことがあってはなりません。
今回の事件が「言論の自由」を圧迫する端緒とならないためにも、
流山市、千葉県警サイバー犯罪対策課、流山署は、著作権法違反容疑
による逮捕の理由と経緯について明らかにすべきです。
転載、させていただいた記事です
http://kurokawa-hakuun.hr-party.jp/etc/2369/
。